妊娠中に避けるべきポーズ&呼吸のルールとは?【理学療法士によるマタニティヨガの注意点】
妊娠中の方に人気の「マタニティヨガ」ですが、そもそもマタニティヨガとはどんなもの? 避けるべきヨガポーズや呼吸法について、理学療法士の堀川ゆきさんに教えていただきました。
マタニティヨガとは
待ち望んだ新しい生命がお腹の中に宿り、10ヶ月という期間を一緒に過ごしていく、妊娠は女性にとって一生のうちでめったにない貴重な体験になると思います。
妊娠中は感動と希望とに溢れて毎日が幸せでいっぱいだった人もいれば、一方で不安が大きかったり、つわりや腰痛や貧血などマイナートラブル続きでとにかく辛かったという人もいたり、妊娠中の経験は人それぞれかもしれません。
そんな時の母子の心と身体の支えとなる一つが、マタニティヨガでなないでしょうか。
実際マタニティヨガの効果を検証した研究はたくさんあります。マタニティヨガにより、腰痛の改善、ストレス、抑うつ、不安などの精神的症状の改善、分娩時の疼痛など身体的症状が軽減されたり、そのほか産科的合併症や分娩時間などの周産期的予後が改善するという可能性も示唆されています。
妊娠中に避けるべきヨガポーズ
妊娠期はとても特殊な期間であるため、すべてのヨガポーズが妊婦さんに推奨されるわけではありません。
一般的にマタニティヨガで避けた方が良いとされているポーズをまとめました。
お腹が圧迫されるポーズ
上体を深く前屈するポーズは、太ももとお腹とが近付くことで腹部を圧迫するため母体にも胎児にも負担になります。
うつ伏せのポーズ
うつ伏せのポーズも、床と母体の重みでと腹部を押すように圧迫してしまうため負担になります。
腹筋を強く使うポーズ
腹筋に力を入れる際、アウターマッスルの腹直筋を使うと、母体の腹直筋離開や子宮収縮を起こしてしまうことがあり危険です。
お腹をねじるポーズ
腹部を深く捻るポーズも、腹部を絞るように圧迫してしまうため避けるべきと考えられています。
お腹を反らすポーズ
お腹を反らすポーズは、腹直筋離開や妊娠線が出やすくなったり、呼吸のコントロールが困難になるからです。
難度が高いポーズ
お腹の膨らみと重みで非妊時のようにコントロールがうまくいきません。また手関節や股関節周囲の靭帯がリラキシンというホルモンの影響で緩んでいるため、その部分への過度な負荷も避けるべきです。
不安定なポーズ
妊娠期のバランスポーズは、立ちくらみや貧血なども起こしやすく、お腹の膨らみと重みで想像以上に非妊時よりも難しくなります。万が一転倒した際もとても危険です。
仰向けのポーズ
仰向けになった際に、下大静脈が胎児の重みで圧迫されて母子ともに血流が滞り、仰臥位低血圧症候群を起こす場合があります。
逆転のポーズ
妊娠期の逆転ポーズは、立ちくらみや貧血などを起こしやすく、お腹の膨らみと重みで想像以上に非妊時との重心が変化しているので注意が必要です。
股関節周囲の深いストレッチポーズ
妊娠期にリラキシンというホルモンの分泌が盛んになり、出産に向けて特に骨盤の仙腸関節と恥骨結合の靭帯を緩めます。靭帯は過度に伸ばすと損傷してしまうため、深いストレッチは危険です。
ここであげたものはマタニティヨガでのNGポーズとして一般的にあげられているものです。また、安定期前のヨガも推奨されていません。
そして、妊婦さんが行うマタニティヨガは個人差が大きく、妊娠数週や妊娠経過、体調によって避けるべきポーズは異なります。必ず医師の許可のもと行うこと、不快や違和感を感じるポーズや、気分の乗らないポーズは安全のために避けましょう。
AUTHOR
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。
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