「適応障害」は誤解されやすい?周囲から理解されにくい理由とは|精神科医が解説

 「適応障害」は誤解されやすい?周囲から理解されにくい理由とは|精神科医が解説
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近年、芸能人の活動休止理由として、メディアを通して目にする機会も多い「適応障害」。世間でも、なんとなく精神面の病気であるということは知られているものの、正しい情報が広く理解されているか問われると、難しいのが現状です。ときには心ない言葉で、怠慢や逃避を疑われることもある適応障害。今回も『「とらわれ」「適応障害」から自由になる本』(さくら舎 勝久寿著)より、適応障害に関する誤解と原因についてご紹介します。

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誰もがかかる可能性があるのに、理解されにくいのはなぜ?

適応障害は、「とらわれ」によって発症する疾患の代表的な存在であり、近年もっともよく診断される疾患のひとつです。以前に比べると、世間の心の病に関する認知度は確実に上がってきています。書店でも精神疾患やメンタルヘルスに関する書籍がたくさん販売されていますし、テレビ番組で特集が組まれることもあります。

しかし、勝さんは「身体の病気に比べると、十分な理解を得られているとはいえない状況。とくに適応障害については、まだまだ誤解と偏見に満ちている。」と指摘しています。

嫁姑関係やママ友付き合いのような「人間関係」の問題、パワハラやセクハラなどの「職場関係」の問題、近所付き合い、子育て、病気などの「身体的問題」や「経済的問題」など……あげればキリがないほど、生きていれば誰でも一度はぶつかるような「ストレス」が、いまの世の中には溢れています。これらに対し、適応障害にかかってしまう人とかからない人。両者に分かれてしまう原因は、一体なんなのでしょうか。

勝さんが心療内科クリニックを開業したのは2004年。その当時は、医師の間でも適応障害の症状について、まだ十分に理解されていない状態でした。勝さんご本人も、クリニックを訪れる会社員など、患者たちの話を聞いていると「うちの病院に来るよりも、人事課に相談した方がいいのでは?」「逃げ出したいだけなのではないだろうか」と、判断に迷うことが多かったそうです。

というのも、診察している間は病気の発端となった「ストレスの原因」から離れているため、患者の様子も具合が悪いようには見えないことがあります。これが「怠けているのでは?」などと誤解されてしまう大きな原因の一つです。

同じ強さのストレスを受けても、とらわれない人もいる

もうひとつは、「ある程度のストレスは生きていると誰もが受けるもの」ということが関係しています。例えば、二人組で仕事をしていたときに大きなミスをしてしまった場合。ミスが上司に発覚し、二人揃って怒鳴るように叱責されたとしましょう。片方は、上司に怒られたその場では気持ちが落ち込んだものの、その後は普通に業務に戻ることができました。しかし、もう一人は上司に怒鳴られたことがずっと頭に残り、「また怒鳴られるのではないか」などととらわれてしまい、上司の顔色を常に伺い、声を聞くだけで体がビクビクするようになってしまいました。

このように、同じストレスを受けているのに、平気な人とそうでない人がいるということを理解できない人が、世の中にはまだまだ多いのです。

理解されないストレスが、さらに本人の病状を悪化させる

適応障害は誰もがかかる可能性のある病気であり、日常生活を送っていれば、少なからず遭遇するであろう「身近なストレス」が原因となります。実際に適応障害を発症する人としない人がいるのは、「ストレス状況と本人の特性とのミスマッチによるから」だと、勝さんはいいます。つまり、同じレベルのストレスを感じても、対処できる人は適応障害を発症しませんが、ミスマッチによって、それができずにいる人は適応障害を発症してしまう可能性が高くなるということ。

人によって、ストレスに対する得意不得意があります。あるストレスに「なんだ、それくらいのこと」と跳ね返せる、心のバネに強さがある人もいれば、そのストレスを跳ね返すことができない心のバネの弱さがある人もいます。もし、適応障害かもしれない人に、「サボりたいから嘘をついている」「現実から逃げているだけ」などと、心ない態度や言葉をなげかけてしまったら……。心のバネがただでさえ弱っているところに、理解されない恐怖が追い討ちをかけ、さらに周りを頼ったり相談したりすることから離れてしまいます。その結果、一人で抱え込んで病状を悪化させてしまう恐れもあるのです。

とらわれ
『「とらわれ」「適応障害」から自由になる本』勝 久寿・著(さくら舎)

教えてくれたのは…勝久寿(かつ・ひさとし)先生
人形町メンタルクリニック院長。医学博士。精神科医。もっとも身近でもっとも手ごわい心理現象として「とらわれ」という言葉を提唱し、それらに悩む人々へ、本書を「とらわれ」から抜け出るための手引きとして、対処法やメッセージを発信。行政機関や企業のストレス対策についての研修、メンタルヘルスに尽力している。

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Text by Aya Iwamoto

AUTHOR

ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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