酒粕が入った料理、子どもや妊婦が食べても大丈夫?食べても酔っ払わない?【管理栄養士が解説】
冬は粕汁や酒粕鍋、酒粕甘酒など、酒粕入りの食べ物がおいしい季節です。酒粕にはアルコールの香りを感じますが、酒粕料理を食べても酔っ払わないのか疑問に思ったことはないでしょうか?この記事では、お酒と料理が大好きな管理栄養士が、酒粕を使った料理を食べても酔わないのかを解説します。
酒粕にもアルコールは含まれる
酒粕は、日本酒の「副産物」です。酒米や米麹などを発酵させたものを絞り、出てきた液体が日本酒、残った固形物が酒粕として扱われています。
日本酒の製造にともない作られる酒粕には、アルコールが含まれています。酒粕100g当たりのアルコール含有量は8.2gです。平均的なアルコール度数が5%であるビールよりも、酒粕のほうがアルコールの割合は高くなります。
アルコールの沸点は約78℃であるため、酒粕を加熱調理しているとアルコールは飛んでしまうでしょう。ところが、どんなに加熱してもアルコールを完全に飛ばすことはできません。酒粕を使った料理には、微量ながらアルコールが残存しているのです。
酒粕を取り扱うある企業が、酒粕から作られた甘酒と粕汁のアルコール残存量を調べました。すると酒粕甘酒100g中に1.7g、粕汁100g中に1.8gのアルコールが含まれていたそうです。
このように、酒粕料理にはアルコールが残っています。そのため、体質的にお酒に弱い人が酒粕を使った料理や飲み物を摂取すると、酔いが回る可能性があります。
子どもや妊婦は酒粕料理を食べてもよい?
酒粕のアルコールによる影響が気になるのは、子どもや妊婦でしょう。
子どものアルコール摂取は、脳や体の発達を妨げ、精神面にも強く影響を及ぼすと考えられています。さらに子どもは、大人ほどアルコールの分解をスムーズにおこなえません。したがって大人と同じ量のアルコールを摂取しても、子どものほうが血中濃度が高くなる傾向があります。アルコール含有量が微量でも、子どもに酒粕料理を与えるのは避けたほうがよいでしょう。
妊娠中のアルコール摂取は、胎児の奇形や脳障害、低体重などの原因となることがわかっています。アルコールは少量であっても、全妊娠期間中で胎児の健康に影響を及ぼすリスクがあることから、妊婦は飲酒をやめることが推奨されています。妊娠中は、酒粕を使った料理と飲み物の摂取も控えましょう。
酒粕料理を食べると飲酒運転になる?
運転前の、酒粕を使用した料理や飲み物の摂取についても気になりますね。
運転前の酒粕料理の摂取も、避けたほうが無難です。酒粕は加熱してもアルコールをゼロにできないため、お酒に弱い人では影響が現れる可能性があるでしょう。
飲酒運転は、呼気中のアルコール濃度により判定されます。しかし基準値以下のアルコール濃度でも、集中力や反応スピードが低下するなど、運転技能に悪影響を与えることがわかっています。
お酒に弱くて酔いが回りやすいのであれば、運転前の酒粕料理の摂取は避けるべきです。またお酒に弱くない人も、酒粕料理を大量に食べたあとの運転はやめておきましょう。
酒粕を使った料理は風味が豊かで、食べると体がぽかぽかと温まりますね。酒粕料理には微量のアルコールが含まれている点に注意しながら、独特のおいしさを楽しんでください。
【参考文献】
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
厚生労働省 e-ヘルスネット「未成年飲酒」
アサヒビール「飲酒が運転に及ぼす影響|人とお酒のイイ関係」
株式会社小林春吉商店「粕汁で酔っ払うのか?…粕汁を2杯食べて『飲酒運転検挙』」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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