「たかが、めまい」とあなどってはいけない理由|医師が教える【めまい】症状別の原因と予防法

 「たかが、めまい」とあなどってはいけない理由|医師が教える【めまい】症状別の原因と予防法
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-01-01

めまいの種類や症状別で考えられる病気について医師が解説します。

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めまいにはいくつかの種類がある

めまいにはいくつか種類がありますが、主に体がふわふわと宙に浮いているような感覚・姿勢保持が困難・直進できないという症状が出ます。めまいの症状は急に出現するか、もしくは徐々に強く出てくるのが特徴のひとつです。ふわふわした感覚だけであれば特に大きな問題がない場合が多いですが、めまい症状だけでなく、激しい頭痛・嘔吐・手足の痺れ・麻痺・歩行困難・意識障害を認める場合は、脳腫瘍や脳卒中など重大な病気が隠れている場合がありますので、要注意です。

めまいを発症する原因は、種類によって異なり、特に中枢性めまいと呼ばれる病気では、脳梗塞や脳出血によって小脳や脳幹などの脳組織に障害が出ることでめまい症状が発症することがあります。このような場合は、すぐに治療を始めないと数々の後遺症が残るリスクがあるので、特段の注意を払う必要があります。また、自律神経が乱れる自律神経失調症、あるいは貧血や発熱症状に伴ってめまい症状を自覚する場合もあります。

薬を内服していてめまいを自覚する場合には、抗生物質・降圧剤・抗精神薬などの薬剤の副作用かもしれません。それ以外にも、耳や脳などの領域に異常所見が見つからない場合は、心因性と診断がつく場合があり、自律神経の乱れだけでなく精神的ストレスなどが契機となって、耳や脳の機能に悪影響を及ぼしている可能性があります。

また、めまいは大きく、前庭性と非前庭性の2種類に分類されることもあります。前庭性のめまいは平衡感覚を脳に伝える領域の障害を意味しており、非前庭性は貧血・内分泌疾患・婦人科疾患・精神疾患・自律神経異常など全身状態の異常にともなって発症するめまいのことを指しています。その中でも、さらに前庭性のタイプは、中枢性と末梢性の両者に分類されます。中枢性は脳の部分に異常があるもので、末梢性は平衡感覚を司る内耳の三半規管や平衡感覚を脳に伝える神経の問題によるものが原因となります。末梢性めまいに当てはまる代表的な病気は、前庭神経炎、メニエール病、良性発作性頭位めまい症などが挙げられます。

いずれも、専門的な治療が必要な場合が多いので、「たかがめまい」と思わず、症状が出たら早めに耳鼻咽喉科などの医療機関を受診しましょう。

めまい
「たかがめまい」と思わず、症状が出たら早めに耳鼻咽喉科へ! photo by Adobe Stock

めまいを防ぐ方法とは?

めまいの予防法や治療策は、原因となる病気によって異なります。脳が原因である場合は速やかな治療がとても重要であり、脳出血や脳梗塞の場合は、すぐに専門病院を受診する必要があり、脳梗塞の症状がかりに軽度であれば、抗血小板薬や抗凝固薬などの薬物療法を実施することもあります。また、自律神経失調症がめまいの原因である場合はメンタル面に対する治療を行い、睡眠不足やストレス、不規則な生活習慣が原因の場合は徐々に毎日の生活スタイルを改善していくことが大切です。適度な運動習慣、栄養バランスの優れた食事、十分な睡眠、あるいは自分なりのストレス発散をすることでめまい症状が緩和される場合もあります。

また、めまいは主に男性よりも女性が発症しやすく、育児や家事に追われてストレスが溜まりめまい症状を自覚する、あるいは更年期障害に伴うホルモンバランスの乱れで発症するケースも多いと認識されています。病気に対する根本的な治療も大事ですが、適度な運動や十分な休息・ストレスを上手く発散するなど日頃の生活習慣を少しずつ整えることも、めまいの予防や治療のためにはとても重要なポイントとなります。特に、末梢性めまいの代表格である良性発作性頭位めまい症になりやすいのは、長時間、頭を動かさず同じ姿勢でいる人であると考えられています。耳鼻科で良性発作性頭位めまい症と診断される方の半数は、デスクワーク従事者という数字がこの事実を物語っていますし、低い枕で寝ている人、寝返りの回数が少ない人も、良性発作性頭位めまい症になりやすいと考えられています。特に、良性発作性頭位めまい症の場合には、デスクワークなど、長時間同じ姿勢をしている人に罹患することが多いので、毎日の生活において同じ姿勢をなるべく避けて適度に運動することを心掛けましょう。

まとめ

これまで、「めまい」の種類や症状別で考えられる病気、あるいはめまい症状を防ぐ方法や対策などを中心に解説してきました。

めまいとは、「雲の上を歩いている感じ」、「頭がぼーっとしてふわふわする」などの感覚がする病気です。めまい症状で常日頃から悩んでいる人は、周囲の理解を得られにくく、つらい思いをしている方も少なくないでしょう。めまいの症状は、一時的なものであれば特に問題はありませんが、場合によっては緊急性が高い病気が潜んでいる可能性もあるので注意が必要です。

めまい症状が長引いている、セルフケア対策を実施しても症状が改善しない場合には、耳鼻咽喉科や脳神経内科、婦人科や心療内科など適切な専門医療機関を受診しましょう。めまいの症状の現れ方によって受診する医療機関が異なり、例えばめまい以外に意識障害や手足の麻痺などの症状がある場合には、脳神経内科を受診するのが良いでしょうし、めまい症状だけを認める際には、耳鼻咽喉科を受診してください。また、ストレスが多く、気分の落ち込みが強い場合はうつ病など精神的な影響が大きいと考えて、心療内科を受診することが望ましいですし、普段から月経量が多くてもともと貧血気味であるという場合は婦人科を受診すると早期診断、早期治療につながります。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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