#みりん女子会® 主宰・設楽賀奈子さんが考える、みりんで叶える〈ご機嫌な毎日〉とは
「みりん」がどういった調味料か、ご存知ですか?「みりんはただ甘味をつけるだけの調味料ではないんです」と語るのは、大人気オンラインクッキングサロン「#みりん女子会®」を主宰する設楽賀奈子さん。みりんメーカー宝酒造㈱でみりんと15年間向き合ってきた栄養士の設楽さんに、私たちの感性を揺すぶるみりんの美しさや健康効果、みりんの活用方法、可能性について前後編に渡ってお伺いしました。
甘味づけだけではない?!「みりん」の魅力とは
– 日本の台所には必ずある、と言っても過言ではない「みりん」ですが、みりんがどういった調味料かということを語れる人は実は少ないような気がします…。設楽さんが、みりんにハマったきっかけは何だったのでしょうか?
設楽さん: 料理上手な母とグルメな父の元に育ち、小さい頃から食べることが大好きで、自然と食に関わる仕事がしたいと考えるようになりました。大学では栄養士の資格を取得するために、病院や学校給食の実習に行くことがあったのですが、どの現場にも母が使っていたものと同じみりんがありました。そのみりんこそが、新卒で入社して15年間商品に携わることになった宝酒造㈱のタカラ本みりんでした。大学を卒業して、宝酒造に入社してからは、スーパーマーケットとのタイアップ企画でみりんの普及を目的とした食育イベントを企画したり、みりんの商品企画の担当にも抜擢していただきました。そのキャリアの流れでとことんみりんと向き合い、その魅力を知るたびにみりん愛が募ってすっかり虜になっていったんです。
– みりんのどういったところに虜になったのでしょうか?
設楽さん: まず、みりんの一番の特徴と言えば「甘味」ですが、お米生まれの発酵食品であるみりんは、精製食品の砂糖に比べると、複雑で優しい甘味が表現できるところが魅力ですね。甘味が優しい分、他の食材の素材の味わいを引き立てながら料理やお菓子を美味しく仕上げることができます。
また、みりんはただ甘味をつけるだけの調味料ではないんです。例えば、蓋を開けてみるとお米や糀由来の芳醇な香りがして、リラックスできます。あとは、みりんの液色もとてもキレイですよね。みりんはお米からできていますが、黄金色に輝く稲穂を思わせるような艶がある色は本当に美しいです。加えて、みりんに含まれるアルコールは素材の臭みを消したり、食感を改善する効果もあります。
このように、みりんは甘味や旨味で単に味付けをするだけでなく、食感や香り、てり・つやなど見た目への調理効果まであり、立体的な美味しさを作ることができる稀にみる調味料なんです。
– みりんと言えば甘味料というイメージでしたが、嗅覚や視覚的にも魅力があるということですね。
設楽さん: はい。もともと人間は、甘い香りに安心感を得ると言われています。そこに、お米や糀といった日本人が昔から慣れ親しんでいる原料由来の香りがすると、更に安心感を得ることができます。甘くて美しいと書いて「甘美」という言葉があるじゃないですか。甘美は「ほどよく甘くて、美味いこと」「心地よく、うっとりした気持ちにさせる」という意味を持つ言葉です。私はこれこそ、みりんを表す言葉だと思っているんです。みりんは「甘くて美味しい」というのは知られていることですが、それに加えて、香りや見た目の美しさもあるので、人々の心をうっとりさせるという心理的な魅力もあると思っています。みりんを漢字で書くと「味醂」と書くのが、現在は一般的ですが、昔は「美醂」と書かれていたという文献もあります。このことから、昔の方々も“美味しくて美しいもの”としてみりんを捉えていたことが分かります。みりんが400年以上愛され続けている所以はこの美しさにあるのではないかと思います。
– 程よく甘くて美味しい、そして美しいみりん… 魅力的ですね。加えて気になるのが健康効果なのですが…
設楽さん: みりんは砂糖の代わりになる、というところがとても大きな健康効果があると思っています。砂糖というのは、精製食品で単調で強い甘味が特徴です。精製食品は体に負担があることや砂糖には中毒性・依存性があることを認識される方が、最近は増えていますね。それに対して、みりんは微生物の力でできた発酵食品で、カラダや心に優しい甘味が楽しめます。「みりんで脱砂糖」を実践した方は、砂糖の甘味が強過ぎると感じるようになり、小麦粉と砂糖を使った市販のお菓子やパンの摂取が自然と減り、結果的に健康的な食生活にシフトでき、ダイエットにもつながる方が多数おられます。食生活を変えるポイントはただただ食事を我慢するのではなく、舌から変えて自分の食の好みを変えてしまうのが一番です。
