若年者に警鐘!若年型認知症の発症年齢の約3割は50歳未満!働き盛り世代にできる予防法とは

 若年者に警鐘!若年型認知症の発症年齢の約3割は50歳未満!働き盛り世代にできる予防法とは
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梶 尚志
梶 尚志
2025-03-03

忙しい日々の中で、自分の健康に気を使う時間がなかなか取れないという方も多いのではないでしょうか。特に50歳未満の働き盛りや子育て中の世代では、健康問題が将来の生活にどのような影響を及ぼすかを考える余裕がないかもしれません。しかし、そんな方々にもぜひ知っていただきたいのが、若年型認知症という病気です。

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若年型認知症とは?

若年型認知症は、通常65歳以上で発症することが多い認知症が、65歳未満、特に50歳未満の年齢で発症する病態で、これは決して珍しいものではなく、認知症全体の約30%が50歳未満で発症すると報告されています。そして、特に若い世代にとっての認知症は、仕事や子育てなど人生の重要な局面でとても大きな影響を及ぼしてしまいます。

主な症状と具体例

若年型認知症の症状は多岐にわたり、以下のような症状が現れることがあります。

記憶力の低下

直近の出来事を思い出せなくなる、重要な約束を忘れる。

例1: 食事を準備した直後に、食材を片付けるのを忘れ、冷蔵庫が開けっぱなしになる。

例2: 子どもの学校行事の日程を何度も確認しながら、当日に忘れてしまう。

例3:仕事や友人との約束をすっぽかしてしまう。

判断力や問題解決能力の低下

家計管理やスケジュール調整が困難になり日常的な意思決定が難しくなる。

例1: スーパーでの買い物中、レジで支払い方法を決められず混乱する。

細かい金額が計算できず、常に一万円札を出して小銭が多く貯まってしまう。

例2: 家計簿を付ける際に金額の計算がうまくできず、記録を途中で放棄してしまう。

性格や行動の変化

怒りっぽくなったり、感情の起伏が激しくなり家庭内や職場で人間関係に影響が出る。

例1: 普段は穏やかな性格の人が、些細なことで怒りを爆発させるようになる。

例2: 家族の意見に耳を傾けず、自分の意見だけを押し通そうとする態度を取るようになる。

感覚的な問題

空間認識が難しくなり、道に迷いやすくなる。物の配置がわからなくなることもあり、片付けられなくなる

例1: 自宅から数百メートル離れた先にあるお店に行く途中で道を間違えたり、戻れず近所の方にお世話になる。もしくは、自宅に戻るのにとても時間がかかる。

例2: 日頃使用しているキッチン用品の配置場所がわからなくなり、探すのに時間がかかる。

コミュニケーションの困難

言葉を思い出せない、話の流れを理解しにくい、スムーズに会話ができない。

例1: 知人と会話中に言葉が出てこなくなり、話題を変えてしまう。

例2: 簡単な説明ができず、周囲の人に自分の意思を伝えるのが難しくなる。

 

これらの症状が進行すると、家庭や職場での役割を果たすことが難しくなり、生活の質が大きく低下する可能性があります。若年型認知症は、早期発見と適切な栄養学的な対応が生活の質を維持するための鍵と考えています。

栄養医学的視点からのアプローチ

脳の認知機能の低下には、様々な栄養素の欠乏が関連していることが医学的証明されています。そのため若年型認知症の発症のリスクを抑えるためには、適切な栄養管理が重要であると考えています。

私は栄養医学を通じて、多くの方々が栄養の力で健康を取り戻してきた現場を見てきました。ですから、この分野の観点から、特に脳の認知機能にとって、注目すべき栄養素とその働きについて以下に詳しくご紹介します。

ビタミンB群

ビタミンB群は、脳のエネルギー代謝や神経伝達物質の合成に欠かせない栄養素です。それぞれのビタミンB群が果たす役割は以下の通りです。

・ビタミンB1(チアミン)

グルコースをエネルギーに変換する代謝を助け、脳の疲労を軽減します。ビタミンB1が不足すると、脳のエネルギー供給が滞り、集中力や記憶力が低下する可能性があります。

・ビタミンB2(リボフラビン)

酸化ストレスを軽減し、神経細胞を保護します。ビタミンB2の抗酸化作用は、脳の細胞をダメージから守る重要な役割を果たします。

・ビタミンB6(ピリドキシン)

セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の合成をサポートし、気分の安定やストレス軽減に寄与します。不足するとイライラや不安感が増すことがあります。

・ビタミンB12(コバラミン)

ホモシステイン値を低下させ、脳の血管の神経の修復をサポートします。特に、脳の老化を遅らせる可能性があります。

・葉酸(ビタミンB9)

ホモシステイン値を低下させるだけでなく、 DNAの修復や新しい神経細胞の生成を促進します。妊娠中だけでなく、すべての世代において重要な栄養素です。

「高ホモシステイン」は要注意!

