リコーの女性社員とインドに住む女性がタッグを組んだ!今話題のエシカルなヨガウェア「ランゴリー」
「なかなか自分にしっくり馴染むヨガウェアに出逢えない」そう思われている方に是非おすすめしたいブランドがあります。その名も「ランゴリー(RANGORIE)」。機能性を追求した着心地の良いヨガウェアがヨギーニの間で話題です。ブランドを作り上げたのは、日本人女性とインド人女性の合同チーム。ジャンポール・ゴルチエのコレクション・デザイナー出身の日本人女性デザイナーが手がけたスタイリッシュなフォルムも魅力です。
既存のスポーティなヨガウェアとは一線を画すメッセージのあるヨガブランド
「RANGORIE(ランゴリー)」は、プリンターや複合機などを生産していることで有名な「リコー」の女性社員とインドの農村に住むインド人女性チームがタッグを組み、エシカルなコンセプトを持つライフスタイルブランドとして2019年にスタートしました。機能性や快適性を追求した商品を生産すると共に、インド農村部の女性の地位向上と経済的自立を実現しています。
ヨガはインド発祥でありつつ、特に欧米ではセレブリティに好まれることからアスレチックなイメージを前面に出したアイテムが流通している一方で、ランゴリーはインドヨガらしい色使いと柄を採用しています。インドのメーカーは綿素材の商品を生産することを得意としていますが、綿はストレッチ性に欠けるのでヨガウェアには向いていません。その点、ランゴリーは機能性を備えた素材と伝統的なデザインを取り入れたアイテムがユニーク。
ランゴリーのアイテムは着心地の良さが追求されており、特にブラのフィット感とパンツの肌触りや通気性は素晴らしく、とても快適です。レギンスの生地はさらっとした感触で、汗をかいたり、ホットヨガをしたあとでも肌にはりつかず、脱ぎやすい素材なのも魅力です。
ヨガのある生活を楽しむ女性の日常を彩る「RANGORIE」について、株式会社リコーでランゴリーのプロジェクトリーダーをされている綿石早希さんにお話を伺いました。
試作を何度も積み重ねてたどり着いた極上のフィット感
ーー「RANGORIE」のヨガウェアを身につけてみたのですが、今までにないような快適なフィット感があり驚きました。特にブラはホールド感が絶妙です。締め付け感がなく心地よくバストが収まるので、ヨガのポーズをとるときにも安心感があります。
綿石さん:どうもありがとうございます。女性スタッフで何回も試着してたどり着いた自信作です。女性の下着から始まったのですが、社内に科学系エンジニア出身のパタンナーが在籍しているので、下着のパターンを自分達で切っています。特にブラトップの快適さには自信を持っています。一般的には、サンプルの発注は2、3回までの場合が多く制限があるのですが、社内にパタンナーがいるお陰で何回も試作しています。もともと洋裁をやっていた社員で、下着のパタンナーの方に弟子入りして技術を磨いた経験があります。
計算された立体フォルムが心地よいリラックスを実現
ーーサルエルパンツのサイド部分にスリットが入っているのも画期的ですね。通気が良く、ふわっと身につけることが出来るので快適です。このパンツをはいて電車に乗り、スタジオに行きましたが、タウン仕様にも出来ますね。
綿石さん:移動中も身につけていただけることは、まさに私たちの目指すところです。日常にヨガが溶け込ませるように身につけてもらえたら。サルエルパンツのサイドのスリットは、デザイナーがインドの服飾の資料を見ていたときに見つけたデザインで、トラディショナルな要素を取り入れています。パンツは、インドではドーティと呼ばれる一枚布をくるっと巻きつける男性用パンツをイメージしています。
インドのグッドラックモチーフをヨガウェアに散りばめて
ーーデザインには、小花など細かいモチーフがプリントされていますね。他ブランドのヨガウェアと違う点は、スポーティ過ぎず、アーティスティックな要素が散りばめられているところでしょうか。
綿石さん:コレクション毎に都市をイメージしたデザインを作っているのですが、ケララのシリーズには、孔雀の模様が描かれています。ケララ州はアーユルヴェーダで有名ですが、「コロナが落ち着いたらケララでリトリートにゆっくり行きたいな」と思うような妄想旅がモチーフです。エクササイズのアイテムや、アーユルヴェーダを受けたあとにさっと着れるワンピース、スーツケースにポンと入れられる柔らかい下着などが入っているシリーズです。
柄はピーコックや、ハナカラクサの花。孔雀は悪い虫を食べるので魔除けのモチーフとして使われることが多いですし、ハナカラクサは永遠に続く幸せという意味があるので、悪いことが去ってずっと幸せでありますようにという意味がこめられています。
2022年の夏に新しくリリースしたのが、ムンバイというシリーズです。こちらは柄にこだわっています。ムンバイは商業や金融の都市として有名で、オフィスでは商売繁盛の神様であるガネーシャの像を机の上に置く人も。そのガネーシャが持っているアンクーシャという杖に「道を切り開く」という意味があるので、デザインに取り入れました。お花の方はマハラシュトラ州の「プライド オブ インディア」です。名前もコンセプトにぴったりでした!