また、みりんは砂糖に比べて血糖値の上昇度を示すGI値が1/7、血糖値を抑制する効果を証明する研究結果もあります。血糖値が上昇すると、脂肪がつきやすくなったり、食欲や眠気を誘ったり、気分にムラが出るという影響が懸念されます。ダイエットを実践している方や日々、ご機嫌に健康に暮らしたい女性の大敵です。ですので、血糖値を上げないように食生活を送ることは心身の健康にとって大切なことなんです。
単純にカロリーを減らすような食事制限をするのではなく、みりんと同じお米生まれの米粉も一緒に活用しながら、血糖値の抑制や腸活を意識した“美味しさも健康も諦めない”グルテンフリー・シュガーフリーの食生活を提案をしています。
小麦粉のグルテンや砂糖は悪玉菌の餌にもなってしまう一方で、米粉にはグルテンが含まれず、みりんにはオリゴ糖も含まれていますので、腸活にぴったりです。
– 設楽さんは、ご自宅では砂糖の代わりにみりんを使い、それに加えて米粉でグルテンフリーも実践されているとのことですが、そのような食生活にシフトしたきっかけは何だったのでしょうか?
設楽さん: 実は、34歳の一番働き盛りの時に、婦人科系疾患が発覚しました。それまで、仕事が大好きで邁進してきましたが、どれだけ好きなことでも自分のカラダと心の声を無視し続けたら、心身が壊れて長くは続けられなくなることを経験しました。そのタイミングでまずは食習慣を変えようと決意し、現在取り組んでいる砂糖の代わりにみりん、小麦粉の代わりに米粉を使うというシュガーフリー、グルテンフリーを実践するようになりました。あとは、無添加のものだったり、農薬不使用のものを選ぶということも意識するようになりましたね。今では自宅に小麦粉も砂糖もありません。
– 食生活を変えてから心身に変化はありましたか?
設楽さん: はい!最初に便秘が治りました。極度な便秘だったんですが、それが治ったのにはかなり驚きましたね。また、冷え性の改善や大きな体重の変動もなくなりました。いつでも適正体重で、太りすぎることもなく、痩せすぎることもなく、常に自分の体が軽いと思える状態にキープできるようになったのは大きな変化でした。それに加えて、みりんのお菓子や、料理、パンを食べると、罪悪感なく食生活を前向きに楽しめるようになり、カラダだけでなく心も軽く感じるようになりましたね。自分に優しい時間をプレゼントできるようになった感覚です。
”女子会”だから続く、健康的で美味しい食生活
– 現在は、オンラインクッキングサロン「#みりん女子会®」を主催されていますよね。
設楽さん: はい。結婚を機に会社を退職し、オンライン配信のクッキングサロン「#みりん女子会®」を2022年に開講しました。
病気や結婚というライフイベントを経て、会社で週5回フルタイムで働き続けることは難しくなりました。加えて、先程お話した婦人科系疾患の経験から、みりんを通して女性のカラダと心の健康に貢献したいという思いが芽生えてのことでした。みりんと米粉の食生活にシフトすることで起こる心身の変化を目の当たりにして、 こんな日本の女性にぴったりの食スタイルを一人で楽しむなんて罰が当たるような気がして (笑)「日本はもちろん世界中の女性に絶対に届けなければ」という使命感を持って活動に取り組んでいます。
また、私は病気を通して命と向き合わざるを得なかったので、こういった健康的な食生活を強制的に実践することができました。けれど、なんとなく不調を感じている程度では、仕事や家庭の役割を優先してしまって、自分のことは後回しになる方がほとんどだと思います。かつての自分もそうだったので…。ですので、何となくの不調を抱えておられる方々が病気になる前に、「私に優しい美味しさで満ちたご機嫌な毎日を」女子会のようにおしゃべりを楽しみながら、みんなで実践していければ、無理なく習慣化できるのではないのかなと思ったんです。
– 一人で習慣化するのは難しくても、仲間がいるから続けられるというのはありますよね。#みりん”女子会”と名付けたのはどうしてでしょうか?
