「私は美しい」以外のルッキズムとの戦い方|『わたしの体に呪いをかけるな』【レビュー】

 「私は美しい」以外のルッキズムとの戦い方|『わたしの体に呪いをかけるな』【レビュー】
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太っていることに対する過剰な意味づけ

リンディは幼い頃から太っていた。見知らぬ人から痩せるようにアドバイスされたり、太っている人は自己管理ができておらず怠惰で、自分を恥じ入るべきだというメッセージを周囲からたえず受け取っていたという。そのため、20歳頃までは自己肯定ができず、自分は不完全な存在だと思い込んでいたそうだ。

実際、「太っている人は、健康的な体を維持することができない怠惰で不健康な人だ」というのは真実ではない。健康的な生活を送っていても痩せにくい人はいるし、平均体重より重くても健康な人はいる。

本書では、「太っていることは恥だと思い込まされていた」ことに気づき、自分の体ではなく、社会の中に深く根付いた差別意識こそが問題だと、つまりルッキズムこそが問題だったのだと気づくまでの道筋がポップに描写されている。

ルッキズムとは、美醜だけの問題ではない

ルッキズムとは外見に基づく差別のことだ。

外見が「〇〇人っぽい。だから〇〇なんだ」と差別する日本人もいれば、移民への差別意識から、黒人やアジア人、ラテン系の採用を見送る欧米企業もある。フェミニンなファッションを好む男性をキモいと差別する人もいれば、「女性らしくない」外見の女性を嘲る人もいる。

つまりルッキズムは、レイシズムやセクシズム、「こうあるべきという、らしさ」とも分かち難いものであり、単純な美醜の問題に止まらないのだ。

さらには、能力主義、自己責任論とも結びついている。太っている人を差別する心理は、「努力を怠っているから太っているんだろう。努力で改善できるはずのことをしていないのだからバッシングされても当然」という、そもそもの体質や環境を無視した過剰な自己責任論も垣間見える。

リンディは最愛の父を亡くしたあと、ネット上で父親になりすましたトロール(匿名で暴言を書き込む人を指す、主に英語圏で使われる言葉)から激しい暴言をぶつけられる。のちに、このトロールの男性は、「自分自身が望む体重より35キロオーバーしていること」「ありのままの自分を受け入れている太った人々、とりわけ太った女性に対して怒りを覚えた」と打ち明けた。太っている女性が堂々と、幸せそうに意見を述べている点に対して、彼が怒りを感じたのは、太っている女性に求められる「らしさ」をリンディが逸脱していたからだろう。自分は「らしさ」の枠のなかにとどまっているのに、身の程知らずにも枠外でいきいきと生きているように見えたため、攻撃するに至ったのだ。つまり、彼女の美醜に対する攻撃ではなく、「らしさ」からの逸脱に対する制裁だったのだ。

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原宿なつき

原宿なつき

関西出身の文化系ライター。「wezzy」にてブックレビュー連載中。



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