【ヨガ・運動や仕事による膝への負担を軽減】理学療法士による、膝を守るための「大腿四頭筋」筋トレ
歩行・階段の昇り降りなどを行う際、「膝」には体重の数倍の負担がかかることを知っていますか? 理学療法士の堀川ゆきさんに、普段から心がけることや、膝を痛めないために鍛えるべき筋肉とそのエクササイズを教えていただきました。
膝にかかる負担はどれくらい?
膝はとても大きな関節で、研究データによると、膝関節には、歩行では体重の2〜3倍、階段の昇りでは4〜5倍、階段の降りでは5〜6倍、しゃがみ立ちでは7〜8倍の負担がかかることが分かっています。膝は可動範囲が大きいのでケガも多く、軟骨の摩耗も起きやすくなっています。
例えば、スポーツをしている人の膝に多いケガは、靭帯損傷、半月板損傷、骨軟骨損傷があります。
成長期には、オスグッド・シュラッダー病、離断性骨軟骨炎があります。
中高年で最も良く見られる膝の疾患は、変形性膝関節症です。膝の運動を滑らかにする働きをしている関節軟骨がすり減って、痛みと変形を起こすのです。
ヨガで気を付けること
ヨガの際に、こんな膝の使い方をしていませんか?膝を痛めるリスクを高めるので、今すぐ見直しましょう。ヨガのアーサナでのNGアライメントとして以下の4つに注意しましょう。
①膝とつま先の向きが揃っていない
膝とつま先の向きは、どのアーサナの時も揃って同じ方向を向いていることが原則です。でないと膝にねじりのストレスがかかってしまいます。
②膝が内側に入っている
このようにいわゆる内股になりやすい人も膝を痛めてしまうので要注意です。
③膝が伸びすぎている(膝の過伸展)
トリコナーサナなどの時にこのように膝が伸び過ぎていませんか?膝の過伸展の危険についてはこちらのコラムを参考にしてください。
『膝の「過伸展」とは?理学療法士によるアーサナ過伸展チェックポイント』
④つま先よりも膝が前に出ている
上半身の体重が過剰に膝にかかってしまうため、膝はつま先よりも前に出ないように気をつけましょう。
日常動作で気を付けること
歩いたり階段を上り下りする際に、こんな膝の使い方をしていませんか?こちらも膝を痛めてしまうので要注意です。NG例は次はの3つです。
①階段昇降は下り階段だけ利用している
運動のために階段を利用することは良いことです。しかし、適切な運動効果が見込めるのは上り階段だけと考えた方が安全です。階段の下りは、実は膝には大きなストレスがかかるからです。理学療法士向けの専門書を数多く出版されている園部俊晴先生も、職場の8階の病棟までは階段で上りるそうですが、下りは膝の負担を避けるためにエレベーターを使うそうです。あのメジャーリーグのイチロー選手も、階段の下りをできる限り使わないようにしていたとも言われています。
これは私個人の意見ですが、駅構内のエスカレーターは、上りエスカレーターが優先されて設置されているところがほとんどですが、膝への負担だけを考慮するなら、本当は下りエスカレーターに切り替えるべきじゃないかなんて思っています。もちろんそんなことになったら、通勤時の駅の上り階段だけで疲弊してしまい、職場に着く頃にはみんなグッタリしていることでしょう(笑)
②歩行の時に、足の着地をドスンと行っている
歩く時、最も膝関節にストレスを加えるのは着地の時の衝撃です。踵から静かに着地するようにしましょう。階段を降りる時も同様です。ドスンドスンと降りずに、音を立てずに降りようとしてください。
③膝が痛いのに無理して運動している
歩くだけでも膝の痛みがある場合は、痛みを我慢して歩くことは悪化させる場合があるので避けてください。
その場合は、水中ウォーキングがおすすめです。浮力によって体重の負荷が減ることから、運動時の関節の負担が軽くなるという大きなメリットがあります。
具体的には、水深がおへその辺りなら体重の負担は約1/2に、水深が胸までの場合は体重の負担は1/3まで下がります。よって水中ウォーキングは、肥満の人、膝や腰の悪い人も安全に行うことができます。
そして実は、水圧が良い運動負荷になります。水の抵抗に逆らって動くため全身の筋力を使うので、地上で歩くよりも負荷がかかり筋トレ効果がUPします。
膝のためにどこを鍛えれば良いか
膝の機能維持に最も大切な筋肉は、太ももの前面にある大腿四頭筋です。大腿四頭筋は4つの筋肉から成り立っていて、人体で最も大きな筋肉でもあります。ストレッチやマッサージも大切ですが、大腿四頭筋を正しく訓練して筋力を強化すると、膝の痛みが軽減することが証明されています。
AUTHOR
堀川ゆき
理学療法士。ヨガ・ピラティス講師。抗加齢指導士。2006年に渡米し全米ヨガアライアンス200を取得。その後ヨガの枠をこえた健康や予防医療に関心を持ち、理学療法士資格を取得。スポーツ整形外科クリニックでの勤務を経て、現在大学病院にて慢性疼痛に対するリハビリに従事する。ポールスターピラティスマットコース修了。慶應義塾大学大学院医学部博士課程退学。公認心理師と保育士の資格も持つ二児の母。
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