インド人に膝枕をされた日、私はぐっすり眠った…距離が近すぎる国インドで私が感じた、ぬくもりの力
インド研究家でライターの中谷秋絵さんによる連載「インドに学ぶ人生ハック」。今回は、距離感が日本のそれとはちょっと違うインドでの体験をお伝えします。
インドでは「人との距離感が近い」と思うことがよくあります。
インドの人口は、現在約14億1200万人。2023年には中国を抜いて世界1位になると言われています。そんな人口の多いインドでは、どこへ行っても人、人、人。人口が多いからなのか、もともとの性質なのかはわかりませんが、インド人はパーソナルスペースが狭いように感じます。
近すぎる距離感に戸惑いを覚えることも多々ありましたが、一方で触れ合うことの大事さも感じました。
今回は、そんな「距離が近すぎるインド人」についてお伝えします。
定員オーバーしまくる乗り物
列車にぎゅうぎゅうに人が乗り込み、ドアからはみ出したり、上に乗ったりしている写真を見たことがある人もいるのではないでしょうか。
列車だけではなく「オートリキシャ」と呼ばれる三輪車もすごい。本来は2人乗りで、ぎゅっと座っても3人までが限度のスペースです。
そこにインド人は平気で4~5人座ります。後ろの席だけではなく、本来はドライバー1人分の前列におしりを半分乗せて座るのです(ドライバーはもちろん他人)。
また、都市部の移動手段であるメトロ(地下鉄)でも。メトロは日本と同じ6~7人掛けのタイプですが、ここに10人以上が座っているときもあります。インド人はわずかでも隙間を見つけると、おしりをぐいぐいっと入れ込んで座ってくるのです。当然隣の人とは密着しているどころか、おしりが半分隣の人に乗っているなんてことも。
このように、インド人は他人と触れ合うことにあまり抵抗がないのです。
ゼロ距離で列を作る
乗り物だけではなく、列を作るときの距離も近いインド人。
体の前後にぴったりと人がくっつきながら並びます。「そんなにくっつく必要あるの⁉」というくらい体が触れ合い、密着しています。時には、後ろの人に腕をつかまれているなんて状態になることもしばしばです。
インドでは列を作っていても割り込まれることは日常茶飯事。少しでも隙間があると割り込まれるから、ぴったりとくっついているという説もあるとかないとか……。
カップルじゃなくても手をつなぐ
さらにインドでは男性同士、女性同士で手をつないだり、腕を組んだり、肩を抱いたりしながら歩いている姿もよく見かけます。
最初は驚きましたが、これはみんなただの友だち同士で、インドではよく見る光景です。
「日本人はパーソナルスペースが広い」といいますが、インドはその真逆。人との距離が近く、友だちや家族とのスキンシップが多いのです。
また、親が子どもの頭や顔を撫でる様子もよく見られます。子どもといっても小さな子だけではなく、成人してからも変わらずベタベタ撫でまわすのです。これもインド人の愛情表現の一つと言えるでしょう。
肌のぬくもりに癒される
インド人の距離の近さやスキンシップについて、私が経験したエピソードがあります。
インド人の女友達と一緒に寝台列車に乗っていたときのことです。私は移動中に熱を出してしまったのですが、友人はどこからともなく薬を持ってきてくれました。
私が薬を飲み終えると「ここで寝なさい」と座っている自分の太ももを指さします。そう、膝枕をすると言い出したのです。
「そんなの恥ずかしいから、いいよ」と言っても聞きません。インド人特有の押しの強さに勝てず、私はしぶしぶ膝枕をされることにしました。
「いいから、放っておいてほしい……」と正直思いましたが、言われるがまま。さらに友人は私のおでこに手を置いてくれていました。
人生で友だちに膝枕をされた経験なんてなかったので、最初はとにかく恥ずかしく、落ち着かない気持ちでいっぱいでした。ですが、友人の体温が伝わってきて、次第に心地よさを感じ少し眠ってしまったのです。
肌のぬくもりとは不思議なものです。言葉がなくても、友人が私を思いやってくれていることが伝わってきました。もしかしたら、インド人は本能で触れ合うことのパワーを知っているのかもしれません。
なかなかインド人と同じようにはいきませんが、自分の大切な人とはもっと意識的に触れ合うといいのかもしれない。距離の近いインド人から、そんなことを学んだ出来事です。
AUTHOR
中谷秋絵
インド研究家×ライター。自己肯定感激低の状態でインドに渡航し、インドの人々の温かさ寛容さで救われる。インド滞在経験2年、現地の日系旅行会社に勤めた経験あり。現在はフリーライターとしてインタビューを中心に活動中。電子書籍『どんなに自己肯定感が低くても生きやすくなるすごいインド思考術』でAmazonランキング1位・ベストセラーを達成。ダンサーとしてインドのボリウッドダンスも踊っている。
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