特に最近注目されている物質は、ホモシステインです。ホモシステイン値が高いと、脳梗塞や心筋梗塞、認知症のリスクになることがわかってきました。では、どんな作用があるのか紹介します。

①血管内皮障害

ホモシステインは、血管内皮細胞に毒性を持ち、血管内皮機能を損なうことが知られています。具体的には、活性酸素を増加させて酸化ストレスを誘発し、血管の炎症を引き起こすだけでなく、酸化ストレスを抑制し、一酸化窒素(NO)の産生も抑制するため血流障害を引き起こします。

②動脈硬化と血栓形成のリスク増加

ホモシステインは、動脈硬化の進行を促進し、脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)のリスクを高めます。血管壁の炎症を促進するため 動脈壁に脂肪沈着が起きやすくなり、プラーク形成が進行します。また、ホモシステインが血小板凝集を促進し、血栓形成の誘発することで血栓形成のリスクを高めます。

③認知機能の低下との関連

ホモシステインが高い状態は、アルツハイマー病や血管性認知症のリスク増加と関連があります。これは、高ホモシステインが脳の血流低下を招き、脳細胞への酸素や栄養供給を阻害します。また、アミロイドβ蛋白の蓄積を助長することも報告されています。

オメガ3脂肪酸

抗炎症作用を持ち、神経細胞の膜の構成に重要です。特にDHAは記憶力や認知機能の維持に寄与します。炎症抑制の機序としては、オメガ3脂肪酸が細胞膜中でプロスタグランジンE2やロイコトリエンB4といった炎症性物質の生成を抑制し、脳内の炎症を軽減する働きがあることからです。また、DHAは神経細胞間の刺激の伝達を向上させることで、学習能力や記憶力を高めることが知られています。医学的な研究では、オメガ3脂肪酸がアルツハイマー病のリスクを低下させる可能性が示されています。

ビタミンD

神経伝達物質の調節と抗炎症作用を通じて脳の健康を支えます。不足すると認知機能の低下が進むリスクがあります。ビタミンDはまた、免疫機能を調整し、神経炎症を抑える役割も果たします。 一方で、ビタミンDの低値が認知症リスクの増加と関連していることが示されています。

鉄分

酸素を脳に運ぶヘモグロビンの生成に不可欠です。鉄不足は脳の細胞の酸素不足につながり、記憶力や注意力の低下を引き起こす可能性があります。また、鉄の欠乏がセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の合成に影響を及ぼすことで、認知機能の低下が見られることもあります。 鉄不足が学習能力や記憶力に悪影響を及ぼすことが複数の研究で報告されています。

亜鉛

神経伝達物質の合成と脳のシグナル伝達に必要です。また、免疫機能の維持にも役立ちます。亜鉛が不足すると、認知機能が低下しやすくなることが研究で示されています。

栄養素

日々の積み重ねが大切、無理なく続ける健康習慣

若年型認知症の予防には、バランスの取れた食事だけでなく、ライフスタイル全体を見直すことが重要です。

食事をシンプルにする

忙しい日々でも、栄養価の高い食事を簡単に準備できる工夫をしましょう。例えば、調理済みの野菜や冷凍魚を活用することで、手軽に栄養バランスを整えられます。

ストレス管理

慢性的なストレスは、脳に悪影響を及ぼします。適度な運動やヨガ、瞑想を取り入れることで、ストレスを軽減しましょう。

十分な睡眠

睡眠不足は、脳の老化を早めるリスクがあります。質の高い睡眠を確保するために、就寝前のスクリーンタイムを控え、リラックスできる環境を整えましょう。

若年型認知症は決して他人事ではありません。しかし、適切な栄養管理と生活習慣の改善を実践することで、そのリスクを大きく抑えることが可能です。この記事では、特に分子整合栄養医学の観点から重要な栄養素について詳しく解説しました。

忙しい毎日を送る中でも、自分の健康に目を向けることが、家族や周囲の人々の幸せにもつながります。この記事が、その第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。

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