医師が解説!頑固な便秘の意外な原因とは?スッキリ解消する「4つのヒント」

 医師が解説!頑固な便秘の意外な原因とは?スッキリ解消する「4つのヒント」
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日本人の女性の2人に1人が悩みを抱えているといわれる腸のトラブルが便秘。毎日、おいしく食事をし、気持ちよくトイレタイムを過ごすための生活習慣のコツを、マリーゴールドクリニック院長の山口トキコ先生に教えていただきました。

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口から入った食べ物が排泄されるまでのしくみ

便秘解消のために、まず知っておきたいのが、口から入った食べ物が便として出されるまでの体のしくみです。

「口から肛門までは、消化管とよばれる全長約9mの1本の管でつながっています。食事で食べた食べ物は、歯で噛み砕かれた後、食道を通り、胃に送られます。胃に食べ物が入ると胃が膨らんで胃壁が伸び、『胃・結腸反射』がおこり、大腸に信号が発信されます。すると大腸がミミズのように動くぜんどう運動を始め、たまっていた便が直腸に押し出されます。直腸に便がたまり、直腸の壁が刺激されると脳に信号が送られ、その信号を脳がキャッチすることで便意がおこり、『いきみなさい!』と脳が命令。それに従っていきむと、便が体の外に排出されます。この間、およそ24時間〜72時間といわれています」(山口先生)

腸イラスト
口から肛門までは全長約9m。大腸は、結腸と直腸で構成されています。

理想的な排便、いわゆる「快便」は、1日1回、便意をもよおしてトイレに行き、1〜2分でスムーズに出て、排便後は残便感がなく、おなかがすっきりしている状態を表します。健康的な便の形は、バナナ1本〜1本半ぐらいで、色は土色か茶色系。ほどほどの固さで、ペーパーで拭いてもほとんど汚れることがありません。匂いは、肉類や香辛料の多い食事をするほどが強くなり、野菜や食物繊維が多い食事をとると弱くなります。

「回数に関しては、2日に1回でもスムーズに出て、排便後にすっきり爽快感がある場合は、快便といえます。反対に、毎日出るけど、便が残っている感じがして、すっきりしない…という人は便秘傾向に。また、1日1回排便があった人が3日出なくなったり、便が固くて出すときに苦労する、という人は便秘といえます」(山口先生)

便秘の種類や原因はさまざま

便秘とは、便になる内容物が大腸に長く留まり、水分が吸収されて出にくくなる状態をさしますが、ひと口に便秘といっても、種類はさまざま。大きく分けて「排便回数減少型」と「排便困難型」の2つのタイプがあります。

(1)排便回数減少型

大腸の動きに原因がある排便回数減少型は、排便回数や量が減る症状がみられ、便秘を運ぶ大腸の働きが悪い「大腸通過遅延型」と、大腸の働きは正常でも便の量が足りない「大腸通過正常型」の2つのタイプがあります。大腸通過遅延型は、代謝・内分泌や神経・筋肉の病気、薬の副作用などが原因に。一方、大腸通過正常型は、便の元となる食事量が少なく、特に食物繊維の摂取量が少ないとおこりやすくなります。過度なダイエットや野菜不足の食事、朝食を抜きがちな人に加え、家で過ごす時間が長くなった今、間食が増え、食事時間が不規則になっている人にも多くみられます。

原因となる生活習慣

☑ダイエットをしている
野菜が嫌い
朝食は食べない
間食が多く、3食が不規則になりがち

 

(2)排便困難型

直腸と肛門の動きに原因がある排便困難型は、便が硬く、強くいきまないと出ない「大腸通過正常型」と、排便に関わる筋力低下などによっておこる「便排出障害」の2つのタイプがあります。大腸通過正常型は、ストレスを感じやすい人に多い症状で、便秘と下痢をくり返す「便秘型過敏性腸症候群」が代表的。便排出障害は、便意を感じたタイミングでトイレに行くことができず、排便を我慢することをくり返すうちに、直腸が鈍感になる直腸感覚低下をおこすことが原因に。また、肛門まわりの筋肉がうまく緩まず、いきんでも肛門が開かない骨盤底筋協調運動障害が原因になる場合もあります。

