【タレント×薬剤師】福井セリナさんがジェンダーやフェムケアについて発信する理由

 福井セリナさん(生島企画室よりご提供)
福井セリナさん(生島企画室よりご提供)

タレントであり、薬剤師でもあり、漢方薬局で広報兼アンバサダーも務める福井セリナさん。福井さんがパーソナリティを務める文化放送『カラフルブーケ』ではジェンダーやLGBTQ+、フェムケアなどのお話をしています。前編では福井さんのキャリアやコンプレックスとの向き合い方、セルフケアについて伺いました。後編では社会問題について発信することへの思いや、母子家庭で育った経験についてお話いただきました。

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“特権”をソーシャルグッドに活かしたい

——福井さんがパーソナリティを務める文化放送『カラフルブーケ』では、ジェンダーやLGBTQ+、フェムケアなどのテーマを取り扱っています。日本では芸能人がジェンダーや人権問題に関する発言をするハードルが残っていますが、福井さんは最初から発信することに抵抗感はなかったですか。

全くなかったですし、むしろ話したかったです。小さいときから芸能人の方々が社会問題や政治的な話をしないことに疑問を持っていました。知名度や発信できる場があることってある意味“特権的”な側面があると思うんです。せっかくその特権を持っているのだから、ソーシャルグッドなことに活かしたらいいのにって思います。

——いつ頃からジェンダー課題やフェムケアに興味を持ったのでしょうか。

最初に興味を持ったのはフェムケアで、私自身がものすごくPMS(月経前症候群)で悩まされていたんですね。20代後半になったら妊娠や出産のことも考えるようになって、私は出産自体がすごく怖いのですが、男性は子どもが欲しくても自分で出産しなくてよくて、月経周期のように日常的にホルモンバランスに左右されることもなく、好きな仕事もずっとできることがすごく羨ましいって思っていました。

かつ私が羨ましいと思っている体を持った人を基準に社会は作られていて“優遇”されているのが日本社会なわけですよね。それでジェンダーギャップに理不尽を感じるようになって、ジェンダーに関する色々な問題に興味が湧きました。

事務所の社長に日常的にジェンダーギャップのモヤモヤの話をしていたところ「こういう番組の話があるんだけど、やってみる?」と声をかけてもらったのが『カラフルブーケ』のお仕事だったんです。

——事務所の社長にジェンダーの話ができる空気感が素敵ですね!番組を始めてから福井さんにどんな心境の変化がありましたか。

とにかく視野が広がったと感じています。ゲストで色々な方がいらっしゃって、お話を伺っているうちに、人生の選択肢ってこんなにたくさんあったんだって思うようになりました。

『カラフルブーケ』では成功体験のお話を伺いつつも、パーソナルな部分も聞いています。作家さんがゲストの方について事前に深く調べていて、ご本人も忘れていたSNSの投稿を掘り起こしてくるなんてこともあるあるです(笑)。多様な人に出会うことで、色々な人生があっていいんだという安心感に繋がって、私が感じたそういう気持ちをリスナーさんにも受け取ってもらえたら嬉しいです。

——ジェンダーやフェムケアに関することで、特に関心のあることはありますか。

最近気になっていることは、メディアのジェンダーに関する知識や問題意識の低さです。ジャニーズの性加害問題のように、なかなか報道されなかったり、取り上げられてもシリアスさに欠けている番組もあったり、人権感覚の進んだ国ならありえないようなことが、日本では普通に起きてしまっていますよね。

またフィクション作品でリアリティに欠けた視点でジェンダーのテーマが扱われていることがあるのも気になっています。たとえば、女性社長の話や妊娠・出産の大変さを描いたドラマでも、あまり知識がないのかなって感じたり、女性として生きている感覚から遠いなって思ったりすることがあって。メディア側のリテラシーをもっと高めなきゃいけない時期に来ていると思っています。

母子家庭の置かれた状況の改善に取り組みたい

——福井さんの今後の目標やビジョンなどをお聞かせください。

ソーシャルグッドなことにどんどん取り組みたいです。今できることとしては、みんなが自分に自信を持って生きていけるような美容や健康に関する情報をSNSで発信していったり、『カラフルブーケ』を通じて、色々な人生があるということをお伝えしていったりすることを続けていきたいです。

そうして発信していく過程で、私の中で将来的に取り組んでいきたいことのアイディアがポコポコっと出てくることもあって……。まだ具体的にはまとまってないのですが、私が母子家庭で育ったこともあって、ひとり親家庭の子が生きやすくなるような取り組みを実現できたらとは考えています。

——ひとり親家庭の子どもが抱えるどんな問題を変えていきたいのでしょうか?

ひとり親家庭の子どもが、少しでも孤独感をなくせるような取り組みを考えていきたいです。私は4歳の頃に両親が離婚して、小学校低学年の頃に母が起業したこともあって、仕事が忙しくて、私や弟との時間があまり取れなかったんですね。離婚後も父は近くに住んでいたこともあって、父とも頻繁に会っていましたし、両親から大きな愛をもらっていたと感じています。

親せきも近くに住んでいたので、子どもだけで放置されて寂しい思いをすることはなくて、かろうじて楽しく過ごせたのですが、それでも母と向き合う時間が少なかったことが私は寂しかったんですね。それにひとり親家庭で近くに親せきがたくさん住んでいるという状況も珍しくて、子どもが寂しさを感じずにひとり親家庭で育つのは至難の業だと思うんです。

母は臨床心理士でカウンセリングルームを開いて、多くの人の社会復帰をサポートしていて、社会のためになる事業だと感じていますし、尊敬もしています。ただ「親も一人の人間だ」ということを割と早い段階で理解しました。何かしら特殊な事情があると、子どもが早く大人にならざるを得なくなってしまう。そういう家庭はたくさんあると思います。

特に日本の母子家庭が置かれた環境を見ると、経済的に苦しかったり、養育費が支払われなかったり、雇用でも不利になったりして、外で稼いで家のこともやらなきゃいけないとなると、いっぱいいっぱいになって、子どもが抱える孤独感は大きくなってしまうと思うんですね。「もっと国が助けてよ」とは思っていました。だからそういう状況を変えていきたいですね。

福井セリナさん(生島企画室よりご提供)
福井セリナさん(生島企画室よりご提供)

【プロフィール】
福井セリナ(ふくい・せりな)

1994年生まれ。新潟県出身。慶応義塾大学薬学部在学中に薬剤師免許を取得。
タレント活動と並行して薬剤師としても働き、漢方薬局の広報兼アンバサダーも務める。
文化放送『カラフルブーケ』パーソナリティ。arweb・週プレnetで連載中。

●Instagram: @serina.beauty_
●X(旧Twitter):@serina_fukui
 

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AUTHOR

雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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