過去のダイエットが不妊要因に…異常に気付く8つのサイン|産婦人科医に聞くホルモン知識

 過去のダイエットが不妊要因に…異常に気付く8つのサイン|産婦人科医に聞くホルモン知識
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厚生労働省が行った調査によると、働く女性の13%が不妊治療の経験者。年齢と共に妊娠率が低下するのは周知の事実ですが、改善・予防法はいかに。「必要なのは根本的な体質改善」と語るのは、様々なクリニックで不妊と向き合ってきた鶴巻由紀子医師。この企画では、その実践方法や必要な知識をご紹介します。第2回は、気をつけたい不妊体質のサインや不妊を引き起こす原因について。

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あなたは大丈夫!? 若者にも多い無月経がはらむリスク

「妊娠はまだ先のこと」「PMSの煩わしさから解放された」と思い無月経を放置している若者が増えています。若いときの無月経が不妊の原因になったり、病気のサインであったりすることも。しばらく月経がきていない人は早めに婦人科を受診しましょう。

そもそも月経とは

卵子が受精せず妊娠が成立しなかった場合、いらなくなった子宮内膜がはがれて体外に排出されるのが月経です。月経は子宮内膜の自浄作用でもあり、そうした意味でも不可欠な現象。

「無月経は子宮体がんにかかるリスクを高めるほか、排卵障害を引き起こす多嚢胞性卵巣(たのうほうせいらんそう)症候群の症状でもあります。もし月経がこない場合は、婦人科を受診し必要に応じて治療を受けましょう。

併せてバランスのいい食生活、十分な睡眠、ストレスの緩和など、生活習慣を根本的な見直すことが正常な月経周期を取り戻すうえで大切。本気で妊娠を望むときに後悔しないために、妊活前から体の不調に目をそらさずきちんとケアしてくださいね。」(鶴巻由紀子先生)

見逃さないで!体からのSOSサイン

婦人科系の不調は、不妊だけでなく、がんなどの重大疾患につながる可能性があります。「恥ずかしい」という気持ちが先行し病院に行くのをためらっているなら、女医さんがいる婦人科を選ぶのも選択肢のひとつ。妊活に向けてこの機会に自分の体と向き合ってみませんか?

「不妊を引き起こしかねない体のサインは様々。次の8項目をチェックし、心当りがある人は婦人科を受診し早めに対処しましょう。」(鶴巻先生)

1.月経不順

月経周期は25~38日が正常です。3ヵ月以上月経がない、月経のような出血が頻回する、一回の月経期間が長い・短い、月経が遅れるなどの傾向がある人は要注意。月経があっても無排卵の可能性があるほか、子宮内ポリープ、子宮内膜症増殖症、甲状腺疾患、内分泌異常などの疾患が潜んでいることも。

2.月経血量の異常

月経血の量がいつもより多い過多月経は、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープなど子宮に関わる疾患が、逆にいつもより少ない過少月経の場合、ホルモンバランスに関わる疾患を発症していることがあります。

3.頸管粘液(おりもの)の分泌不足

排卵期は、精子が子宮に入りやすくするために頸管粘液が分泌されます。分泌量が少ないと精子の侵入を妨げ妊娠しにくくなります。

4.頸管粘液の異変

正常な排卵期の頸管粘液は卵の白味のように透明ですが、色やにおいがいつもと違ったり、かゆみを伴ったりする場合は、なんらかの異常が疑われます。

5.子宮の位置異常

妊娠、出産や子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症、卵巣の腫瘍、ストレス、便秘、セックスレス、骨盤の歪み、肩こり、腰痛などが原因で子宮が本来の位置からズレている場合、周辺の動脈や静脈、リンパ節、神経などを圧迫。不妊だけでなく更年期障害、腰痛、目の不調、頻尿、尿漏れ、肌のくすみ、シミなどの原因に。

6.止まらないイライラ

気分が苛立っているときは交感神経が優位になり、卵巣の血管や子宮が収縮。血流が悪化し卵巣機能の低下につながります。

7.体重の過度な増加と減少

ストレスによる過食や無理なダイエットは、脳が「飢餓状態に近い」と判断し、自分の生命維持を優先させます。体の中で新しい生命をうみ出すには、自分の生命維持に余裕がないとできません。そのため、月経不順や排卵障害を引き起こすことがあります。

