苦しい失恋を乗り越えるのに有効な意外な行動とは|臨床心理士が解説
恋をしているときは、何をしていても楽しいものですよね。一方で、失恋は「この世にこんなに辛いことがあるのだろうか」「もう絶望だ」と思ってしまうほどつらい気持ちになってしまうものです。仕事や学校に行く元気がなくなってしまったり、やるべきことに手がつかなくなってしまったりすることもあるかもしれません。今回は、そんなつらい失恋を乗り越えていく方法について説明していきます。
失恋はなぜ苦しい?
恋人と別れてしまったり、告白してフラれてしまったりすると悲しくなるのは当たり前の反応といえます。これは、二人の関係が失われてしまう、今まであったものが無くなってしまう「喪失」の体験です。大切なものを失う「喪失」は、人間の心身に大きなストレスを与えます。失恋によってストレスを感じ、つらい気持ちになることは皆さんも想像できるのではないでしょうか。失恋で心身に大きなストレスがかかって悲しい気持ちになったり何も手がつかなくなってしまったりすることはある意味当然のことといえるのです。
ホームズという学者が考えた「社会的再適応評価尺度」というものがあります。難しい名前がついていますが、社会的再適応評価尺度とは、ストレスのかかる人生のイベントランキングのようなものです。社会的再適応評価尺度のトップ3は「配偶者の死」「離婚」「夫婦別居生活」です。これを見ても喪失体験はとてもストレスのかかるライフイベントであることがわかると思います。
「とらわれ」から失恋を考える
恋愛とは一種の「とらわれている状態」といえます。相手に対するとらわれ、二人の関係に対するとらわれ、もしかしたら恋をしている自分自身へのとらわれかもしれません。心理療法の一つに「森田療法」という療法があります。森田療法の中で使われる「とらわれ」という概念から失恋を考えてみましょう。
とらわれとは、「一つの事しか考えられなくなってしまい、それ以外のことが手につかなくなってしまう状態」のことです。恋をしている時に相手の事しか考えられなくなってしまうことがありますよね。「今、何をしているのかな」「あの時はあんなことを言われて嬉しかったな」「自分のことをどう思っているのかな」「あの時、あんなことを言わなきゃよかった」など、あれこれと相手のことを考えてしまうと思います。まだポジティブな出来事にとらわれている時はよいですが、ネガティブなことにとらわれてしまうこともあります。そうすると、つらい気持ちが大きくなり、ぐるぐると考える悪循環に陥ることで、体力と気力を消耗してしまいます。
苦しい失恋を乗り越えるには?
森田療法では、「とらわれ」があるときは、あれこれ考え続けるよりも、何か別のことを行う方が気分が軽快すると考えます。
恋愛における悩み事は、あれこれ考え続けても答えが出ないことばかりです。特に失恋は過去に起きて過ぎ去ったことになります。「過去と他人は変えられない」というように、過去のことをいくら悩んでも何も変わらず悲しみや後悔が増すだけです。
失恋のことをずっと考えて何も手がつかないときこそ、目の前にあるやるべきことを淡々とこなしてみましょう。例えば、家事や掃除、食事や入浴、歯磨きといった日常生活のルーティンを淡々と丁寧に行います。過去にとらわれずに、今この瞬間にある目の前のことを集中するので、過去に行ってしまっている注意を現在に戻すことができるのです。日常生活をしっかりと送れるのであれば、次は仕事や学校など自分が本来行わなければならないものに集中していくのが良いでしょう。
しかし、このような方法ですべての失恋を乗り越えられるわけではありません。中には落ち込みが激しく日常生活に支障をきたしてしまうこともあります。食事、入浴、睡眠など日常生活に最低限必要なことができない、強い落ち込みがいつまでも続く、今まで楽しかったことにまったく興味が持てないといった状態が3週間以上続いているようであれば専門家の力を借りたほうが良いかもしれません。このような場合は医療機関に一度相談してみることをお勧めします。
ライター/石上友梨
臨床心理士/公認心理師 大学・大学院と心理学を学び、警視庁に入庁。職員のメンタルヘルス管理や、心理カウンセリング、スポーツ選手へのメンタルトレーニングなどを経験。ヨガや瞑想を本場で学ぶためインド・ネパールへ。全米ヨガアライアンス200取得。現在は認知行動療法をベースとした心理カウンセリング、セミナー講師、ライター、ヨガインストラクターなど、活動の幅を広げている。また、発達障害を支援する活動にも力を入れている。https://cbt-yoga.com
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