衝動性、攻撃性…怒りを感じた時にできる具体的な対処法とは|臨床心理士が解説
東洋医学では春は『怒り』の感情が湧きやすいと言われます。入社や転勤、異動、入学、クラス替えなどの環境の変化により何かとストレスが溜まりやすいこの季節、怒りの感情との上手な付き合い方を臨床心理士がアドバイスします。今日は3回目、『怒りの対処法を実践しよう!』というテーマで一緒に考えていきましょう。
怒りの具体的な対処法を知ろう
これまで、1回目【怒りによる問題を知る】、2回目【具体的な目標の設定】と、怒りの対処について段階的に触れてきました。『怒りの対処法』って一言だと漠然としていて、『具体的には何をしたら良いんだろう?』そんな風に思う方も、何となく怒りとの付き合い方が見えてきているのではないでしょうか。今回の記事では【怒りの対処法を実践する】ということに触れ、日常的に実践しやすそうな対処法をご紹介します。
怒りを感じた時にできる、上手な対処法
4つのRにしたがう
怒りに有効な対処のひとつが、怒りを感じるその場から離れること。心理学ではタイムアウトと表現しますが、このタイムアウトを行うために、【気づく(Recognize)】【離れる(Retreat)】【リラックスする(Relax)】【復帰すること(Return)】の4つのRを意識しましょう。
① 気づく
怒りのサインに気づきましょう。イライラしている時は様々なサインが現れているはず。例えば、体が熱くなる感じや全身に力が入る、声を荒げるなどの身体感覚や、何か行動にうつしたくなるなどの衝動性、あるいは攻撃性などです。そういった時に自分に起きそうなサインを5つほど考えてみましょう。
② 離れる
怒りのサインに気づいたら、その場から離れ、怒りを鎮められるような静かな場所に移動しましょう。怒りを感じる場面と距離を置き、心身を落ち着かせ、冷静になることが必要です。そういった場所があるかどうか考えてみましょう。可能であれば複数箇所持っておくと、候補の場所が使えなかった時に安心ですね。
③ リラックスする
怒りを発散してリラックスできる方法を考えましょう。散歩や運動、読書や呼吸法など気晴らしになることはありますか?
④ 復帰する
落ち着きを取り戻したら、再びカッとならないように怒りの引き金になった事柄を見つめてみましょう。
呼吸法やリラックス法を知る
怒りを感じたり、ストレスを感じる状況に置かれた時に、呼吸法やリラックス法を使って心身を緩めてあげるのはとても有効なことです。カウンセリングでも用いられる漸進的筋弛緩法や自律訓練法は身体の緊張を緩める感覚を身につけるのに役立ちます。また、怒りの状態の中では呼吸も浅くなりがちなので、普段から呼吸法を練習しておくと、役に立ちますよ。簡単な呼吸法をご紹介します。
【ゆったり呼吸法】
① 楽な姿勢になりましょう。
② 肺の中にたっぷり息を吸い込むように、3つ数えながら吸います。
③ 6つ数えながら吐いていきます。細く長くゆっくりと。
④ 何度か繰り返しましょう。
コントロールより、うまく付き合う意識を
3回にわたって、怒りとの付き合う上で視点や実践をお伝えしてきました。怒りの感情は私たちの一部であり、それを『失くす』『コントロールする』ということに意識が向きすぎると、逆にうまくいかないこともあります。怒りとは『うまく付き合っていく』くらいのテンションがちょうど良いのかもしれませんね。
参考文献 Ronald T. Potter-Efron, Patricia S. Potter-Efron著 堀越勝,樫村正美 訳(2017)『30分でできる怒りのセルフコントロール』金剛出版
AUTHOR
南 舞
公認心理師 / 臨床心理士 / ヨガ講師 中学生の時に心理カウンセラーを志す。大学、大学院でカウンセリングを学び、2018年には国家資格「公認心理師」を取得。現在は学校や企業にてカウンセラーとして活動中。ヨガとの出会いは学生時代。カラダが自由になっていく感覚への心地よさ、周りと比べず自分と向き合っていくヨガの姿勢に、カウンセリングの考え方と近いものを感じヨガの道へ。専門である臨床心理学(心理カウンセリング )・ヨガ・ウェルネスの3つの軸から、ウェルビーイング(幸福感)高めたり、もともと心の中に備わっているリソース(強み・できていること)を引き出していくお手伝いをしていきたいと日々活動中。
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