「やる気が出ない」のは"気分の問題"だけじゃないかも!見逃しやすい「かくれうつ」気づくポイントは
「やる気が出ない」「気分が晴れない」と悩んでいませんか?「うつ病」という名前は馴染みがあっても、自分のことと関連づけている人は少ないと思います。ひと昔前は、うつは心が弱い人が罹る病気だと考えていた人もいるでしょう。しかし、うつ病は脳の病気です。今回は見逃しやすいうつについて紹介していきます。
不眠、腹痛…原因不明の体調不良に悩むAさんの場合
Aさんは育児や仕事、家事に追われて多忙な毎日を送っていました。今までの仕事ぶりが評価されて管理職に昇進することになりました。「今まで以上に頑張らないと」と意気込んでいたのですが、昇進後3〜4ヶ月経った頃から身体に不調感が出始めました。「寝つきが悪く、睡眠時間が足りないのに朝早くに目が覚めてしまう」「週に何度もお腹を壊してしまい、会議では強い腹痛に襲われる」「慢性的な肩こりが悪化し、首や肩に痛みを感じる」などです。Aさんは消化器内科など医療機関を受診しましたが、「身体には異常がありません」と言われてしまい、最終的に心療内科を紹介されました。
「かくれうつ」は体の症状が目立つ
うつ病の症状は、「気分の落ち込み」「意欲や興味の減退」「ぐるぐると同じことばかり考えてしまう反芻思考」など様々なものがあります。また、睡眠や食欲の変化には個人差があり、たくさん寝たり、たくさん食べる人もいれば、不眠、食欲不振となる人もいます。このようなうつと気づいやすい症状だけではなく、中には身体症状が目立ち、気持ちの変化が少ない(感じられない)ケースもあります。例えば、もともと感情を抑え込みやすい人、感情に気づきにくい人ほど、気持ちの変化よりも身体にサインが出安くなります。例えば、「仮面うつ病」と呼ばれるものは、心の症状よりも身体の症状が目立ちます。例えば、寝つきが悪い、朝早く眼が覚める、眠りが浅い、食欲がない、性欲がない、体がだるい、腹痛、下痢、便秘、頭痛、しびれ、めまい、動悸、発汗、口渇、息苦しい、 胸の圧迫感、発熱、味覚障害、肩こり、眼の疲れ、頻尿、体重の減少、生理不順、といった症状などがあります。
うつ病は脳内の神経伝達物質のバランスが崩れてしまう
うつは、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れている状態です。うつ状態では、セロトニンやノルアドレナリンが減少します。セロトニンは、興奮や不安をコントロールし、気持ちを落ち着かせる神経伝達物質です。そして、朝の目覚めを促し、夜の入眠につなげる等、睡眠とも深く関連します。ノルアドレナリンは緊張を促して、心身の活動を加速させる物質です。このような心の活動を保つための神経伝達物質のバランスが崩れてしまうのがうつ病なのです。うつ病の治療薬である抗うつ薬は、これらの物質のバランスを調整する作用があります。そして、神経伝達物質のバランスが乱れる理由として、慢性的なストレスによる影響が指摘されています。
何もしない日を作ることが大事
気持ちの変化はなく、身体の症状だけ出ている場合でも、もしかしたらうつのサインかもしれません。いつもと違う不調感に気づいたら、意識的なストレスケアをしましょう。脳の疲労は睡眠で回復します。慢性的なストレスで脳が疲労している時に、人と会ったり、外に出てリフレッシュしようとしても、気分転換されるどころかさらに疲労が増すことがあります。「今日は何もしない日」と決めて、一日ゴロゴロして心も体も充電しましょう。
質のいい睡眠を取るためにできること
質のいい睡眠で脳は回復しますが、睡眠も神経伝達物質が関係しているため、ストレスが強いときほど、「眠りに入りづらい」「寝てもすぐに目が覚めてしまう」という悩みを抱えやすくなります。脳の疲労回復に大切なのは睡眠時間よりも深い眠りです。時間にこだわりすぎに、深い眠りを得るためのコツを知りましょう。実は、私たちの体内時計は24時間ではなく、約25時間です。そのため、こまめに調整しないと入眠が遅くなるなど睡眠リズムが乱れてしまいます。そして、そのずれを調整するのが日光です。私たちは、日光の明るさを感知した14時間〜15時間ほど後に眠くなると言われています。質のいい睡眠をとるために以下を心がけましょう。
・なるべく毎朝決まった時間に起きること
・朝に日光を浴びること
・寝る1〜2時間前にリラックスする時間を作ること
例えば、ぬるめの入浴に浸かる、リラックス系の音楽を聴く、アロマやお香を焚く、ゆったりとしたストレッチをするなどです。
・ベッドは眠るための場所にし、ベッド内で別の行動を取らないこと
・就寝前のスマートフォンなどブルーライトが出るものの使用を避けること
・眠りやすい寝室環境(明るさ、気温、音)を用意すること
質のいい睡眠を取りながら脳の疲労を回復し、うつ予防をしていきましょう。また、もしも今回紹介したようなうつの症状が2週間以上続く場合は、なるべく早く専門医に相談することをオススメします。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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