【『食べて、祈って、恋をして』著者対談】恐怖心を乗り越えて創造性を養う「芸術的霊感」に触れる方法

 【『食べて、祈って、恋をして』著者対談】恐怖心を乗り越えて創造性を養う「芸術的霊感」に触れる方法
Edwin Tse

ヨガジャーナルアメリカ版の人気記事を厳選紹介!ベストセラー作家のエリザベス・ギルバートとジェニファー・パスティロフのふたりが、誰よりも癒しを必要としている女性たちに魅力的で本格的な癒しの手立てをお届けする。恐怖心を乗り越えて人生を充実させるために創造性を発揮するとはどういうことなのか、ふたりから学ぼう。

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一緒に生み出す…

「大人になってから友達をつくるにはこつがあるの」。あの『食べて、祈って、恋をして』の著者、エリザベス・ギルバートはこう話す。カクテルが必要なわけではない。何か特別な技だろうか。いや、こつは、何かを一緒に生み出すことだ。その何かが人類と地球のためになることであればさらにいい。エリザベス・ギルバートとジェニファー・パスティロフも、そうやってオンライン上から現実の世界へと関係を発展させていった。
ギルバートとパスティロフにはこの分野の多くの実績がある。創造性のバイブルと称される『Big Magic「夢中になる」ことからはじめよう』(2015年)によって、ギルバートはこの分野の権威のような存在になっている。講演やワークショップでは、参加者たちが自分の小さな「魔法」を見つけようと好奇心で目を輝かせている。一方、パスティロフは長年リトリートとワークショップを企画して、参加者が元気になって自分自身を愛せるよう指導してきた。そしてこの活動テーマの集大成として昨年、自身の回顧録『On Being Human』が出版されるに至った。パスティロフの言葉を借りれば、ふたりはオンラインで出会い、インスタグラムで互いにフォローしてメッセージを送りあったのちに、「誰かの役に立ちたい、正真正銘の変わり者でありたいという熱い思い」で結ばれた。ふたりが重ねた会話から一連のワークショップ「On Being Magic」が誕生した。この女性を対象とした創造性と自己啓発のワークショップは、ふたりがそれぞれの著書で伝えている内容を実践するもので、完全に無料で行われる。これまでに実施されたのは1回だけ(US版掲載号の印刷時には、新型コロナのために2020年4月に予定されていた2回目が中止となっていた)。この企画は誕生したばかりで進化し続けている。企画者であるギルバートとパスティロフのふたりに説明してもらうのが一番だ。

癒しの魔法
photo by  Edwin Tse

ふたりの大きな力を結びつける考えはどうやって生まれたのですか。

エリザベス・ギルバート:
ジェンと友達になって、何か一緒に始めようと思ったの。ふたりでそんな話を始めたとき、私は「何かしたいけれど、無料にしたいわ。普段はヨガやアートリトリートに行かないような人たちに来てもらいたい」って言ったのよ。私たちは懸命に努力している女性や、そんな女性を助けている女性(つまり女性の問題のための組織で活動している女性)に手を差し伸べたいと思ったの。私たちの目標は、そういう女性たちが甘えられて、愛されて、認められる一日を提供すること。ワークショップの冒頭で私たちはこう言うのよ。「皆さん、今日は何もしなくてもかまいません。ヨガや内観をしたくなければ、ここにあるヨガマットを部屋の隅に敷いて、一日中眠っていてもいいんです。12時には私たちが昼食を持っていきますから。私たちは疲れている皆さんの力になりたい。皆さんを大切にしたいんです」

ジェニファー・パスティロフ:
そうね。私たちは女性と性別にとらわれない人たちに集まってもらって、安全な空間を提供し、自分の体について書いたり体の可能性を探ったり、お互いの声を聞いたりしてもらいたいと考えたの。私はそれを「めちゃくちゃ楽しむ」って呼んでいるわ。ワークショップでは踊って、歌って、笑って、泣くの。参加者が150人いたとしても、繊細で親密で夢のような活動で、本質的に創造性を生み出す力を持っているの。何よりもいいことは、リズも私も正直であけっ広げなので、参加する女性たちも「そういうふうになれる」って感じることだと思うわ。

創造性と言っても実に広い概念ですが、おふたりはどこから定義し始めるのですか。

ジェニファー・パスティロフ:
言葉にするのは難しいわ。今そう聞かれたら、立ち上がって踊りたくなったもの。「ちょっと待って、体で表現させて!」という感じかしら。私にとってそれは、目覚めていて直感が研ぎ澄まされている状態のこと。だから、しばらくの間うまく定義できなかった。心の中で「きっと誰でもそうよ」って思ったわ。「ただ何かをつくる、作品をつくる、何かを書く、コーヒーを淹れる」。こういうことを考えると生きているって感じるわ。だって、創造性はほんとうはいつも私たちと共にあるものだから。それが魂とつながるということだと思うわ。ここで私の創造的な踊りを披露しようかしら。