原因となる生活習慣

ストレスフルで、心も体もクタクタ
毎朝、慌ただしくて、トイレ時間を確保できない
職場や外出先で便意を感じても、我慢することが多い
排便時に強くいきんでいる

このほか、便秘には大腸がんや虚血性大腸炎などの重大な病気が関係している場合も。腹痛や嘔吐、下血を伴うような便秘の場合は、必ず医療機関を受診してください。

便秘を解消し、毎日を爽快に過ごす秘訣とは?

慢性的な便秘を解消するには、食事時間を規則的にする、睡眠時間を十分にとるなど、メリハリのある生活を送ることが大事ですが、さらに意識したい4つの生活習慣を山口先生がアドバイス。

①朝コップ1杯の水を飲む

起きぬけの胃腸に水を入れると内臓が目覚めて胃・結腸反射がおこり、大腸のぜんどう運動が活発になります。その後は、朝食をとることも忘れずに。寝ている間に空っぽになった胃に食べ物を入れることで、腸がより活発に動き出し、便意がおこりやすくなります。便秘は水分不足が原因になる場合も多いので、朝食には、スープやみそ汁など、水分をとることができるメニューがおすすめです。

②食物繊維をとる

人間の消化酵素では消化されず、カスとなって排出される成分が食物繊維です。食物繊維には水に溶けない不溶性食物繊維と、水に溶ける水溶性食物繊維の2種類があります。不溶性食物繊維は、水分を吸収してカサを増し、大腸を刺激してぜんどう運動を促す働きがあり、葉ものの野菜や根菜、いも類、豆類、穀物、切り干し大根、かんぴょうなどの干物に多く含まれます。水溶性食物繊維は、藻類やオクラ、納豆、きのこ類、くだもの全般、にんにくなどに多く含まれ、水に溶けてゼリー状になることで、水溶性食物繊維以上にふくらみ、便のカサを増やします。また、腸への刺激が少なく整腸効果に優れているのも特徴。1日の目標摂取量は、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維を合わせて20〜25 gを目安に。

③適度な運動をする

腸のぜんどう運動は、体を動かすことでも活発になります。ヨガでは、胃腸を刺激するねじりのポーズを積極的に。また、お腹まわりの筋力の弱さが便を押し出す力の弱さにつながるため、腹筋を強化するトレーニングも有効。

④ストレスをためない工夫をする

大腸の動きは自律神経の影響を大きく受けます。リラックスした状態で副交感神経が優位になると、大腸の動きが活発になり快便に。バスタイムで、ぬるめのお湯にのんびり浸かったり、寝る前にベッドの上で大の字になり、呼吸を整えながら手足をゆったり伸ばすと、心身の緊張を解放しやすくなります。また、腹式呼吸もストレス解消に役立ちます。腹式呼吸のやり方は、①椅子やソファに座り、口をすぼめてお腹をへこませながら、ゆっくりと長めに空気を全部吐き切る。②お腹をふくらませながら大きく空気を吸い込む。①→②を10回ほどくり返しましょう。

教えてくれたのは…マリーゴールドクリニック院長 山口トキコ先生
医学博士、日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員、日本外科学会専門医、臨床肛門病学会臨床肛門学技能指導医。1988年、東京女子医大卒業。1992年、東京女子医科大学・大学院修了。日本初の女性肛門医として多くの患者の悩みに答えると共に、TVや雑誌、Web等でも幅広く活躍中。『最新版 本気で治したい人の腸の不調 便秘・下痢』(学研パブリッシング)など著書多数。

山口トキコ先生
山口トキコ先生

 

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text by Minako Noguchi



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