【心療内科医が解説】不眠の根本原因は「大脳皮質」の疲弊!? 更年期の不眠を「脳」から改善する方法

 【心療内科医が解説】不眠の根本原因は「大脳皮質」の疲弊!? 更年期の不眠を「脳」から改善する方法
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更年期に入り以前と比べて眠れなくなった、と感じることはありませんか。生活習慣を見直しても改善されず、「眠れない日が続いたらどうしよう」という不安が重なるとますます熟睡できなくなるもの。そこで、脳の研究を続けてきた心療内科医の横倉恒雄先生が、不眠の根本的な原因を紐解き改善法をアドバイスします。

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ストレスの影響を受けにくい脳が、健康の決め手に

更年期になると、女性は心身にさまざまな変化が表れます。不眠もその一つと言われますが、どのような原因が考えられますか?

「更年期は女性ホルモンのエストロゲンの減少に伴い、体が急に熱くなるホットフラッシュや不安、抑うつなどが引き起こされて、このような症状が眠りを妨げることがあります。更年期が原因の不眠の場合、日常生活に支障が出るならホルモン補充療法、漢方薬、向精神薬を使った治療で軽減できます。あるいは、不眠治療として睡眠薬を使った薬物療法を行います。しかし、眠れないという症状だけを見て対症療法を施して終わりではなく、不眠を根本的に改善するには、脳の健幸状態に目を向ける必要があると考えます。脳を見ずに症状だけを解決しようとするのは、川の上流の水が汚れているのに、下流の水をきれいにしている状態に等しいと言えます」

――“健幸な脳”とは、具体的にどのような状態のことを言いますか?

「人はストレスを感じると、最初に大脳皮質と間脳にストレス情報が伝わり、間脳では交感神経が反応して血圧が上昇し、呼吸が早くなり、さらに腸の蠕動運動が抑制されてストレスに対する戦闘モード(警告反応期)に入ります。すると、次に脳は恒常性を保とうとして防衛反応が働き、今度は副交感神経が作動して休息モード(抵抗期)に入り、血圧を下げ、深い呼吸を促し、腸の蠕動運動が促進されるなど警告反応期と真逆の反応が起こります。

ストレスが小さく感じられると交感神経の緊張が軽度で済み、副交感神経の働きですぐにリラックスできて元気を回復します。このような切り替えができる脳は”健幸”と言えるでしょう。しかし、ストレスを強く感じた場合、交感神経の極度な緊張が続いてストレスの疲弊期に入り、更年期障害をはじめ生活習慣病やうつ状態などの症状が現れます。更年期に不眠になる人とならない人の差は、実は脳におけるストレスの感じ方にあると言っていいでしょう」

――ストレスの感じ方に差が出るのは、何が原因と考えられますか?

「ストレス情報をキャッチする大脳皮質は、理性を司り考える脳と言われています。一方、本能や感情を司る大脳辺縁系は、快・不快を決定します。スマホを手放せず常に情報に触れている、考え事が止まらないような生活をしていると大脳皮質に余裕がなくなり疲弊してしまい、大脳辺縁系はそれを不快と認識し心身に不調が現れます。逆に大脳皮質に余裕があるとストレスを受けても軽く感じられ、大脳辺縁系は不快と認識しません。だから疲弊期の手前の抵抗期で自律神経が回復し、不眠など心身へのダメージを抑えられます」

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考えるより感じるを意識。「快適」の体感時間を増やして

――脳の疲弊が不眠に関係するなら、忙しい現代人が大脳皮質に「余裕」がある脳の状態を保つには、どうすればいいですか?

