「インドでは騙されるより助けられた方が多かった」親切であたたかいインド人から学んだこと
インド研究家でライターの中谷秋絵さんによる連載「インドに学ぶ人生ハック」。インドでの体験から気づいたことをシェアします。
他人に親切にしたくても「恥ずかしくてできなかった」ということありませんか?
たとえば電車の中で「あのおじいさん、席を譲ってあげた方がいいかな。でも逆に嫌がられたら……」などと考えてしまい行動に移せない、なんて経験が私にはあります。このように「恥ずかしくて行動できなかった」という経験がある人もいるのではないでしょうか。
さて、インドではどうでしょう。
インドでは物理的にも精神的にも人との距離が近く、遠慮せずにぐいぐいこちらのパーソナルスペースに入ってきます。そして、とにかく親切な人が多い。
今回は、そんな「インド人の親切心」をテーマにしたいと思います。
困ったときに助けられた経験
「インドに行くと騙される」というイメージを持っている人もいるでしょう。残念ながら、それも事実。観光地には外国人を騙すことで、お金を稼いでいるインド人もいるのです。
しかし、悪事を働くインド人は観光地にいる限られた人だけで、その他大勢のインド人は本当に親切な人が多いのです。
たとえば道がわからずキョロキョロしているだけで、すぐ「どうした?どこへ行きたいんだ?」と話しかけてきます。時には、一緒に目的地まで案内してくれたり、途中で「チャイ飲むか?」と言ってチャイをおごってくれる人もいたりするほどです。
旅の途中でこんなことがありました。
長距離移動をするために、早朝の暗い時間にバス停に行ったときのことです。バスは事前に予約してあり、ずらっと並んでいる中から自分のバスを探したのですが、どれだけ探しても見当たらない。周りにいる人々に聞いても、誰もわからないと言います。
広い停留場で、まだ日も登っていない薄暗い中、バスを探すのはとても不安で心細かったのを覚えています。
私は途方に暮れ、「今日はもう移動できないかもしれない」とあきらめかけていました。しかし、みるみるうちに大勢のインド人が私を取り囲み、みんなであれやこれやと議論し始めます。すると1人のオートリキシャ(屋根付き三輪車)ドライバーが「俺についてこい!」と、私をリキシャに乗せたのです。
その人は道路を走りながら、途中で人に尋ねながら、私のバスを探してくれました。日が昇り、空が白み始めた頃「これだけ探しても見つからないんだから、無理だよ」と、私は思っていたのですが、そのドライバーはあきらめません。
そして、とうとう私のバスを探し当てたのです!
「でも、法外な金額を請求されたらどうしよう。このドライバーはそれが目的だったのかも」
なんてドキドキしながら値段をたずねると、ふっかけることなく通常の値段を言ってきました。本当に親切心で一緒にバスを探してくれたのです。
「疑ってごめんね」と思いつつ、感謝して、私は無事にバスに乗れたのでした。
「親切にしたい」気持ちに正直なインド人
この他にも、インド滞在中は多くの人に助けられました。インド人は人との距離が近く、そして「親切にしたい、助けたい」という自分の気持ちに正直に行動する人が多いと感じます。
それは時に「おせっかい」や「ありがた迷惑」と感じることもありました。日本人の私からすると「これをやったら逆に迷惑かな?」「変に思われないかな?」と躊躇してしまうようなことでも、ぐいぐいと入ってきます。
そんなインド人の姿は、「他人からどう思われるか」よりも「私は今あなたを助けたいんだ!」という自分の気持ちを優先しているようにも思えました。それは時にわずらわしく感じてしまうこともあるけれど、なんだか人間らしいあたたかさも感じたのです。
人と関わることって、面倒くさいことも多いと思います。面倒でも人と関わり、助け合って生きているインド人から人間臭さを感じました。そして、私ももっと人に優しくなりたいと思ったのです。
少しの勇気を出して、人のために行動したいと思います。
AUTHOR
中谷秋絵
インド研究家×ライター。自己肯定感激低の状態でインドに渡航し、インドの人々の温かさ寛容さで救われる。インド滞在経験2年、現地の日系旅行会社に勤めた経験あり。現在はフリーライターとしてインタビューを中心に活動中。電子書籍『どんなに自己肯定感が低くても生きやすくなるすごいインド思考術』でAmazonランキング1位・ベストセラーを達成。ダンサーとしてインドのボリウッドダンスも踊っている。
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