エリザベス・ギルバート:
創造性には開放性と脆弱性があるわね。最近、去年から溜めていた雑誌が積み重なっている写真をインスタグラムに投稿したら、膨大な数の質問がきたの。なかには泣きたくなるものもあったわ。このときは「どうやったらそうなるの」「どんな方法で整理しているの」「どんなペンを使っているの」って聞かれたわ。本心としては「あら、これは空白ページよ!自分の好きなようにしていいのよ」と思った。でも、私たちは何かルールを求めることをやめないし、絶対的な君主が現れて万事うまくいくように指示してくれればいいのにと思うことをやめないものなの。だから、本心を書かずに、どんな雑誌かわかるように何ページか写真を撮って、インスタグラムに上げたわ。特に規則性のない寄せ集めだったわよ。買い物リストや絵、祈りの言葉、コラージュ、詩……どのページにも実に創造的なものが写ってたわ。

おふたりはどうやって自分の芸術的霊感の声を聞くのですか。

エリザベス・ギルバート:
8歳か9歳の頃に好きだったことを思い出してみるといいの。10代になって性や薬物に触れる前には、ほとんどの人が違う方法で気分よく楽しんでいたのよ。そういうものは無意識のうちに創造的であることが多いの。大半の人はその頃既に不安を抱えていたはず。だって不完全な文化のなかの不完全な家庭で育つのだから。子どもたちは神経を落ち着かせる方法を自分で編み出しているのよ。姉と私は子どもの頃ずっと、絵を描いて、お芝居をして、物語をつくって遊んでいたわ。それって今私が心を静めるためにしていることよ。だから「夢は偉大な小説家になること」って言いましょう。8歳になるとそういう遊びの色が変わり始めるの。それがひとりひとりの物語につながっていくのよ。ほんとうよ。神経経路が静まる方向に動いたとたんに考えが浮かんでくる余地が生まれる、という感じね。だから大きな夢に手が届きそうもなかったら、それとは違う何か創造的なことをしましょう。

ジェニファー・パスティロフ:
私は自分が世界でいちばん非創造的な人間だと感じたら、立ち止まって周囲を見渡し、最高に美しいものを5つ探すことにしているの。「美しいもの探し」って呼んでいるわ。どこにいても、立ち止まって周囲を見渡すの。そうやって注意を払い始めると……つまりそれが創造的ということよ。誰にでも創造的精神はあるわ。それに気づくには注意を払う必要があるのよ。

なぜ自分が創造的であると思えない人がこんなにいるのでしょう。

エリザベス・ギルバート:
私は創造性と良好な関係にあるわ、今もこれまでも。それが私をユニークな存在にしていると思う。それ以外のものとの関係はひどいものよ。人がふつうは問題なく関係を持てるものが、私にはどれもこれもややこしいの。創造性だけが例外。なぜこれが苦しい道でないってはっきり言えるのか自分でもわからない。神から授かった才能なのね。創造性自体も神からの愛の贈り物で、それは私たちとつながりたい、私たちを幸せにしたいと望んでいるものなの。私たちの文化では、創造性の暗い側面がもてはやされて、作品のために命を落とす芸術家の話が好まれるけれど、私はそういうことはまったく経験していないわ。『Big Magic「夢中になる」ことからはじめよう』では、私が知っていることを皆さんに伝えたかった。私が骨の髄の部分で真実だと思うことを伝えたかったの。人とひらめきとの関係の本来の目的は、苦しみでないということよ。

ジェニファー・パスティロフ:
『On Being Human』に書いたJust-A-Box(ただの箱)が頭に浮かんでくるわ。私たちは自分がひとつの箱に収まらなければいけないと思っているの、四隅がきっちり折り込まれた箱ね。ただの母親。ただのウェイトレス。ただのヨガ講師。ただの会計士。誰もその箱を出て、奇跡を起こす力のある「別の何か」に入っていけるとは思わない。その理由は、「変わろうとしている自分は誰?」「ただの箱から飛びだそうとしている自分は誰?」って思うからよ。
自分とは、自分が繰り返し行っているものそのものよ。大人になると陽気でなくなる人があまりに多いわ。大人は創造性が自分の内側にあると思えないの、忘れてしまっているから。だからほんとうの自分を思い出すためには何でもしなければいけないわ。大人は自分に喜びをもたらすことをしなくなるわ。どこかで誰かに「上手じゃない」って言われたからよ。小さい頃から気分の落ち込みに苦しんできた私は、何か素晴らしいものを生み出すためにこんなにも辛い思いをしているんだってよく思っていたわ。今は抗うつ薬を服用していて、今でもまれに自分には創造性のある骨が1本もないって思って一日中ただNetflixを見ている日もあるけれど、はっきり理解しているわ。創造的であるためにすべきことは、創造することだけ、何かを生み出すことだけだってことを。一番にならなくてもいいし上手である必要すらないのよ。創造的であるとは、何かをすること。物や作品をつくったり、人を愛したり、ハグしたり、コーヒーを入れたり……。小さなことや、大きなこと。名前をつけられないことや、箱に収まらないこと……。魔法を生み出しましょう。あらゆるものを生み出しましょう。