「現代人は多くの情報を脳で処理し、『○○しなくてはならない』と理性的な観点で生活し、感じるより考える時間が長くなっています。食事にしてもおいしそうと感じたり、体が食べたいと思えたりするものを選ぶのではなく、『○○は体に良い』という栄養情報をもとに食べ物を選んでいませんか?また、健康には適度な運動が必要と言われますが、『適度』の解釈は人によって異なるはずです。最適な運動法や運動量を自分の体に聞いて見極め、義務感ではなく達成感や充実感を感じられることが重要です。

つまり、大脳皮質に余裕を持たせるには、快適と感じられる時間をできるだけ多く持つ必要があります。しかし、好きな旅行に出かけても、帰ってきたらどっと疲れて不快感が強くなるようでは元の木阿弥。おすすめしたいのは、日常のちょっとした行動の見直しです。たとえば、起床後の洗顔を単なる朝のルーティンとしてこなさず、顔を洗った後にすっきりしたと感じてみる。通勤時の歩きスマホをやめて風を感じながら駅まで歩く、ヨガをしながら体がほぐれる心地良さを味わうなど、感じることを意識すると心にも脳にも余裕が生まれます」

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睡眠薬は不眠改善の杖。正しく使えば眠れないストレスが軽減

――不眠を根本的に改善するには、疲弊脳にならない生活を送ることが大切なんですね。では、睡眠薬の服用については、どのように考えますか?

「眠れないことで日常生活に支障が出る場合は、医師に相談して睡眠薬を処方してもらいましょう。ですが、睡眠薬はあくまでも”杖”の役割。脚を骨折したときに杖があったほうが楽ですが、骨折を治すのは自らが持つ回復力です。杖の力を借りて楽になったら、脳から健幸になるように自分の生活を見直す努力をしましょう。

なお、睡眠薬は依存性があり、一度でも服用すると睡眠薬なしでは眠れなくなるというイメージを持つ人がいるかもしれませんが、最近の睡眠薬は依存の危険性や副作用は少なくなっています。また不眠には入眠障害、中途覚醒、早期覚醒、熟眠障害の4タイプあるので、医師の指示のもとそれぞれのタイプに適した睡眠薬を正しく服用しましょう」

■不眠のタイプ

入眠障害

布団に入ってからなかなか寝つけない。その場合、吸収と代謝が早く、効果が出るまでの時間と作用時間が短い短時間型の睡眠薬が有効。

中途覚醒

眠れても途中で目が覚めてしまい、その後寝つけない。その場合、効果が長めの中間型・長時間型の睡眠薬が有効。

早期覚醒

起床時間より早く目が覚めてしまい、再度眠ることができない。その場合、効果が長めの中間型・長時間型の睡眠薬が有効。

熟眠障害

睡眠時間は十分なのに、ぐっすり眠れた感じがしない。その場合、効果が長めの中間型・長時間型の睡眠薬が有効。

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――ドラッグストアで買える睡眠改善薬は、不眠治療に効果はありますか?

「病院で処方される睡眠薬が脳に働きかけるのに対して、市販の睡眠改善薬は、アレルギー症状を改善する抗ヒスタミン剤の副作用である眠気を利用したものになります。一時的に眠れない場合に服用するのはいいですが、効果が見られなければ心療内科を受診する必要があります。心療内科に足を運びにくければ、まずはかかりつけの内科医に相談してみるといいでしょう」

『10万人の患者が癒された 今朝の院長の独り事』(青春出版社)
『10万人の患者が癒された 今朝の院長の独り事』(青春出版社)

教えてくれたのは…横倉恒雄先生

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横倉クリニック、健幸外来サロン院長。日本大学医学部卒、慶應義塾大学医学部産婦人科入局、脳下垂体内分泌学研究で学位取得。東京都済生会中央病院に日本初の「健康外来」を開設し、聖路加国際病院理事長・日野原重明氏に師事する。更年期と加齢のヘルスケア学会にて「健幸脳」「疲弊脳」の論文を発表。毎日、クリニック入口の黒板とブログ、SNSで「今朝の院長の独り言」を発信し、その言葉をまとめた『10万人の患者が癒された 今朝の院長の独り事』を発刊。ほかに脳疲労に関する著書多数。

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取材・文/北林あい

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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