白黒思考を改善する「認知行動療法」とは|公認心理師が解説
白黒思考で悩んでいらっしゃいませんか?物事を白か黒かで判断してしまい、完璧でなければ納得できない。曖昧なグレー状態だと気持ちが落ち着かず、白黒判断つけようとしてしまう…。自分に対しても他人に対しても白黒思考で判断してしまうと、自分自身のハードルを上げるだけではなく、人間関係にも影響が出やすくなります。そんな生きづらさにつながる白黒思考の改善方法について紹介します。
白黒思考とは?
白黒思考は、白か黒かで物事を判断し、曖昧な状況は認められない考え方の癖のことです。白黒思考は完璧主義な方に多く、自他ともに厳しいハードルを設定してしまうことがあります。
しかし、世の中はグレーなもので溢れています。「二者択一」のようにどちらか明確な答えが出ることの方が少ないのではないでしょうか。そんななか白黒思考を持っていると、答えが出ない苦しさを感じストレスが強くなります。
また、100点ではなく合格点は超えていたとしても、少しでも欠けていることで「完璧ではない」と自分自身や他人を責めやすくなってしまいます。
もし、「完璧」「絶対」「YES か NO」といった言葉をよく使用したり、ピンとくるなと感じたら、白黒思考になっている可能性があるかもしれません。
白黒思考を改善する「認知行動療法」とは
「認知行動療法」には、たくさんの技法があります。その中でも、考え方の幅を広げたり、思考を柔軟にする「認知再構成法」という方法が白黒思考の改善に有効です。
認知行動療法は、「考え」を完全に変えてしまうものではありません。バランスの良い考え、柔軟な考えを目指すものです。自分の考え方のパターンを知り、自分を苦しめているきっかけになっていないかなと検討します。もしそうなら、今までのパターンだけではなく、「考え」の選択肢を増やしていくことで、バランスを整え、苦しさを軽減していきます。
認知再構成法の実践方法
1.白黒思考に気づくこと
皆さんはどんな場面で白黒思考になりますか?まずは、なるべくリアルタイムで自分の白黒思考に気づけるようになりましょう。
私たちは、朝起きたときから寝る瞬間まで、様々な考えが頭の中を駆け巡っています。朝起きた時に「まだ寝ていたいなあ」「おなか空いたな」と考えたり、ほぼ無意識的に頭に浮かぶ「考え」があります。この自動で浮かぶ考えのことを自動思考と言います。自動思考は考えの癖が最も出やすいものです。白黒思考と関連した自動思考が頭の中に浮かぶと思います。それをなるべくリアルタイムで気づけるように練習しましょう。
例えば、仕事でちょっとしたミスをした時に、仕事の遂行上は問題ないにも関わらず、「完璧にできなかった自分はダメだ」と自動思考が浮かび、落ち込んだり、自分にイライラするかもしれません。
慣れないうちは後から日記のように振り返っても大丈夫です。徐々に気づける時間を早めていきましょう。
2.白黒思考を分析する
自動思考に気づけるようになったら、それがどんな状況で起こり、自分はどんな影響を受けたのか分析します。分析作業は紙に書いて行うことをお勧めします。頭の外に出すことで、脳の負荷が軽減するだけでなく、客観的になれる効果があります。
それでは、実際にどんな状況だったのか、なるべく詳しく描写しましょう。何月何日の出来事と、具体的に記述します。
次に、自分への影響を3つのカテゴリーに分けて記述します。
考え(自動思考):その状況でどんな考えが浮かんだのか
気持ち:その時どんな気持ちになったのか。分かりやすく%をつけます。
行動:その時どんな行動を取ったのか。
白黒思考が浮かぶことで、自分の気持ちや行動に影響を与えていましたか?
例えば、「ひとりでのんびりしたい」と彼氏の発言に対し、「それは私と別れたいってこと?」と白黒判断しようとすることでイライラした気持ちになり、相手に不満をぶつけ喧嘩になるなど、自分にとって望ましくない結果につながってしまう。もし同じようなパターンを繰り返しているようでしたら、白黒思考にアプローチしても良いかもしれません。
3.白黒思考にアプローチをする
白黒思考とは別の考え方ができないか検討してみます。実際に頭に浮かんだ「考え」をターゲットにし、下記、項目にそって紙に書き出してみます。
例えば、「(彼氏は)私と別れたい」という考えをターゲットにしてみましょう。
・白黒思考の根拠を探す
自動思考を裏付ける証拠を探します。第三者が見てもうなずける客観的な証拠を探すようにしましょう。
例)彼氏は最近私のデートをドタキャンする。
・白黒思考の反証を探す
自動思考と矛盾する事実はないか探してみます。
例)ドタキャンの穴埋めをしてくれる。別れたいと直接言われたことはない。
・同じ状況で友人や家族が悩んでいたら何て声をかけるか考えてみる
例)仕事が忙しいだけかもしれないよ。
・バランスの良い考えを作る
白黒思考に変わるバランスの良い考えを作ります。その際に、根拠や反証などで出たアイディアを盛り込みましょう。
例)別れたいと言われていないし、仕事が忙しくて疲れているのかも。
今回は簡単に紹介しましたが、こんな風にアイディアをたくさん出していき、新しい考えを丁寧に作っていきます。
4.新しい考えを日常に生かす
今後は白黒思考に気づいたら、新しい考えを思い出してみましょう。今までの辛さは変化しましたか?この行程を繰り返すことで、白黒思考が徐々に変化していきます。
認知行動療法を一人でやってもいいの?
個人的には、慣れないうちは公認心理師などの専門家と取り組むことをお勧めします。しかし、現在は一人で実践するためのワークブックが書店で販売されています。本を読みながら取り組む方も多いようです。また、開始するタイミングも重要です。主治医の先生がいる場合は、必ず医師と相談しましょう。
ライター/石上友梨
臨床心理士/公認心理師 大学・大学院と心理学を学び、警視庁に入庁。職員のメンタルヘルス管理や、心理カウンセリング、スポーツ選手へのメンタルトレーニングなどを経験。ヨガや瞑想を本場で学ぶためインド・ネパールへ。全米ヨガアライアンス200取得。現在は認知行動療法をベースとした心理カウンセリング、セミナー講師、ライター、ヨガインストラクターなど、活動の幅を広げている。また、発達障害を支援する活動にも力を入れている。
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く