肘を痛めずアームバランスを行うコツ|理学療法士に教わる"ヨガのための解剖学"
ヨガで体を痛めないためには、体の構造と機能を理解しておくことが大切。解剖学の観点から安全にアーサナを行う方法を、理学療法士でヨガインストラクターの中村尚人先生に教えていただきました。今回のテーマは、アームバランスで負担がかかりやすい「肘」のケガを防ぐコツ!
肘筋を鍛えて肘の過伸展を防ごう
アームバランスやハンドスタンドなど腕で体重を支えるポーズで酷使されやすいのが肘関節。特に、関節が180度以上反ってしまう「過伸展(ハイパーエクステンション)」が危険です。この状態で体重をかけ続けていると、肘の靱帯に負担がかかり、痛みや故障を招きます。
過伸展の原因とは
過伸展の原因は、関節に頼った使い方にあります。いわゆる「肘をロック」する使い方で、関節にかかる負荷を筋肉で吸収せず、関節がダイレクトに受けてしまう状態です。過伸展は、こうした体の使い方のほかに、体質が原因ということもあります。肘を伸ばしたとき、前腕が水平位より下がる場合は、過伸展が疑われます。こういう人は特に注意が必要です。
過伸展を防ぐコツは「アーサナ中の肘の使い方」
その答えは、アーサナ中に肘を伸ばしきらないことです。軽く肘を曲げることによって、関節を安定させる肘筋や上腕三頭筋が働き、関節に負荷がかかるのを防ぎます。最初は筋肉を使うことがきつく感じるかもしれませんが、少しずつ練習して鍛えていきましょう。
キーマッスル「肘筋」「上腕三頭筋」とは?
肘筋(ちゅうきん)は、肘関節の後面にある小さな筋肉。上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)と協調して働き、肘関節が曲がる際、腕の動作を安定させ、過伸展を防ぐ。
アームバランスポーズのキーマッスルを意識した練習法
「ヴァシシュターサナ」の場合
支えている腕の肘は軽く曲げる。肘を曲げることで肘筋が働くので、その力を使って床を強く押す。床からの反力が全身につながるとポーズが安定する。
STEP1:プランクポーズで肘の使い方を練習
両腕で体重を支えるポーズで肘の使い方を練習しよう。軽く肘を曲げ、過伸展していないことを見てチェック。
STEP2:エーカパーダアドームカシュヴァーナーサナで負荷UP
肘を正しく使う感覚がつかめたら、片腕支持でも実践しよう。負荷が上がる分、肘の筋肉の強化にもつながる。
STEP3:カマトカラーサナでバランスにつなげる
体の向きが変わっても肘はロックさせない。筋力で床を押すから胸が開き、バランスが保ちやすくなる。
教えてくれたのは...中村尚人先生
理学療法士、ヨガインストラクター。UTLにて長年ヨガの解剖学の講師を担当。医療とボディーワークの融合、予防医学の確立を目指し活動中。「TAKT EIGHT」主宰。
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