ストレス解消スキル|認知行動療法ではなぜ「考え」に注目するのか
考えを変えるってどういうこと?
認知行動療法は考えを変えることが目的ではないです。自分の考えがまるっきり変わってしまうなんて、自分らしさがなくなるのでは…と感じる方もいると思います。また、心理カウンセラーから「あなたの認知は歪んでいます!こんな風に考えてください!」と言われたとして、それを素直に受け入れられるでしょうか?私だったら「なんだか自分を否定されたみたいで嫌だな」と心の中で思ってしまいそうです。
認知行動療法は歪んだ考えを見つけて、それをまるっきり変えてしまうものではありません。私たちはそれぞれ考え方の癖やパターンがあります。癖がない人はいないです。例えば、ネガティブに捉えやすい、楽観的に考えやすい、○○すべきといったルールがたくさんある、自分と関係ないことも関連があるように感じてしまうなど、いろいろな癖やパターンがあります。
考えは感情や行動に影響を与えやすいので、考え方の癖やパターンにより、どんな感情になりやすいか感情のパターンも変わってきます。例えば、「自分はダメな人間だ」とよく考える場合は落ち込みやすいですし、「駅の改札で横入りするな」など社会ルールについてよく考えると、ルールを無視した人に対してイライラしやすくなります。
認知行動療法では、考え方の癖がつらい感情を引き起こしていたり、現在の困りごとが続く要因になっている場合、その考えをターゲットにします。今までとは別の考え方をたくさん作り出すことで、今までの考えと連動していた感情が変化したり、行動パターンも変わってきます。つらかった感情が変わるので、気分も楽になります。長い間慣れ親しんだ考えの癖が出てきてしまうことは、仕方がないことです。出てきてしまっても、新しい考えで思い直しをしていきます。
人の考えはすぐに変わらないです。しかし、時間はかかりますが、新しい考えを作り、思い直しを繰り返していくことで、元の考えも少しずつ変化していきます。考えによって辛い気持ちが強くなっていたなら、今までとは違う、自分にとって「ためになる」適応的な考えを増やしていくことで悪循環を断ち切っていきましょう。
認知行動療法の実践方法を簡単に紹介していますので、気になる方は以前の記事「白黒思考を改善する「認知行動療法」とは|公認心理師が解説」をご参照ください。
認知行動療法はさまざまな病気に対して効果が認められています。悪循環パターンを抜け出すスキルを身につけることで、うつや不安などの症状を早めに軽減し、回復を早め、再発防止にもつながります。治療中の方は認知行動療法を開始するタイミングも重要です。必ず主治医の先生と相談しましょう。また、病気を未然に防ぐ予防法としても活用できます。現在は健康面の心配がない方も、自分のためのストレス対処スキルとして身につけることもおすすめです。
ライター/石上友梨
臨床心理士/公認心理師 大学・大学院と心理学を学び、警視庁に入庁。職員のメンタルヘルス管理や、心理カウンセリング、スポーツ選手へのメンタルトレーニングなどを経験。ヨガや瞑想を本場で学ぶためインド・ネパールへ。全米ヨガアライアンス200取得。現在は認知行動療法をベースとした心理カウンセリング、セミナー講師、ライター、ヨガインストラクターなど、活動の幅を広げている。また、発達障害を支援する活動にも力を入れている。
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