「損な役回りを引き受けてしまう」「我慢ばかりしている」"自分をいじめる行動"がもたらす影響とは

 「損な役回りを引き受けてしまう」「我慢ばかりしている」"自分をいじめる行動"がもたらす影響とは
canva
石上友梨
石上友梨
2022-02-10

「ついつい自分を責めてしまう」「自分が損をする役回りを引き受けてしまう」「負担の大きいスケジュールを組む」「我慢ばかりしている」「健康に悪い行動を取る」など、自分をいじめていませんか?いじめてばかりで、自分のケアはおろそかになっている方は、今回の記事を参考にしてください。

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意識的・無意識的問わず、自分をいじめるような行動が習慣化すると、私たちの心身には様々な影響があります。例えば、自己批判はうつと関係していることが分かっています。他人から否定されるだけではなく、自分で自分を否定しても身体は同じように反応します。悲しくなったり絶望したり、身体が不調になったりします。

それでは、自分をいじめてしまう代わりにどうすればいいのでしょうか?答えは、「セルフ・コンパッション」です。自分を思いやる行動を増やしていきましょう。コンパッションとは、もともとは仏教用語で「思いやり」「慈悲」を意味します。ダライ・ラマによると、慈しみとは、生きとし生けるものの幸せを願う心とされています。セルフ・コンパッションは、「自分への思いやり」「自分への慈悲」と翻訳されることが多いです。

セルフ・コンパッションの3つの要素

セルフ・コンパッションをアメリカで広めたクリスティン・ネフ先生によると、セルフ・コンパッションには3つの要素があります。

マインドフルネス

「いま」この瞬間をしっかりと見つめ、良い・悪いと判断せずにありのまま認めることです。過去の失敗にとらわれずに、未来の理想の姿ばかり追い求めず、現状や自分の気持ちをありのまま見つめます。

自分への優しさ

自己批判せず、困難な状況でも自分に優しい気持ちを向けることです。自分にとって大切な人と接するかのように、今の自分に必要な言葉をかけるなど、温かく寄り添うように接してみましょう。

共通の人間性

他者と共通している部分を意識し、つらさや悩みを共有することです。他者と比較して「自分だけがダメだ」と考えると、独りぼっちの感覚が強くなります。しかし、悩みを抱えているのは、自分だけではありません。自分が欠点だと感じていること、自分が失敗したことを同じように悩んでいる人が必ず存在します。人との違いばかりを探すのではなく、共通点に目を向けましょう。

セルフコンパッション

セルフ・コンパッションは日本人に必要なこと

研究によると、タイなど仏教を信仰する国では、アメリカよりもセルフ・コンパッションの度合いが高い結果となりました。一方、儒教思想の強い日本の平均値はアメリカの平均値よりも低いことが分かっています。私たちが抱える「人の目を気にする」「人と比べてしまう」といった悩みを解決するヒントがセルフ・コンパッションにあるかもしれません。

そして、近年は多様性の大切さが謳われています。しかし、協調性がない人、目立つ人など、マイノリティを排除しようとする動きは無くなりません。自分に優しくできない人は他人にも優しくできません。自分を受け入れられない人は他人を受け入れられません。このように「違い」に敏感で、他人を受け入れられないのは、本当は自分を受け入れられない心があるかもしれません。セルフ・コンパッションを高めることでダイバーシティの実現につながることが期待できます。

自分への接し方を変えよう

自分をいじめてしまうパターンから、少しずつ自分への接し方を変えましょう。私たちは、「言葉」の影響を強く受けます。それは人から言われた言葉だけではなく、自分で自分にかけた言葉も同じです。一方で、他者から思いやりを向けられたのと同様に、自分に思いやりを向けることで、オキシトシンやエンドルフィンという愛情や幸福感と関係するホルモンが分泌されます。自分自身にかける言葉を、セルフ・コンパッションの3要素を意識した内容に変えてみましょう。

①良い悪いも含めて客観的な視点から物事を眺め、ありのままの自分を受け入れること。

②親友や家族など大切な人と接するかのように、自分自身に優しく、大切に扱うこと。

③他者との違いではなく、共通点を意識して、自分は1人ではないという感覚を育むこと。

例えば、失敗してしまった時、「落ち込んでもいいんだよ」「十分にやったよ。今日はゆっくりとお風呂に入ってリラックスしよう」「失敗したら誰でも落ち込むよ」などと声をかけましょう。

拙著『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』にも書いていますが、セルフ・コンパッションは、すぐに育つわけではありません。継続して自分との接し方を変えていくことが大切です。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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