〈50歳以上は要注意〉認知症じゃないのに認知機能が低下する?心配症とは何か|精神科医が解説
性格的なものじゃないことも?心配症について精神科医が解説します。
心配症(Generalized Anxiety Disorder、GAD)とは、些細なことに対しても不安を抱いてしまう状態です。
不安の程度が軽く、日常生活や社会生活に支障がない場合は、性格的なものとして扱い、特に治療の必要はありませんが、過剰な不安を抱き、心配や不安によって、外出できない、1つの事に多くの時間と労力を費やすなど日常生活や社会生活に支障が出ている、苦痛を感じている場合は不安障害と言い、治療する必要があります。
心配症の症状
過剰な心配と不安
些細な事に対しても心配と不安を感じやすく、なかなか不安や心配が消えない。
身体的な症状
不安感に伴って頭痛、筋肉の緊張、胃腸の不調などが起こることがあります。
集中力の低下
あれこれ心配するために脳が疲弊し、集中力が低下します
疲労感
不安感が持続することで交感神経の働きが強まり、常に心身が緊張した状態となるため、疲れやすくなります。
睡眠障害
寝床に入ってからも、色々な事に考えを巡らすため、交感神経の働きが強まり、眠れなくなります。
原因は?
遺伝的な要因
家族に不安障害の方がいる場合、4〜6倍不安障害になりやすいと言われています。
脳化学の不均衡
不安には、セロトニンやノルアドレナリンの不足が関与していると言われています。
ノルアドレナリンは、闘争ホルモン。
分泌されることで、集中力が高まり、意欲的になり、不安を解消する手段が妥当かどうか判断します。
一方、セロトニンは、気持ちを安定させてくれるホルモン。
不安を抑え、平常心を取り戻すように働きます。
この2つのホルモンが不足する事で、不安になりやすく、また、不安が持続しやすくなります。
ストレス
長期間にわたる生活上のストレス、仕事や学業のストレス、人間関係の問題など慢性的なストレスが心配症の原因となることがあります。
50歳以上は要注意!心配症が悪化するリスクが高まる?
日本人は、心配性気質(いわゆる神経質)の人が多く、10人に1人は心配症と言われいます。
心配性気質の人に見られる特徴
- 完璧主義
- 自分に自信がない
- 人目が気になる
- 起こった出来事を悲観的に捉える
- 先を予測して、あれこれ考える
こうした心配症気質の方や心配症であった人が歳を取ると、心配する事が増えたり、不安障害に移行してしまうことがあります。
何故、歳を取ると、心配症が悪化するのでしょうか?それは、加齢による認知機能低下が関係しています。
歳を取ると、誰でも、脳の働きが悪くなり、認知機能が低下して、物忘れしやすくなったり、集中力が続かなくなったり、注意力が散漫になりウッカリミスしやすくなります。
完璧主義だったり人目を気にしたりする人が、頻繁にミスするようになり、思うように事が進まなくなったら、どんな気持ちになるでしょうか?
きっと、不安になるはずです。
そして、不安から確認することが増えたり、未来を悲観的に予測して心配になったりするのではないでしょうか?
心配症が悪化すると、不安を感じる機会が増えるため、脳は常に警戒のアンテナを張ることになり、脳は今まで以上に疲弊しやすくなります。
脳が疲弊すると、さらに脳の働きが悪くなり、年齢に不釣り合いな認知機能の低下を招いてしまい、「頻繁に探し物をするようになった」「何度も同じ事を聞いてくるようになった」「居眠りしている事が多くなった」など家族が「認知症では?」と思ってしまう事態が起こる可能性があります。
まとめ
心配症について簡単に説明してきましたが、不安を感じることは、危険をいち早く察知して対処するために備わっている防衛手段であり、決して悪いことではありません。
ですが、過剰な不安は、生活を制限し、自由を奪います。
不安を感じた時、自分は何が起こることに対して不安を感じているのか?
何故、そのような考えになってしまうのか?
不安の発生源を探求し、不安を消そうとするのではなく、不安と上手く付き合うストレスマネジメントを身につけるのも不安対策の1つかと思います。
AUTHOR
豊田早苗
鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。
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