「ジュガード」というインドの人々の前向きな考え方に刺激を受けて
ーーインドにはジュガードという言葉があるそうですね
綿石さん:ジュガードとは、直訳では「創意工夫」という意味ですが、何かトラブルがあった時に臨機応変に対応することを指しています。たとえば「電気が落ちたから作業が出来ない」とか「ミシンが壊れたから出来ない」というときに必ず代替策を考えるのがとても上手です。トラブルの前で思考停止になることがないんですね。彼女たちの考え方に凄く助けられています。
前向きなパワーを持っている人彼女たちと仕事をしていると、フィードバックに対してもすごく貪欲に「次はなにしたらいい?」「新しい方法を考えてみたけどどうかしら」と、新しいアイデアがどんどん生まれていきます。今日より明日の方が絶対に良くなると思っている感じです。日本チームはインドチームからパワーを貰っています。
これまで村を出たことがなかった女性たちを訪ねて日本の技術を伝えたのですが「外国のブランドとやりとりをする仕事をしていることが自信に繋がっている」と話してくれた女性もいました。とても嬉しいですね。日本とインドのチームが力を合わせて、一緒に成長していきたいです。
インド人女性の自立支援に対する活動について
ーーもともとリコーは、プリンターや複合機の事業を軸にされている企業ですが、ヨガウェアのブランドを作られたきっかけはありますか?
綿石さん:弊社は、社会にとって役に立つことを事業にするという経営理念があるので、これまでも様々な取り組みをしてきました。ビジネスパートナーである江副がインドに行った際、男女の地位の違いが大きいことに驚きました。NGOが設立した縫製の技術学校や職業訓練に通った女性も多いのですが、インドの地方で仕事を得ることができずにいる人が多くいました。その状況は非常にもったいないと感じました。
実際には、外で仕事をしたいけれども職が見つからず、農村で家事をしている女性がほとんどでした。インドの家庭は、ジョイントファミリーと呼ばれ複数の家族が一緒に住んでいるので、家に女性が沢山いるのです。そのような協力体制の中で、外に出られる女性には仕事に就いて頂いています。家庭を守る女性と、外貨を稼いでくる女性で役割分担をする環境は暮らしやすいそうです。
インドの女性の職業グループとビジネスパートナーとしてタッグを組んで、まずは下着を作る工房をつくりましょうということになりました。リコーと対等な立場で工房を立ち上げています。8割が弊社ですが、2割は彼女たちがNGOからマイクロファイナンスという形で無利子で貸付を受けています。彼女たちはローンを組んで支払っており、自分達の利益と返金分の両方をやりくりしています。この仕組みが出来たことで、一緒に良質なものを作るインセンティブが働くようになりました。
ーー女性の立場を重視した提案を社内でする場合、承認をするのは上の世代の男性である場合が多いと思いますが、どのようにプレゼンテーションをされて、プロジェクトの実現に結び付けられたのでしょうか?
綿石さん:インドの女性の立場の苦しさを、日本の男性から共感を得ることはなかなか難しいので、ビジネスに置き換えて説明しました。「13億人もの人口がある国の女性の可能性」と「ビジネスの可能性」の両方を示すようにしました。日本とインド、お互いの国の女性が一緒に良くなっていこうという方向性を示すことが、私たちがいる意味だと思います。
社内でプレゼンをする場合には冷静な頭とホットなハートの両方が必要で、冷静にビジネスポテンシャルをきちんと数字と共にロジカルに語ること、インドの女性の困りごとを解決したいという2つの軸が必要です。さきほど企業理念をお話しましたが、社会にとって良いことを事業にしていく方針があるので、インド人女性との取り組みを前に進めることができています。
国境を超えて女性同士が助け合うブランドに成長していきたい
ーー今後の目標について教えてください。
綿石さん:ひとりひとりが最大限に可能性を広げられる社会を作りたいです。ヨガは、欲を手放して心の平安を手に入れることができます。穏やかな状態を保つことで、自分の可能性を存分に発揮して頂きたいと思っています。また、自分の身につけているヨガウェアがインドの女性の能力やポテンシャル発揮の一助になって欲しいと願っていますし、世界規模で女性の助け合いを実現するブランドでありたいと思っています。
AUTHOR
栗尾モカ
記者・漫画家。新卒で航空会社に就職。退社後、出版社に入り多くの企画に携わる。「ダ・ヴィンチ」で漫画家デビュー後、朝日新聞の社会見学連載、「TVタックル」モバイルサイトインタビュー、女性誌「STORY」の海外・美容取材など数多くの連載を担当。女性のウェルネスをテーマにしたコミックエッセイは、取材の経験がニュースソースになっている。シンガポールのメディアに再就職した際、締切と子育てに追われる中でインド・バンガロールにあるヨガ研究大学(Swami Vivekananda Yoga Anusandhana Samsthana / S-VYASA)により考案されたヨガインストラクター認定プログラムに出逢い、資格を取得。伝統的なヨガ哲学や、心身を癒すメソッドを学び始める。著書に「サロン・ド・勝負」「おしゃれレスキュー帳」(KADOKAWA)「女のネタ帖」(学研)などがある。
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