産後ママ必見!”ゆるんだ骨盤底筋”を適切に鍛えるヨガプログラム
骨盤底筋を過剰に鍛えたために筋肉が硬くなりすぎて、強くなるどころか弱くなってしまったヨガティーチャーのトレイシー。骨盤底筋の専門家のもとで正しい練習法を習得した経験から、強くてしなやかな骨盤底筋と平らで引き締まった腹筋が手に入るヨガプログラムを教えてくれた。
一年前、ロサンゼルスでヴィンヤサヨガを教えるカーリー・トレイシーは、健康診断のために医者を訪れた。体を鍛えていて健康的な三児の母は、「すべて異常なし!」と言われるのを期待していた。だが医者が告げた言葉は骨盤臓器脱。
三年間に三人の子を産んだトレイシーの骨盤底筋はすっかり衰え、そのため膀胱や腸などの臓器が下腹部に下垂してしまっていた。 長年ジョギングをやり、ヨガとピラティスを教えてきた彼女はショックを受けた。何年間も腹筋を鍛え、定期的にケーゲル体操も行いながら、大きなコア筋肉群の一部である骨盤底筋も強化してきたというのに。一体なぜこれらの筋肉は、臓器をあるべき位置に保つという基本的な働きさえできなくなったのだろう?
医者の答えは、驚くべきものだった。トレイシーが骨盤底筋を過剰に鍛えたために筋肉が硬くなりすぎて、強くなるどころか弱くなってしまったというのだ。「硬い筋肉がどんな風か想像してみて」とトレイシーは言う。「短くなってぎゅっと詰まってる状態よ。柔軟性がないから、本来の強さが発揮できないの」強くするために柔らかくするなんて、多くの人が考えるコアの強化法に反しているように思えるだろう。だが骨盤底筋の専門家のもとで習った練習によって、トレイシーの筋肉は強さを増した。やはり筋肉の緊張をゆるめる必要があるのだ。
「簡単に見えるかもしれないけれど、みんなが今から行う練習は、最も難しい部類のコアエクササイズよ。その代わり、平らで引き締まった腹筋が手に入るわ」とトレイシーは言う。トレイシーのように産後の問題を抱えている新米ママも、コアを鍛えたい人も、以降で紹介するシークエンスによって、最高に強くてしなやかなコアと骨盤底筋を手に入れよう。
強さのために柔らかく
運命の診察の後、トレイシーはこれまで欠かさずやってきたバイシクルクランチや3分間プランクなどの腹筋トレーニングに別れを告げた。その代わりに、今回紹介するシークエンスのヨガポーズによって、コアの安定性を得た。そして、女性だけでなく、いまや男性にも必須のケーゲル体操の正しい行い方も学んだ。果たして、その結果は?「腹筋と骨盤底筋を酷使するのではなく、適切に鍛える方法を学べば、腹筋や骨盤底筋トレーニングの効果はぐんとアップするわ。つまり、より早く強化できるというわけ」とトレイシーは言う。
練習のコツ
ヴァシシュターサナ(サイドプランクポーズ)のバリエーションなどで、体幹深部や骨盤底筋に働きかけるとき、つい「力んでしまう」ことがある。これは今回の目的とは真逆であり、現に締め過ぎることで問題が生じやすくなる。これらのポーズを練習するときは、骨盤底から脇腹までを引き上げる意識でやってみよう。
STEP1:アクティブレスト&準備
仰向けになり、両膝を立てて足裏をマットにつけ、腿の内側にブロックをはさむ。背骨の自然なカーブを保ち、首と腰がマットにべったりとつかないようにしよう。大腿骨がどんどん重たくなって股関節のソケット内に深く沈んでいくように想像する。これによって大腰筋(肋骨から股関節屈筋につながる深層筋)がゆるむ。息を吸うときは、上体が広がる感じを味わう。息を吐ききったら下腹の一番下を引き入れて、さらに肺からすべての空気を押し出す。息を吸うときには骨盤底が自然に広がり、吐くときには縮まって引き上がるように意識する。
コア強化のポイント:このエクササイズは、呼吸と骨盤底、腹筋を連動させるための基本形となる。息を吸うときは骨盤底と腹筋が広がり、吐くときには骨盤底が引き上がって腹筋が収縮し、肺から空気を押し出す。
STEP2:クランチ
