「余命30ヶ月」と言い渡された自然薬剤師「DAY BY DAY」藤井晶浩さんと妻・多恵子さんの生き方
――その状態から、どのように抜け出したのでしょうか。
(タエ)「ひと言では説明できませんが、何故癌になったのか、まずその理由を探るために、たくさん勉強しました。」
(アキ)「結局、知らないから不安だということに気がついたんです。」
(タエ)「余命30ヶ月と言われたので時間がないと感じて、とにかくたくさんの本を読んで知識を仕入れました。1日10冊の本を図書館で借りて斜め読みしました。毎日それを繰り返し、前向きになれると思ったものはアキちゃんと共有しました。もちろん、ダメだと思うものは絶対に見せない。そうすると少しずつ光が見えてきたんです。いつしか、アキちゃんも図書館に通うようになりました。」
(アキ)「本の中にはたくさんの良い言葉がありました。『余命は“余る命”と書く。人に余っている命なんてあるのか。』例えばこの言葉に突き動かされた。命に限りはあっても、余っている命などないですよね。そうやって言葉に元気をもらいながら、様々な本を読みました。もちろん、本によって偏りがある中、それらの方法論には共通していることがありました。それだけを抜き出し、自分たちに落とし込んでいったんです。その日からできること。お金をかけない。負担なくできること。この3つを守らなければ、続かないということが分かりました。」
――少しずつ前を向き始めたわけですね。
(タエ)「そうですね。でも本当に“何故”を払拭できたのは、4ヶ月ぶりにサーフィンをしたときでした。」
(アキ)「そうだね。結局半信半疑で、コールドプレスジュースと和食中心の食事を続けていたのですが、あるときタエちゃんにサーフィンに誘われたんです。彼女は自分がサーフィンをしたくて、うずうずしていたんですよね。」
(タエ)「このまま介護生活が続くのも嫌だったし、とりあえず海行くよって。」
(アキ)「いつもは見ない波情報を見ながら『今日の宮崎は波がお腹まであるらしいよ』とか『昨日サーフィンの夢を見たんだ』とか言いながら(笑)。闘病中で暇だったし、足だけ浸かれば良いと思って根負けし、宮崎に行くことにしました。そして海に行き、パドルアウトした瞬間、妙に身体が軽く感じました。昨日までサーフィンをしていたみたいだった。もちろん筋力は低下しているけど、すごく気持ちよかったんです。」
――身体が軽いと感じた瞬間、気が乗らなかったサーフィンをまた楽しいと感じたのでしょうか。
(アキ)「そうですね。久しぶりに二人で笑顔になりました。そして、『この食生活でいこう』と決心しました。やってきたことが正しかったと証明された気がしましたね。」
(タエ)「抗がん剤治療をしている人は、白血球数が通常は3000〜5000のところ、1000くらいに落ちるんです。つまり免疫力が低下し、発熱や感染症を起こしやすい。でもアキちゃんの場合は、3000以上をずっと保っているんです。」
(アキ)「だから抗がん剤をしながら、食生活を改め、そして毎週海に入りましたね(笑)。あとはヨガを本格的に再開しました。」
――ヨガを取り入れたのは何故だったのでしょう。
(タエ)「私たちの身体は、交感神経と副交感神経(相反する二つの神経=自律神経)で成り立っています。癌細胞には、副交感神経を優位にすることが良いと言われています。癌細胞は酸素を使わずに増えていく、つまり酸素が嫌いなんです。安直な考えですが、体に酸素をどんどん届ければ良いんだと思いました。それには、ヨガと太極拳が良いと言われたので、すぐに近くのヨガスタジオを調べてアキちゃんを連れて行きました。」
(アキ)「それから今でもほぼ毎日やっています。アシュタンガをしっかり1時間半。結局ヨガもなんでも、最初の一歩は誰でも踏み出せますが、続けることが難しいですよね。どんな状況でもやり続けることが大切。ヨガも、サーフィンも、コールドプレスジュースも、食生活もそう。僕の場合、30ヶ月と言われちゃったもんだから、必死に続けることができたのかもしれません。」
――そもそも全ては自分たちのためにやり始めたこと。それを今は活動として、HPを作り、ショッピングサイトをスタートさせ、セミナーを開いていますよね。始めたきっかけは何かあったのでしょうか。
(タエ)「いろんな情報があふれている中、私たちは癌を宣告されたときに、何を信じて良いのか分かりませんでした。同じことを感じている人は、きっと少なくないと思うんです。」
(アキ)「薬剤師として理論的なことも踏まえながら、自分たちがやってきたことを残そうと思いました。ひとつの選択肢としてあれば良いかなと。この治療を続けて5年生存率30%と言われ、それを少しでもあげる方法が、食生活やライフスタイルの改善で残されているならば、それをやらない手はない。その方法論がいっぱいあって、路頭に迷っている時間もないから、誰かが体系立ててやってくれていたら、僕たちはやっていたと思います。だから自分たちが欲しかったものを作ったんですよね。」
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