8.性病

クラミジアは発生頻度が高く、初期段階では自覚症状が少なく放置されがち。時間が経つと下腹部痛やおりものの増加などを伴い、子宮頸管炎、卵管炎、骨盤脱膜炎などを発症するほか、卵管内が閉塞して不妊の原因に。

なぜ「妊娠しにくい体」になるの?アーユルヴェーダの見解は

鶴巻先生が治療に取り入れている、ヨガと関係が深いアーユルヴェーダの観点から見えてくる不妊の原因とは。体の声に耳を澄まし、東洋医学の力も借りて日々の揺らぎを整えて。

アーユルヴェーダによると、体を構成する7つの組織要素(ダートゥ)として、血漿、血球、筋肉、脂肪、骨、骨髄と神経、生殖器があります。ダートゥにはそれぞれアグニ(消化の火)が存在し、摂取した食べ物はアグニによって消化され血漿から順番に栄養が行き渡るしくみに。

「しかし、ヴァータ、ピッタ、カパという3つのドーシャ(生命エネルギー)バランスが崩れると、アグニが弱まり、十分に食べ物が消化されません。すると生殖器まで栄養が届かず、卵胞の未成熟やホルモンバランスの乱れが生じて無排卵を引き起こしかねません」(鶴巻先生)

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写真出典:アーユルヴェーダ ライフ

アーユルヴェーダの知恵に学ぶ、生命エネルギーの乱れで起こる不調とは?

アーユルヴェーダにおける生命エネルギーとは、「ドーシャ(体質)」のこと。ドーシャは、私たちの体を構成するつのエネルギー、ヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(水)に分けられます。これらのバランスの乱れは、体にどんな影響をもたらすのでしょうか?

アーユルヴェーダではドーシャが重要な働きをしています。アーユルヴェーダでは、ヴァータ、ピッタ、カパのバランスが取れた状態が健康だとされています。

ヴァータが過剰になりドーシャバランスが乱れると、性行痛、肌荒れ、髪や爪のかつさき、不眠、不安、便秘などが生じます。口内炎、吹き出物の悪化、白髪、薄毛、攻撃的が目立つときはピッタが、甘い物が食べたくなる、むくみやすい、肥満、鼻水、気分が低下するときはカパが過剰になっています。

それぞれのバランスを回復させるには、それぞれのドーシャにあった、生活習慣を見直してみましょう。こうした変化を感じたときは、アーユルヴェーダの知恵をセルフケアに活かしてください。」(鶴巻先生)

次回は「不妊を招く排卵障害を予防する生活習慣」をご紹介します。

出典:厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査事業」

教えてくれたのは…鶴巻由紀子先生

妊娠しやすいのはいつ?体内では何が起こってる?|女医に聞くホルモン知識
鶴巻由紀子先生

1996年、杏林大学医学部卒業。産婦人科専門医。杏林大学医学部附属病院MFICUの立ち上げに関わり、約10年間同大学医局で勤務。その後も順和会山王病院、木場公園クリニックなどに勤務し、新百合ヶ丘総合病院では医長を務める。生殖医療から妊娠、出産、婦人科、がん治療など女性のすべての診療に関わる中で、薬での局所治療だけでなく体の本質から関わることの必要性を感じて、アーユルヴェーダと出会い、インド大統領顧問、WHO世界保健機関顧問Dr.Bheema Bhattからアーユルヴェーダを伝授。また、表参道 中井診療所 中井暲典院長から初めての弟子として、子宮から直接アプローチして自分の治癒力を取り戻す「子宮リンパ療法」を継承。現在、東京銀座・対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座内でアーユルヴェーダと産婦人科の知識を融合させた子宮・膣ケア専門「Yoni Pichu(ヨニ ピチュ)外来」をスタート。不眠、イライラ、女性性の低下、性交痛、不妊、くすみ、くま、不定愁訴に対して生まれもったドーシャを診断し、個々に合わせてオーダーメイドで調合するオイルを用いた治療をはじめ、自分の治癒力を取り戻す「子宮リンパ療法」など、多角的なアドバイスで美しい心と体作りをサポートしている。極上天然カシミヤ製品「マイカシミヤ社」のアドバイザーとして商品開発・企画に携わる。

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Text by Ai Kitabayashi



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