「怒りは私たちに必要な感情」だからこそ…怒鳴ったり侮辱したりしない、正しい怒りの表現方法とは

 「怒りは私たちに必要な感情」だからこそ…怒鳴ったり侮辱したりしない、正しい怒りの表現方法とは
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石上友梨
石上友梨
2021-04-06

皆さんは、どのような時に怒りを感じますか?不公平に扱われた時、理不尽さを感じた時、期待を裏切られた時、思い通りにいかない時、どのような時でしょうか。

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怒りの感情について、「ネガティブなもの」「感じない方がいいもの」と思っている方もいらっしゃるでしょう。しかし、怒りは私たちにとって必要な感情です。すべての感情は「不要」でも「悪いもの」でもなく、私たちに大切なことを教えてくれるサインになります。怒りの感情は、「理想と現実のずれ」「困りごとを抱えている」「欲求が満たされていない」など、私たちに様々なことを教えてくれるでしょう。怒りによって、私たちは、自分の欲求に気づき、必要な行動を取ることができるのです。

怒りの感情に気づき認めることができますか?

皆さんは、自分の怒りにリアルタイムで気づくことができますか?明らかに怒っているのに、「怒っていない」と強情に振る舞う人がいると思います。第三者から見ると、表情や口調が変化し、明らかに怒っているように見えても、当人は自分の感情を感じられていない場合があります。感情に目を向けることができないのか、感情を否認しているのかもしれません。怒りの感情に気づいていないと、感情に振り回されてしまっても当然です。怒りや強情さは他者との距離を遠ざけます。周囲が手を伸ばして助けようとしても、強情な態度で突っぱねると、周囲は近づけず手助けできなくなってしまいます。そして、周囲が離れていく様子を見て、悲しくなったり、誰も助けてくれないと更に怒りを感じるかもしれません。まずは、自分の怒りの感情に気づき、自分が怒りを感じていることを認めましょう。

怒りの感情、どのように表出している?

怒りの感情をどのように表出するかは、個人差があり、過去に経験したパターンに基づくことが多いです。例えば、子どもの頃、周囲の人が怒りをストレートに表出する環境にいた場合は、同じやり方を身につけることが多いでしょう。一方で、その人を反面教師にして「あのようにはならない」と絶対に怒りは表に出さないと我慢するようになるかもしれません。また、子どもの頃に、怒りを表出すると罰を与えられていた場合も、感情表出が自由にできずに、怒りを押さえ込むようになる場合があるでしょう。いずれにせよ、適切で自然な感情表出ではなく、極端でバランスの悪いものになってしまいます。

怒り
怒りの感情を、どのように表出していますか?

怒りの表出には、その場にあった、自分にあった適切な方法があります。怒りは表出方法によって、人間関係に大きな影響を与えます。怒りをストレートに表現すると、相手は恐怖を感じたり、侮辱されたと感じたり、あなたから距離を取りたいと思うでしょう。怒りを我慢し続けると、心身に負荷がかかり、身体症状が生じたり、慢性的なイライラにつながるかもしれません。

怒りの後ろにある感情に目を向ける

あなたの怒りの後ろにはどのような感情が隠れていますか?怒りは他の感情を隠すために生じる場合があります。例えば、傷つき、不安、喪失感、見捨てられ感。もし背後に隠れている感情があるのなら、怒りを解消するよりも、後ろの感情を癒してみましょう。後ろの感情に目を向けないと、怒りは繰り返されてしまうかもしれません。どのような行動を取れば、後ろにある気持ちや欲求を満たすことになるのでしょうか。率直な気持ちを相手に伝えることでしょうか?友人や家族に相談することでしょうか?自分に取って必要な行動を考えてみましょう。

適切に表現するための「アイ・メッセージ」とは

自分の気持ちを適切に相手に表現する場合は、相手を主語にせず、自分を主語にする「アイ・メッセージ」を使用しましょう。そして、「アイ・メッセージ」には、自分の後ろにある気持ちを添えてみましょう。例えば、相手から傷つくような言葉をことを言われて怒りを感じた場面だとします。相手を主語にして「(あなたは)なんでそんなこと言うの?」「(あなたは)二度とそんなこと言わないで」と伝えずに、「(私は)〇〇と言われて悲しくなった」「(私は)〇〇と言われて困ってしまった」など、自分を主語にして伝えましょう。

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相手を主語にして「(あなたは)なんでそんなこと言うの?」「(あなたは)二度とそんなこと言わないで」と伝えずに、「(私は)〇〇と言われて悲しくなった」「(私は)〇〇と言われて困ってしまった」など、自分を主語にして伝えましょう。

健康的な大人は、他者を脅かしたり、価値下げせずに、上手に自分の欲求を伝え、怒りを表現することができます。しかし、上手な表現方法を学ばなかったり、不適切な表現方法を身につけてしまった場合があるでしょう。初めから上手にやるのは難しいことです。無理をせず、少しずつ練習してみましょう。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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