『Big Magic「夢中になる」ことからはじめよう』にも『On Being Human』にも恐怖心を超えることについて書かれています。どうやって最初の一歩を踏み出すのでしょうか。

ジェニファー・パスティロフ:
私の場合もっと正直に言うと、「私は恐れを居着かせない」だと思うわ。恐れを感じたことがないわけではなく、怖くても行動してしまうの。ここに来るのも怖かったわ。でも、今ここにいる。だから朝起きたら自分のためにマントラや祈りを唱えているわ。「今日一日、恐れが私のボスになりませんように」って。重要なのは、恐怖心を認めたうえで恐怖心に大声を出させないこと。恐怖心に人生を台無しにさせず共存するのよ。

エリザベス・ギルバート:
ここに大きなパラドックスがあるわ。人は恐れを近くに引き寄せることによって、恐れと別れるものなの。私の場合、恐れを温かい心の中心に引き入れて愛をもって受け入れるほど、恐れは静まっていくわ。恐れは遠くに押しやろうとするほど、大声で叫んでくる。恐れを捨てよう、嫌いになろう、殴ろう、蹴ろうとするほど、偉そうに命令しようとする。つまり、恐れは何かの暴力的言語であって、私の一部であり、私のなかに生まれるもので、私の内なる家族の一員ということよ。だから、私は恐れについてはほんとうに自分に優しいの。私が恐れを克服する方法について指導するとしたら、最初に、克服できるという考えを捨ててもらうわ。克服するのではなく、恐れが座る椅子を引き寄せるのよ。私が本を執筆するときはいつもすぐ隣に恐れが座っているわ。恐れを自分から遠ざけておきたくないの。誰かが以前「あなたのトラウマは傷ではない。トラウマはあなた自身と傷との隔たりだ」と言っていたわ。だから、恐れを追い払ってしまうより自分のなかに入れて大切にするほうがずっといいのよ。恐れを遠くに追い払うほど、恐れが問題を引き起こすわ。
覚えておいてね、どの人の恐れもまったく同じなの。でも、好奇心は人によって違うわ。それがあなたを世界にひとりだけの存在にするの。人の特徴のなかでは恐れがいちばんつまらないわ。だって私のとまったく同じだから。保証するわ。私のワークショップでは、自分の「恐れ」から自分に宛てた手紙を書いてもらっているのよ。「恐れ」が何を心配しているか書くのだけれど、皆書きながら泣いているわ。すごく繊細なことなの。でも、どの手紙もひとつ残らずまったく同じ。私は参加者全員の恐れの手紙を一字一句たがえず書けると思うわ。恐れはどれも同じだから。でも、そのあとで「魅力を感じる感覚」から自分宛てに手紙を書いてもらうと、そこには何を愛しているとか、何をするとスイッチが入るとか書かれているのよ。ひとつも同じものがないからそういう手紙を読むと涙が出てくるわ。魅力を感じる感覚というのはいわば好奇心で、それに従い始めたら、ほかの人の人生とは違って見える人生を歩み始めることができるの。恐れに従ったら、あなたの人生はほかの大勢の人の人生と同じように見えるでしょうね。それは絶対にしてはいけないことね。

何かを生み出そうとするときインポスター症候群※に陥ることはないですか。

※自分が達成したことを自分で評価できず、人を騙している詐欺師(imposter)のような気持ちになること

ジェニファー・パスティロフ:
あら、今の私がまさにそうよ。著書が1300万部売れた人の隣に座っているなんて。

エリザベス・ギルバート:
今の私もよ。1300万部売れたけれど。

ジェニファー・パスティロフ:
私は2013年にサウスダコタ州で開催したワークショップで60人を指導したの。そこで私が恐れについて話していると、ひとりの女性がテキストを閉じて立ち上がり「私にもあなたがしていることができると思う」って言ったの。そして、会場を回って私をからかい始めたの。「声の調子もあなたそっくりに話せるわ」って。ひどいわよね。それでどうなったか?私は死なずに、今ここにいる。その直後に誰かが「恐れにはいろいろな表れ方があるのね」って言ったのが印象的だった。私をからかった女性の恐れは卑劣なものだった。言うまでもなく、そのせいでありとあらゆるインポスター症候群の症状が引き起こされたわ。あれはあの女性の恐れにすぎなかったのだと悟るまで続いたわ。あの直後は、朝起きると不安だった。それでもとにかくワークショップをしたわ。翌日もその翌日もそのまた翌日も。

