【不完全さを受け入れよう】あなたのポジティブな振る舞いが「有害」に変わるとき

 【不完全さを受け入れよう】あなたのポジティブな振る舞いが「有害」に変わるとき
広告

ヨガ的な活動としてのプラティパクシャ・バーヴァナ

スピリチュアル・バイパスは、ヨガのコミュニティでも横行しています。「ポジティブなバイブスのみ」というエートスは、常に文化の一部となっています。そして、私たちが生きている時代の感情的な要求に応じて、その普及率は高まっているようです。ウィジェヤクマールは、社会的なレベルで「体系的な人種差別を否定し、BIPOC(黒人、先住民、有色人種の略称)の生活体験を否定し、BIPOCの声を消し去る」ために使われていると見ています。疎外されてきた他のグループにも同じことが言えます。不正に抗議している人たちに、状況が変わったことに感謝しろというのは、スピリチュアル・バイパスしているようなものです。

パタンジャリの『ヨーガ・スートラ』の翻訳を著した哲学者のシャム・ランガナサン博士は、『プラティパクシャ・バーヴァナ』を、ヨーガの倫理的教義である「ヤマ」を扱った一連の経典(スートラ2.33~2.35)の中に含めています。ランガナサン博士はこれらを“ヨガ的活動の第一歩"と呼んでいます。このような観点から、ランガナサン博士は、プラティパクシャ・バーヴァナは、単に個人的な苦しみを和らげるための戦術ではなく、「組織的な害に対抗するための現実的な活動」に焦点を当てていると言います。また、ウィジェヤクマールと同様に、スピリチュアル・バイパスは、「ヨガの倫理的で活動的なルーツを回避する」という、アプロプリエーション(流用)と白人至上主義の産物であるとランガナサンは見ています。

これらの学者たちは、パタンジャリがヨガの実践者に『プラティパクシャ・バーヴァナ』を提供したのは、単に私たちが苦しんでいるときに気分を良くするためではない、と指摘します。また、誰かの痛みを和らげるための絆創膏としても提供していません。それよりももっとパワフルなものなのです。プラティパクシャ・バーヴァナは、実はお互いを大切にするためのメソッドなのかもしれません。

ウィジェヤクマールは、「ヨガは集合意識であり、すべての存在を平等に愛することです。中立はありません。個人の解放は集団の解放と密接につながっています」とのべています。彼女は、ヨガのコミュニティは、個人的な利益や解放のために練習の断片を利用するのではなく、むしろ "すべての人に対する愛、統一、思いやりに戻る"ための方法として学ばなければならないと言います。

ポジティブなバイブスよりもパワフル

周りが良かれと思って私に人生の課題を回避するように勧めるとき、私はそれを、私(と彼ら)に自分の不快感を和らげてほしいという願望があるからだと考えます。そのためには、どうすればいいのかを優しく教えてあげることが大切です。夫には、私が相談したときにはただ聞くように言い聞かせています。友人に相談するときは、"今は解決策が必要なのではなく、ただ聞いてほしい"と伝えます。

あなたが誰かの不安や悩みを聞く番になったとき、知らず知らずのうちにスピリチュアル・バイパスを重ねてしまわないように、以下を意識すると良いでしょう。

ただ耳を傾ける

スペースを確保するというのは、誰かの気持ちをエネルギー的に受け止める役割を果たすことです。何も言わずにただ聞くことは、人によっては非常に難しいことです。しかし、何も言わずに耳を傾けるというシンプルな行為は、聞いている人にとって驚くほどの癒しになります。判断や解決策なしに聞くことは、感情的に誰かの手を握って気持ちの旅をするようなものなのです。

正そうとしない

困っている人が相談に来ると、すべての答えを知っていなければならないというプレッシャーを感じることがよくあります。しかし、何をすべきかを知る必要はありません。解決策を提示しようとすると、その人の経験を否定してしまうことになり、かえって有害になってしまいます。

ごめんねと言う

シンプルで、ちょっと開き直ったような言い方ですが、これがなかなかの威力を発揮します。問題の原因や解決策がないことを謝っているのではありません。時には、単に思いやりを示すことが解決策になることもあります。相手に、あなたが自分の話を聞いてくれていること、気にかけてくれていることを伝えることができます。

不完全さを受け入れる

常に完璧であることが目標ではないことを忘れず、他の人にも優しく伝えましょう。現実には、私たちは人間の形をしており、人間としての経験をしています。つまり、私たちは間違いを犯したり、つらい時期を過ごしたりすることになります。人間であることの素晴らしさは、そのような経験の中で異なる対応をするたびに、私たちの未来(カルマや運命と言ってもよい)を少しずつでも変えていくことができることです。

広告

By SARAH EZRIN
Translated by Hanae Yamaguchi

AUTHOR

ヨガジャーナルアメリカ版

ヨガジャーナルアメリカ版

全米で発行部数35万部を超える世界No.1のヨガ&ライフスタイル誌。「ヨガの歴史と伝統に敬意を払い、最新の科学的知識に基づいた上質な記事を提供する」という理念のもと、1975年にサンフランシスコで創刊。以来一貫してヨガによる心身の健康と幸せな生き方を提案し続けている。



RELATED関連記事