設楽さん: それは、病気を経験した時にギリギリの精神力の中で一番救われたのが、気の知れた友人や先輩たちと美味しいものを食べておしゃべりしている時間だったからです。20代の女性でも70代の女性でも、年齢問わずに時を忘れて楽しめるのが女子会ではないでしょうか。いくつになっても、女子会に参加するとエネルギーチャージになるじゃないですか。止まらないおしゃべりで、「え?もう3時間経ったの!」みたいな(笑) 女子会と言えば、美味しいお菓子やごはんを食べながら、というのが鉄則ですよね。グルテンフリー・砂糖不使用の「米粉とみりん」のお菓子や料理・パンのレシピとおしゃべりを楽しめる女性のためのコミュニティーがあれば、私も含めてみんなの暮らしのお守りのような存在、場所になれるのではないか、と思っています。
– 止まらないおしゃべり、楽しいですよね(笑)#みりん女子会が大切にされていることは、どんなことでしょうか?
設楽さん: 私もそうだったんですが、社会や家庭で様々な役割を持ちながら頑張る女性は、自分のための時間を楽しむことに罪悪感を感じてしまう方が多いと思うんです。ですので、#みりん女子会では、「さよなら罪悪感、月に1度の私の時間」というフレーズを発信していています。一人では実践しきれなかった自分の時間を作ることを、「愛ある美味しさとおしゃべりを楽しめる 」#みりん女子会でなら、時間を作ってみようと思って参加してくださる方も多く、最近は有休を取って参加される方もおられるくらいです!
また、私たちは「私に優しい美味しさで満ちたご機嫌な毎日を送るたくさんの女性の未来を創る」というビジョンも掲げています。月に1回、#みりん女子会を楽しむことで、気づくと日々、ご機嫌に暮らせていたという女性が世の中に増えてくれたらいいなと思っています。あくまで自然に楽しく、食生活を変化してもらいたいです。それが、健康への近道なので。
– クッキングサロンは、どのように進行されているんでしょうか。
設楽さん: レシピ開発は難航することが多く、運営も含めて複数名のチームで実施しています。メンバーは年齢も住む場所も様々な女性です。また、レッスンのLIVEも2名体制で行っているところがこだわりです。料理番組のようなイメージですね。毎回、講師の先生と私が司会進行役で進めていきます。2名体制で進めることで、たくさん届く質問はもちろん、ボケやツッコミ、雑談的なコメントにも臨機応変に対応しています(笑) 私たちは、”女子会”なので、たくさんおしゃべりも楽しみながらレッスンをしていきたいんです。コメントは1000件を超えることもあります!それくらいサロンメンバーさんをはじめとする #みりん女子の方々との対話を大切にしながら、進めています。オンラインサロンではありますが、もしかすると対面よりも深く言葉を交わしているコミュニティかもしれません。会えない環境だからこそ、相手を思う想像力を持って、言葉にすることを大切にしています。
– 1000件はすごいですね!参加者の方は、どういった方が多いでしょうか。
設楽さん: 年齢層が幅広くて20代から70代の方々がご参加されています。70代の方がインスタグラムを使いこなしておられるのかと思うと感心してしまいますよね。ですので、世代問わず、どちらかと言うと「美味しさも健康も諦めたくない」食いしん坊な女性のためのコミュニティになっていると思います。先日もはじめての対面イベントを都内で実施しましたが、20〜60代の方が参加してくださりました。年齢という枠を超えて皆さん、おしゃべりを楽しんでおられていましたので、食の幸せは全人類共通だなと改めて思いました。
また、参加者の8割が働いてる女性です。その他、子育て中や介護中という方なども含めて、本当に色々なライフイベントを重ねている方が多いです。家族のために頑張っている女性が多い印象ですね。「誰かの方に作ってあげたくて入った」という方も多いですし、結果的にそれが自分のためになったいう方もいらっしゃいます。忙しい日々でも自分の人生を豊かにヘルシーに彩りたいと前向きな女性が多いです。
– 参加者の方々からはどんな声が集まっていますか?
