【研究結果で明らかに】ひとり暮らし50歳以上の人はペットを飼うと認知症リスクが低下!その理由とは
50歳以上のひとり暮らしの人は、ペットを飼うことで“認知症リスクを低下させるかもしれないとの研究結果が明らかになった。
ペットを飼うことで孤独感が減り、体力や健康の低下を遅らせる
先日、JAMA Open Networkに発表された研究によると、中国・広州市にある中山大学の研究者たちは、ペットの飼育が認知症の進行速度と関連している可能性を発見した。この研究では、平均年齢66.5歳のイギリス在住の参加者7945人(ほとんどが白人)を対象に、9年間にわたって行われた。参加者の3分の1以上(35.1%)がペットを飼っており、約30%はひとり暮らしであった。それらの参加者を対象に、猫や犬などのペットを飼うことが、脳の健康に利益をもたらし、認知力の低下を遅らせるかどうかを評価した。
毎年、参加者にはいくつかのテストが課された。10個の無関連な単語を与えられた直後に暗記し、少し時間を置いて再び暗記し、1分間でできるだけ多くの動物の名前を挙げることが求められた。これらのテストは、日常のタスクを遂行し、高齢になっても独立した生活を続けるために重要な言葉の記憶力と言葉の流暢性を測定するために設計された。
結果は明らかだった。「単独で生活している人がペットを飼うことで、言語の記憶や流暢性に良い影響を与えている可能性がある。また、高齢者の体力や健康の低下を遅らせることも期待できる」と、中山大学のCiyong Lu教授は述べた。一方で興味深いことに、猫や犬を飼っていても、他の人と暮らしている高齢者では違いは見られなかった。「孤独感は認知症や認知力低下のリスク要因と関連している」と研究者は述べている。今回の研究結果は、ペットを飼うことで孤独感が減り、高齢者の脳の健康維持に良い影響を与える可能性を示唆した。
2025年、国内の高齢者の5人に1人が認知症に
人口の高齢化と寿命の延長に伴い、高齢者の認知機能の悪化は深刻な公衆衛生の問題となっている。世界中での認知症患者数は2019年の5700万人から2050年には1億5300万人に増加すると推定されている。また、日本国内の認知症高齢者の数は、2012年で462万人と推計されており、2025年には約700万人、65 歳以上の高齢者の約5人に1人に達することが見込まれている。また、日本国内では、未婚率の増加や、核家族化の影響を受けて、単独世帯(世帯主が1人の世帯)が増加している。2040年には単独世帯の割合は約40%に達すると予測されている。特に、65歳以上の単独世帯数の増加が顕著である。
認知機能の低下は個々の幸せを深刻に損なうだけでなく、介護者、社会の財政、ヘルスケアシステムにも莫大な負担をかける。また現在のところ、認知症の根本的な治療法は存在せず、認知症の進行や症状を抑えるアプローチがメインだ。そのため、認知症のリスクが高い人や改善できるリスクを特定することは重要な課題である。
出典:
Pet Ownership, Living Alone, and Cognitive Decline Among Adults 50 Years and Older
Living with pets, others may slow the decline of cognitive skills in older adults: Study
Owning Pets Helps Stave Off Dementia for People Over 50 Living on Their Own
AUTHOR
山口華恵
翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。
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