悪夢を頻繁に見る人は睡眠不調に陥っている…試してほしいシンプルで効果的な対処法|睡眠コーチが回答
夜中に目が覚めたり早くに目が覚めてしまう…その意外な原因のひとつに「悪夢」があります。悪夢を見る頻度を減らして睡眠の質を改善していくために今日からできることとは?睡眠コーチ・角谷リョウさんの著書『超熟睡トレーニング』(Gakken・刊)から抜粋してご紹介します。
悪夢を見る人は、仕事を切り離す勇気が必要
経営者や組織で重責を担っている人は、悪夢を見やすい傾向にあります。彼らが見がちな悪夢として多いのが、仕事で失敗する夢。たとえば、どうしても成功させたいプレゼンが駄目だったという夢を毎日見るというケースです。
でもそれは必ずしも悪い夢とは言えません。失敗したのはなぜなのか、どう対策を講じれば失敗せずに済んだのか、夢の中でシミュレーションしているとも言えるからです。
とはいえ度がすぎてしまい、夜中に何度も起こるようになると、プラス面よりもマイナス面のほうが大きくなって、本格的な「悪夢」になります。
寝る前に考えたりインプットしたりしたことが夢に影響するというのは、睡眠学的にもわかっていることです。要は寝る前に別のことに頭をシフトさせれば、悪夢は減らせますが、これがなかなか難しいのですね。
というのも大体、成功している人は若いころから寝る前に仕事のことを考える習慣がついてしまっているからです。寝る間際にアイデアを思いつくなどの経験をたくさんしているため、寝る前に仕事のことを考えるのはいいことだというのが染みついているのです。
若いうちはこのような夢を見つつも、深いノンレム睡眠も十分に取れるので睡眠不調になりにくいのですが、30代後半くらいからは寝る前に考えごとをすると、ほとんどの人が深いノンレム睡眠が十分に取れず睡眠不調になっていくケースが増えてきます。
ですから40代以降になるとさすがに、そのフェーズはもう終わらせないといけないことを理解したほうがいいでしょう。なぜならば、そのことによって頭がパニックになり寝ることができなければ、仕事のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことになるので、本末転倒だからです。
若いころは体力もあるしそれでよかったかもしれませんが、年齢を重ねて体力が落ちてくると、睡眠中に体力を回復してベストコンディションにしておかなければ、問題に対処することもできません。
しかも現代は変化が早すぎて、どうトラブルが起こるのかを予測することは不可能な時代になっています。
プログラムが破綻するかもしれないし、システムがダウンするかもしれない。どんなトラブルが起きてもおかしくなく予測が不能なこの現代で、悪夢を見てその中で対処をするなどというのは、非効率的な時代なんです。
そんなことに頭を悩ませるよりは、良質な睡眠を取り、いざというときに対処できる気力と体力を回復させておくことのほうがよほど大事です。
以下で、悪夢を減らす効果が期待できるトレーニングをご紹介します。もちろん仕事で重役の人だけでなく、悪夢に悩むことの多いすべての人に使える方法です。
「悩みごと、心配ごとを書き出す」「感謝日記を書く」
まずご紹介したいのは「悩みごと、心配ごとをいったん頭から切り離す」というトレーニング。寝る前に心配の種となっている事柄を書き出して、頭から離す作業をします。
用意すべきは、1冊のノートとペンだけ。ノートに、頭の中にある悩みごとや心配ごとを全部書き出します。
「書くのなら、スマホやパソコンを使っていいのでは?」と思われるかもしれませんが、私はあえてアナログな手法をおすすめしたいです。
手で書くことによって、キーボードでタイピングしているときよりも脳活動が活発になったという研究結果が、ノルウェー科学技術大学(NTNU)の研究結果で出ています。手で書くことによって紙の感触を感じたり、ペンを走らせる音が聞こえたりと、五感を伴うことで感覚が活性化されるのだそうです。
また、手書きのほうがα波が出てリラックスしやすいとも言われています。
頭の中にあるものをいったん夜寝る前に、ノートに移し替えるというイメージです。すると頭がすっきりして、睡眠に集中しやすくなります。
書いたものは翌朝確認します。すると、夜に考えていたときには深刻だと思っていたことが、朝見てみると「あれ?これ、そんなに大した問題じゃなかったな」と気づくことが少なくありません。人間は夜になると悲観的に考えやすくなり、朝は冷静になりやすいからです。
あとこれは、いろいろな人が言っているので、ご存知の方も多いかもしれませんが、「感謝日記」を書くのも中途覚醒を防ぐことにつながります。
要は夜になるとネガティブ思考に傾きがちなのを、ポジティブ思考に変換して、心配ごとを減らそうというものです。これも紙にペンで書くのを推奨します。
感謝と言っても、そう大がかりなものである必要はありません。「今日、こんなことがあってよかったな」と感じたことを書いていきましょう。長い文章である必要はなく、箇条書きで十分です。
たとえば、
「お昼に食べたパスタが思いの他おいしかった」
「久々に友達に会って楽しくおしゃべりできた」
「道に迷っている人に道順を教えてあげたら、感謝されてうれしかった」
くらいでいいのです。
もっと簡単にしてしまって、「今日も無事に一日を終えることができた」とだけ書くのでもOK。
これをやってみると「自分の人生、意外に悪くないな」と思えてきます。その積み重ねが自己肯定感を育み、安心感を呼び込んで安眠につながっていきます。
著者/角谷リョウ
1970年、名古屋生まれ。上級睡眠健康指導士。 NTTドコモ、サイバーエージェント、損保ジャパンなど160社以上、15万人以上のビジネスパーソンの睡眠改善をサポートしてきた実績あり。 認知行動療法や心理学をベースにした独自の睡眠改善メソッドによるサポートは評価が高く、講義・サポート依頼が殺到。 また、経営者1,000人以上の睡眠改善を通じて得た経験を活かし、現在は経営者特化型のサポートも実施中。 著書『働くあなたの睡眠術』は台湾・中国・韓国で翻訳出版されるなど、ベストセラーとなっている。 「人は、強制されても生活や行動は変わらない」をモットーに、楽しくみずから自分を変えたくなるようなサポートを追求している。LIFREE 株式会社共同創業者。著書に『働くあなたの快眠地図』(フォレスト出版)、『働く50代の快眠法則』(フォレスト出版)がある。2024年9月にYouTubeチャンネル「睡眠先生リョウ【仕事に超役立つ睡眠術】」を開設。
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ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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