設楽さん: 小さなお子さんがいらっしゃる生徒さんからは、「娘にも食べさせてあげたい」「家族にも受け継いで欲しい」「一生モノのレシピです」「懐かしさも新しさもある美味しさ!」と言っていただくことが多いです。私たちはレシピをデータでお送りしているんですが、生徒さんの中には、自分用と、まだ赤ちゃんの娘さんが大きくなった時用に2枚印刷してファイリングされているという方もいました。世代を超えて受け継いでいきたいと思ってもらえているということは、みりんの歴史を紡いでいくことにもなりますので、とても嬉しいですね。
また「米粉とみりんのレシピは、会話が生まれやすい」という声もよくいただきます。まだまだ一般的ではないレシピのコンセプトですので、「このケーキは小麦粉・砂糖不使用で米粉とみりんでできてるんだよ!」とお話するだけで、食卓にサプライズが必ず起きます。「ヘルシー=不味い」と思う方も多い中、見た目はもちろん味わいも「一般的なお菓子以上に美味しい!」という誉め言葉ももらえることもあり、「ドヤ顔できる」「自己肯定感アップ!」というお声もありますよ(笑)
また、老若男女、あるいは体調を崩している方や闘病中の方にもおすすめしやすく万人に優しいレシピなので、誰かに優しさを届けたいときにプレゼントできるレシピだということもポイントなのかなと思っています。
– グルテンフリーで砂糖不使用、しかも美味しいとくれば話が弾みそうですね。
設楽さん: はい。あと多いのは、健康面で「肌荒れがなくなった」「便秘が解消された」「娘と私のイライラが減った」「料理が楽しくなった」などのお声もあります。ダイエット面では、「最大7キロ痩せた」という方もいらっしゃいますよ。これは米粉とみりんで脱小麦粉&砂糖を実践することで味覚が代わり、市販の小麦粉と砂糖のお菓子やパンの摂取が減ったことや血糖値を穏やかに保つことで脂肪を溜めづらかったり、暴飲暴食を防いでくれたり、腸内環境や食生活全体のバランスがよくなった結果としての減量に繋がっている方が多いです。
*後編へ続きます。
【設楽さんの著書: わたしに優しい 米粉とみりんのお菓子と料理】
【プロフィール】設楽 賀奈子(したら かなこ)
京都出身、群馬在住。A型。京都のみりんメーカー宝酒造(株)でみりんの商品企画・広告宣伝・レシピ開発などマーケティングに15年間従事し、みりんの虜に。料理上手な母とグルメな父の元に育った無類の食いしん坊。薬剤師の姉の影響もあり「食から健康」をライフワークに、栄養士の資格を取得するも、2018年に女性系疾患を経験し「私に優しい美味しさ」を改めて模索。「米粉とみりん」でグルテンフリー・砂糖不使用の食生活を実践し、便秘や冷え性の改善、心身の不調が改善することを実感。一方で、米粉とみりんで作る美味しいレシピがまだまだ世の中に少ないことを目の当たりにする。結婚を機に「私に優しい働き方」をと、自宅からできる仲間とのオンライン配信で定期便クッキングサロン#みりん女子会®を2022年に開講。1年で総受講者数1500名を超える人気サロンに。2023年7月には「みりんをアートする」をミッションに(株)米粉とみりんを設立。趣味は古道具集めとおしゃべりとワイン。夢はみりんで世界平和。
Instgram: @komekomirin
AUTHOR
桑子麻衣子
1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。
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