エリザベス・ギルバート:
ジェン、ほんとうによくやったと思うわ。インポスター症候群があると、頭のなかで「何様だと思っているの」って声がするの。驚くほど力強く。多くの人にとってその声は、ただそうやって問いかけてくるだけだから。尻込みして穴に入ってしまいたくなるわよね。人はカビの生えた布の汚い部分を再び頭上に引き上げてから、汚れた穴の中に隠しているの、自分が属していると思う穴に。その声はいつも一定の声色で、不吉な悪魔みたいに「何様か」と問い詰めてくる。声色を取り除いたら、どれほど牙がなくなることか。不吉な音を消し去って、中立的な気持ちで「あなたは自分が誰だと思いますか」って紙に書きましょう。そして私はこう言うわ。「ありがとう。素晴らしい質問だわ。私は神の子だと思う。確信はないけれど、まず間違っていないと思う」。「あなたは自分が何をしていると思う?」私たちはこの問いに答えていない。しゅんとなって倒れてしまっている。この問いを真剣に受け止め、答えましょう。友人のロブ・ベルがよく話しているユダヤ教のタルムードの話があるわ。「昔、賢明で偉大なラビがある晩、瞑想しながら砂漠をあてもなく歩いていると、要塞に行きあたった。そこにいた兵士がラビを見つけ『お前は誰だ。ここで何をしている』と言った。ラビは兵士に向かって、この質問をすることに対していくら支払われているのかたずねた。兵士が自分の給料の額を答えると、ラビは言った『その倍を支払うから、私が生きている間ずっと私のお供をし、毎日私にその質問をしなさい』」。「あなたは誰?ここで何をしているの?」。私たちは常にこのふたつを自分に問うべきよ。インポスター症候群の悪魔の声が聞こえてきたら、こんなふうにするといいわ。「じっくり考える機会をくれてほんとうにありがとう。私は自分が誰だと思っているの?私は自分が何をしていると思っているの?」。それから、答えるのよ。

癒しの魔法
photo by  Edwin Tse

愛の神はどこにいるのか

エリザベス・ギルバートが毎日実践している書く瞑想(ジャーナリング)を試してみよう。どの人のなかにもある霊的な部分、無条件の愛に近づく方法だ。

「私は1日も欠かさず私自身と愛の神との会話を手紙の形で書いています。驚くほど単純なのに人生を根っこから変える力がある手紙です。自分のなかの愛の神に向き合うためすべきことは、ただひとつ。誰かほかの人から言ってほしいことを想像して書くこと。これまでずっと聞きたくてしかたなかったのはどんな言葉ですか。それを書いてください。
私は毎朝、こんなふうに手紙を書きます。“不安だわ。ほんとうに落ち込んでいるの。ほんとうに怖い。もうめちゃくちゃで、何をしているのかわからない”。それから考えます。もし、私がずっと愛してやまなかった最愛の人がこの部屋にいたら、その人はどう言うだろうと。
次にこう書きます。“私はここにいるわ。あなたは素敵よ。私はずっとあなたを守ってきたわ。いつもあなたと一緒よ。あなたを決して手放さない。あなたに成功してもらいたいとさえ思わない。あなたもそう感じているのがわかるわ。あなたは一日中そう感じていられるし、私はこれから先もあなたのことを愛している。あなたがどんなことをしたとしても、私の愛を失うことはないわ。そして私の愛を得るためにあなたがしなければならないことは何もないわ”
これがこれまで何千回となく書いてきた会話です。私には欠かせないものです。心のなかで何かが起きて、会話のようなものが聞こえてきて、それが何か別のところから来ているような気がするとき、私は愛の神の存在を実感します。試してみてください。書き終えたときには、心が安らかになって、抱きしめられている感じがしますよ」

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◎会話に加わろう
エリザベスとジェニファーが芸術的霊感に触れることや悲しみを癒すことなどを語る。聞き手は本誌US版の編集長リンゼイ・タッカー。新たなポッドキャストThe Yoga Showでこの会話を楽しもう。yogajournal.com/podcasts 

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by Lindsay Tucker
photos by Edwin Tse
hair & make-up by Beth Walker
translation by Setsuko Mori
yoga Journal日本版Vol.78掲載

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