「アクティブレスト&準備」と同じ状態から、頭の後ろで手を組んで首を支える。頸椎と腰椎の自然なカーブを維持しながら上半身を起こす。尾骨が天井のほうに浮きやすくなるので、浮かないようにコントロールする。浮いてしまうと、腹筋と骨盤底筋がきちんと使えなくなる。呼吸とコアの筋肉を連動させて5回呼吸をしてから休む。
コア強化のポイント:このエクササイズでは、2つの腹筋――腹横筋と腹直筋――を締めて、肋骨前部を引き寄せて下げ(と同時に背骨の自然なカーブも保ち)、腰部をさらに伸ばしてスペースをつくる練習をする。
STEP3:クランチのバリエーション1
左手を頭の後ろに添えながら上体を起こし、右手は左の太腿の外側に伸ばして体をねじる。右の肋骨の下を右腰の上部に近づけるようにして、両方の体側を同じ長さに保つ。このまま5回呼吸。反対側でも行う。
コア強化のポイント:腹斜筋は、上体を曲げたりねじったりするときに骨盤を安定させる役割を果たしている。また腹筋を引き寄せる働きもするので、分娩後の女性にとっては重要な筋肉だ。
STEP4:クランチのバリエーション2
両足を膝の高さまで上げたら、両足の小指側を膝の外側に引き寄せる。吸う息を背中に送りながら、両脚を上体から遠ざけるように伸ばして、かかとをマットに下ろす。息を吐きながら下腹部と骨盤底筋を使って足を引き寄せ、最初のポジションに戻る。呼吸しながら12回行う。
コア強化のポイント:このクランチのバリエーションでは、呼吸と連動しながら腹筋の最下部と骨盤底筋を強化する。
STEP5:マルジャリャーサナとビティラーサナのバリエーション(猫と牛のポーズのバリエーション)
四つん這いになり、腿の内側にブロックをはさむ。足のつま先で強くマットを押すと、大腿骨が股関節のソケット内に引き上がる感覚があるだろう。太腿上部と内腿をゆるめて、背後の壁のほうに向ける(このときブロックが上がりやすくなるので、両腰の外側からはさむようにして元の位置を保つ)。息を吸いながら腹部を床に近づけて牛のポーズに入る(5A)。息を吐いて両手でマットを押しながら背中を丸めて猫のポーズ( 5B)。呼吸しながら6~8回繰り返す。
コア強化のポイント:そろそろ骨盤底筋と腹筋が目覚めてきただろう。このポーズで腰の外側からはさむときに、腰の外側、大腿筋、骨盤底の連携がしっかり感じられるだろう。
STEP6:エーカパーダドームカシュヴァーナーサナ(片足の下向きの犬のポーズ)
アドームカシュヴァーナーサナ(下向きの犬のポーズ)から、右の大腿骨を股関節のソケットに引き入れて、マットから右足を3cmほど浮かせる。両足が横一直線上に並ぶように右足を左足の真横でキープする。そのまま8回呼吸。反対側も行う。
コア強化のポイント:片脚を浮かせるために、その脚側の骨盤底筋と腹筋を使って脚を持ち上げ、骨盤を安定させる必要がある。
STEP7:アンジャネーヤーサナ(ローランジ)
右足を前に出し、左膝をマットにつける。右足裏の四隅を安定させてマットを押しながら、右の大腿骨を股関節のソケットに引き入れる。左足のつま先で強くマットを押すと、左の大腿骨が股関節のソケット内に引き上がる感覚があるだろう。両腕を頭上に伸ばし、吸う息を背中側の肋骨に入れながら引き上げて、腰を長く伸ばす。息を吐きながら、下腹部を引き上げ尾骨を地面に向かって下ろす。このまま5回呼吸。反対側でも繰り返す。
コア強化のポイント:このポーズには、これまで練習した要素がすべて含まれている。腰の外側からはさみ込んで骨盤底を引き上げ、吸う息を背中側の肋骨に入れて、吐く息で肋骨の前面を閉じる。そしてコア全体が活性化され引き上がる。
STEP8:プランクポーズのバリエーション
プランクポーズに入り、肩が手首の真上にくるようにして上体をマットと平行にする。背骨が自然なカーブを保つように意識する(上背部、中背部が下がったり、腰が丸まらないようにすること)。右足をマットから3cmほど浮かせてキープする。このまま3回呼吸。左足でも行う。
