【呼吸が浅い人はやってみて】理学療法士が教える、メリットだらけ「深呼吸」のポイント3つ
理学療法士の堀川ゆきさんが、「深呼吸」による効果と呼吸の仕組みを解説。効果をより高めるために、深呼吸で抑えておきたい3つのポイントを理由とともに紹介します。
深呼吸にはメリットたくさん
深呼吸することで一体どのようなメリットがあるか知っていますか? ザッとあげただけでもこんなにたくさんあります。
呼吸筋の活性化
心肺機能の向上
胸部の柔軟性の向上
免疫力の強化
頭痛・肩こり・腰痛の緩和
美肌効果
体幹の安定
姿勢の改善
代謝の向上
安眠効果
自律神経の調整
尿もれ予防
リラックス効果
感情のコントロール
呼吸には大きく2種類あります。
・安静呼吸(日常で無意識のうちに自然に行っている呼吸)
・努力呼吸(つまり深呼吸のこと。意識して行う深い呼吸)
この2つの呼吸の違いを知り、使い分けることがポイントです。「安静呼吸」は普段行っている呼吸で、吸う時は横隔膜(横隔膜は筋肉です!)がメインで働き、吐く時は特に筋肉が働くわけではなく、胸部が元に戻ろうとする弾性収縮力で受動的に息を吐いています。
一方で、「努力呼吸」は意識してゆっくり行う深呼吸のことで、吸う時は横隔膜だけでなく、外肋間筋、内肋間筋前部、僧帽筋、胸鎖乳突筋、斜角筋、大胸筋など多くの筋肉が働きます。そして吐く時は腹筋群が活発に働きます。つまり深呼吸を行うだけで、呼吸筋といわれるこんなにもたくさんの筋肉が活動するのです。呼吸筋は普段の浅い呼吸ではほとんど使われません。深呼吸によって先ほどあげたような様々なメリットが得られるのは、これだけの呼吸筋が活動することが理由の一つと考えられます。
深呼吸ってどうやるの?
「胸式呼吸?腹式呼吸?」
「鼻から吸うの?それとも口から?」
あまり難しいことは考えずに、ただ普段何気なく行っている呼吸を、意識的にゆっくり深く行うだけでまずは十分です。
ではその深呼吸で抑えておきたいポイント3つをご紹介します。この3つを実践するだけで、先ほどあげたメリットの恩恵に十分授かれるといっても過言ではありません。
ポイント①鼻から吸って鼻から吐こう
鼻で呼吸をすることで、主に以下の3つの利点があります。ただ鼻詰まりなど鼻症状がある場合は辛いので無理せず口で呼吸してくださいね。
・濾過(ろか)機能
鼻毛や粘膜がフィルターの役割をして、外気中にあるホコリや細菌、ウイルスなどの侵入を防いでくれます。口呼吸だとそれらを直接体内に取り込みやすくなってしまいます。
・加湿機能
乾燥した外気にはウイルスなどが繁殖しています。鼻腔は湿っているので乾燥した外気を加湿してウイルスを排除してくれます。また鼻から吐くことで口の中の乾燥も防ぎます。
・加温と脳の冷却機能
鼻呼吸によって外気が肺に到達するまでに加温されて、ガス交換の効率が上がります。また、私達の身体は運動時や発熱時に脳も一緒に温度が上昇しないよう「選択的脳冷却機構」がありますが、脳と近い鼻から息を吸うことで脳の冷却のサポートをする役割があるそうです。
ポイント②5秒で吸って5秒で吐こう
普段無意識で行っている呼吸は1分間で12回。つまり2.5秒で吸い、2.5秒で吐いています。深呼吸ではその倍の時間をかけます。つまり、5秒で吸い5秒で吐きます。これによって呼吸筋が鍛えられ、呼吸機能の向上が期待できます。また副交感神経を優位にするのでリラックス効果をもたらしストレスを和らげてくれます。
ポイント③肋骨の上部と下部を膨らまそう
肋骨は息を吸う時に、「上下」方向と「左右」方向に拡大します。肋骨が風船のように全体的に大きく膨らむようなイメージをしながら、自分の肋骨を触りながら深呼吸を練習してみましょう。
・上下の動き(肋骨の上部)
両手をクロスして鎖骨の下に手のひらを当てます。息を吸った時に肋骨が上方向に上がり、吐いた時に肋骨が下がります。手のひらを当てている部分に呼吸を入れるつもりで、5秒で吸って5秒で吐く深呼吸を5回行います。
・左右の動き(肋骨の下部)
ウエストよりも上あたりの肋骨の下のあたりに手のひらを当てます。息を吸った時に肋骨が左右に広がり、吐いた時に肋骨が小さく縮みます。手のひらを当てている部分に呼吸を入れるつもりで、5秒で吸って5秒で吐く深呼吸を5回行います。
まとめ
深呼吸にはたくさんのメリットがあります。そして深呼吸する上で実践してほしい3つのポイントを理由とあわせてお伝えしました。
①鼻から吸って鼻から吐こう
②5秒で吸って5秒で吐こう
③肋骨の上部と下部を膨らまそう
この3つを意識するだけで、更に深呼吸の質が上がり数々の恩恵に授かることができるでしょう。毎日の呼吸にぜひこの深呼吸を取り入れてみてくださいね。
参考:高橋仁美 他「動画でわかる呼吸リハビリテーション 第2版」中山書店,2008
AUTHOR
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。
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