「何でもかんでも人のせい」自分の非を他人のせいにする【他責思考】その裏側にある心理とは

 「何でもかんでも人のせい」自分の非を他人のせいにする【他責思考】その裏側にある心理とは
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石上友梨
石上友梨
2021-08-26

自分に非があるにも関わらず、いつも人のせいしている人はいませんか?

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自分に非があるにも関わらず、いつも人のせいしている人はいませんか?このような他責傾向が強い人は、自分とは全く関係がない人たちのせいにしたり、社会や時代のせいにして、自分の中に原因を見出そうとしないことがあります。他責傾向が強い人はどのような心理が考えられるのでしょうか。今回は他責傾向について検討してみました。

人のせいにしてばかりで自分の非を認めない人はどのような人なのでしょうか。私たちは多かれ少なかれ、自分の非を認めるよりも他人を責めてしまうことがあると思います。特に子供にはよくあることかもしれません。しかし、それが「いつも」だとどうでしょうか。対人関係に影響が出てしまう他、自分の欠点を克服して自己成長することができなくなってしまうでしょう。他責傾向の裏にはどのような心理があるのか知ることで、自己理解及び他者理解に役立ていきましょう。

自分の悪い面を認めることができない

誰しもが良い面だけを持って、悪い面は全部無くしてしまいたいと考えたことがあると思います。自分の悪い面を見たくないと感じることは当然の気持ちです。しかし、欠点を克服するためには、ありのままの自分を見つめ、欠点をカバーする方法や乗り越える方法を検討する必要があります。

他責傾向が強い方は、自分の悪い面を認めることができず、それを「ないもの」として扱ってしまうかもしれません。私たちには心の安定を図る働きとして、自分の中にある悪いものを外の世界に投影することがあると考えられています。「投影」とは、受け入れにくい欲求や感情を、他人にあるかのように思い込むことです。そうすると、自分の気分がいいときは、外の世界もいい世界に感じられ、自分が悪い状態の時は、外の世界や周りの人も悪いやつだと感じるのです。程度の差はあれど、誰しも経験したことがあるのではないでしょうか。悪い面だけを投影することで、相手の良い面を見れずに完全な悪いやつだと感じます。だからその相手にひどいことをしても罪悪感を感じづらくなるのです。

心を守る機能には様々な方法があり、投影のように幼い頃に使われやすい方法や、成長してから使えるようになる方法があります。同じ方法だけ、特に幼い方法ばかりを多用してしまうことは、健康的ではありません。そして、自分の中で抱えられないものを相手に投影し続けることは、自分がどんどん弱くなることでもあります。抱えられずに外に出し続けていると、少しの不快を少しだけ持っていることもできなくなってしまうからです。まずは、自分にはどのような傾向があるのか気づくことから始めましょう。

自己肯定感の低さ

自己肯定感の低さが、他責傾向に繋がることがあります。自己肯定感が低い状態だと、相手が善意でやったことや悪意がないようなことでさえ、被害的に捉えたり、ネガティブに受け止めたりしやすくなるでしょう。自己肯定感をこれ以上下げないために、そして傷ついた心を守るために、相手が悪いんだと責めたり、他責的になるのかもしれませんね。

幼少期に自己肯定感が育つためには、一緒にいることで安心感・安全感を感じられ、ありのままの自分を認めてくれる存在が必要です。頑張った時だけ認められる、人の役に立った時だけ褒められるのではなく、存在自体の無条件肯定です。「生まれてきてくれてありがとう」「生きているだけで嬉しい」といった関わりのことです。もしかしたら、存在を認めたり肯定してくれる存在がいなかったのかもしれないし、そのような関わりがあってもうまく受け取れなかったのかもしれませんね。自己肯定感を高めるためには、まずは安心できる感覚が大切です。そして、セルフコンパッション「自分を思いやること」が大切です。セルフコンパッションについては、「自分を思いやる力『セルフコンパッション』とは」の記事を参考にしてください

視野の狭さ

自分の良い面しか見れず、他者の悪い部分しか見えていないと、その分、相手を責めやすくなるでしょう。状況に即して客観的に見るためには、ネガティブな部分もポジティブな部分もバランスよく見る必要があります。そのために「マインドフルネス」を実践することが有効です。マインドフルネスによって「メタ認知」を鍛えることができます。「メタ認知」とは、認識していることを認識していることです。少し難しい言葉ですが、つまりは自分を客観視する力のことです。マインドフルネス瞑想などを実践し、メタ認知を鍛えることで視野が広がり、より客観的に物事を捉えることができます。視野を広げて、良い面も悪い面も含めてありのままの自分を見ること、他者や状況を客観的に見ることで、少しずつ他責傾向が軽減していくでしょう。
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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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