コア強化のポイント:重力に逆らって背骨を長く保つには、骨盤底筋を引き上げる必要がある。さらに片足を上げることによって、その足側の骨盤底筋と腹筋が使われる。
STEP9:チャトランガダンダーサナのバリエーション(四肢で支える杖のポーズのバリエーション)
うつ伏せになり、手のひらは一番下の肋骨の脇に置く。額と両膝をマットに押しつけたまま、他の部分をマットから浮かせてチャトランガに入る。このまま8回呼吸。
コア強化のポイント:プランクよりもさらにチャレンジングなバージョンだ。両腕だけでなくコア全体を使ってポーズをキープする。
STEP10:スプタターダーサナ&クランチ(横たわった山のポーズ&クランチ)
仰向けになり、頭の後ろで指を組んで上半身を起こす。腰の自然なカーブを保ちながら、太腿の外側からブロックをはさむ動作を思い出そう。右脚をマットから3㎝ほど浮かせながら、頭から遠ざけるように長く伸ばす。そのまま5回呼吸。左脚でも繰り返す。
コア強化のポイント:先ほどのクランチのバリエーションに似ているが、すでに腹筋と骨盤底筋が活性化しているので、より楽に行えるだろう。
STEP11:ツイスティングスプタターダーサナ(横たわった山のポーズ&ツイスト)
前のポーズと同じ体勢から、左脚をマットから数センチ浮かせ、右腕を左腿に向かって斜めに伸ばす。右の肋骨下部を左の腰の前面に近づける。ホールドして5回呼吸。反対側でも繰り返す。
コア強化のポイント:先に行った腕を斜めに伸ばすポーズに似ているが、体側とコアの筋肉の関係性が実感できるだろう。
STEP12:エーカパーダセツバンダサルヴァーンガーサナ(片足の橋のポーズ)
橋のポーズに入り、太腿の内側にブロックをはさむ。腰の外側からブロックをはさむようにすると、内腿が下方にゆるみ、臀筋の緊張を解くことができる。太腿を平行に保ちながら右脚をまっすぐ伸ばす。ホールドして6~8回呼吸。左脚でも繰り返す。
コア強化のポイント:このバリエーションは腰の外側からはさむ動作が非常に難しくなるが、骨盤底筋を目覚めさせるには抜群の効果がある。
STEP13:スプタゴムカーサナ(横たわった牛の顔のポーズ)
仰向けになり、右膝を左膝の上に重ねて、右足を左腰の外側に。両方のかかとがそれぞれ腰から同じ距離になるようにして、足首(難しければ、ふくらはぎ)を持ち、両膝を胸に引き寄せる。ホールドして6~8回呼吸をし、腰の外側を開く。足を替えて繰り返す。
コア強化のポイント:このポーズから、徐々にリラックスしていく。これまで行ったすべてのエクササイズの余韻を味わおう。
STEP14:スプタマッツェーンドラーサナ(横たわった魚の王のポーズ)
仰向けになり、両膝を立てて足裏をマットにつけたら、両腕を体の横に伸ばす。吐く息で左足はマットにつけたまま、右膝を胸に引き寄せる。お尻を少し右側にずらし、左手を右膝の外側にそえる。息を吐きながら右膝を左に倒し、右腕を横に伸ばす。ホールドして8 ~ 10回呼吸。反対側でも繰り返す。
コア強化のポイント:このポーズの一番の目的は、リラクセーションを深めていくことだ。ここでしっかり準備をして、シャヴァーサナ(亡骸のポーズ)に入ろう。
STEP15:シャヴァーサナ(亡骸のポーズ)
仰向けのまま両脚を伸ばし、腕を体の横の楽な位置に置いて、手のひらを上に向ける。体に余分な緊張が残っていないか観察し、硬かったり、力んでいる筋肉があればゆるめよう。目を眼窩に沈めるように休ませ、あごや唇の力を抜く。このまま5 ~ 8分休息しよう。
教えてくれたのは…カーリー・トレイシー先生
ロサンゼルスで活躍するヨガティーチャー。ロサンゼルスのYoga WorksでSmart FLOWを教えている。
※表示価格は記事執筆時点の価格です。現在の価格については各サイトでご確認ください。
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