【元保育士に聞く】保育園・ベビーシッター探しのポイントと「違和感を覚えたとき」の対処法
保育園勤務での経験談をもとに描かれているコミックエッセイ『問題のある保育園』(オーバーラップ)。作品を通じて、保育園の現状や裏側を見ることができます。作者のさいおなおさんは保育園で3年勤務した後、現在は漫画家兼ベビーシッターとして働いています。前編では保育士の働き方で課題に感じたことをお話いただきました。後編では、さいおさんのご経験から、保育園やシッター選びのポイントや違和感を覚えたときの対応を教えていただきました。
保育園を選ぶ際のポイント
——保育園を選ぶ際にどういう部分を確認すべきだと思いますか。
もし私が預け先を探すとするなら、園長先生の雰囲気を確認します。園長先生が大らかな感じで、保護者にとっても先生にとっても優しい人だと好印象です。園の雰囲気は園長先生の意向に沿っていることが多いので、園長先生がきちんとしているなら、信頼できそうだと思います。
園見学をする場合は、保育士さんたちが楽しそうに働いているかもチェックポイントです。検索すれば求人情報が出てくることもあるので、給与形態を見てみるのもいいと思います。預かる側に余裕がなければ、子どもにつらく当たってしまう恐れもあるため、働く人の待遇面も参考になるかもしれません。待遇が良い園は先生のことも考えてくれている園だと思います。先生が余裕を持って働ける環境ならば、お子さんも楽しく過ごせる可能性が高いと推測します。
——避けたい保育園の特徴はありますか。
園長先生が面談の時点で保護者に対しても高圧的だったり、嫌味っぽかったりする場合は要注意です。また園の見学をする場合に、先生が子どもに対しネガティブな声かけをするなど、意地悪な言動が見られたら、私だったら躊躇します。
園長先生が保護者に対して嫌な雰囲気で接する場合、保育士さんたちにも同じようなことをしている可能性が高い。そうすると保育士さんたちもフラストレーションがたまり、そのストレスが子どもに移ってしまうおそれがあります。
——もし違和感を覚えたらどうすればいいのでしょうか。
違和感が本当なのかを確認したいです。私だったら、遠回しに子どもに聞いてみます。違和感が確信に近くなったら「ちょっと悩んでいて、聞きたいことがあるんですけど」と担任の先生に聞いてみますね。虐待の証拠があるなら、先生に相談する前に児相や警察に行った方がいいと思います。虐待が明らかなのに先生に相談すると、隠蔽されるおそれがあるからです。
——『問題のある保育園』では、さいおさんが1年目のときにペアだったユガミ先生が、子どもをわざと泣かせて愛情を確かめるような言動をとっていたことが描かれていました。精神的な面で不適切な行動が行われている場合は何か対処できることはあると思いますか。
保護者にとっては、まず気づかない可能性が高いと思います。当時2歳児クラスを担当していましたが、2歳の子が「先生からこういうふうに言われて嫌だった」と親に説明できるかといったら難しいですよね。言葉がまだつたないですし、何をされたのか覚えていないこともあります。
子どもが「保育園に行くのがイヤだ」と言っても、保育園は楽しいけれども、親御さんと離れる瞬間が寂しくて「イヤだ」って言っている子もいるので、理由を見極めるのも難しいと感じます。ただ「○○先生が嫌」などピンポイントで嫌がったり、嫌がり方が尋常でなかったりする場合は、先生やお友達を疑ってもいいかもしれません。
もし不適切な言動を直接見かけた場合は、その先生に聞くか、園長先生に相談するか。とはいえ、保護者としては「子どもがもっと意地悪されるのでは」と不安もありますよね。ひどい場合は児童相談所に相談する方法もあります。
——前編では、1年目と2年目の先生がペアを組むなど、若手同士で仕事をすることも珍しくないというお話がありましたが、保育士の立場でペアの先輩の先生に違和感を持った場合はどういった対応がとれるでしょうか。
信頼できる周りの先生に相談するのがいいと思います。私も元ギャル先生など、話しやすい先生に休憩室で一緒になったときに小出しに相談していました。
部屋ごとに分かれている中の出来事なので、何かあっても、他の先生が把握するのが難しいんです。他の先生が見回りに来ることもほとんどなく、他のクラスのことは1日の報告や日誌で情報共有するくらいで、クラスの中で起きた出来事は、その中にいる先生から報告を受けないと知らないことも珍しくありません。子どもが泣いていても、あまりにもひどい泣き方だったら気になりますが、2歳児が泣いていること自体は珍しくないので、それだけで他のクラスの先生が何か異変に気づくのは難しいと思います。
新人に対してきつい先生もときどきいますが、優しい先生の方が多いと思います。「子どものために」って思って働いている先生がほとんどで、新人の面倒見もいいです。新人の場合、目の前で起きた出来事について、自分の違和感が正しいのか、そういうものなのか迷うと思うんです。違和感を持ったときに先輩に相談して「そういうものだよ」って言われれば、自分の感覚が間違っていたんだって答え合わせもできます。
自分の違和感が正しいことの確認ができれば、自分もアクションを取りやすいですし、味方を増やすことで自分の心の負担を減らすこともできます。相談したときに注意しないとまずい内容だと判断されれば、他の先生が注意してくれたり、園長先生に相談することを提案されたりするかもしれません。
ベビーシッターを選ぶ際のポイント
——続いてベビーシッター利用についてお伺いしますが、まずどういったところを確認すべきでしょうか。
シッターによって提供しているサービスが異なるため、自分の利用用途とシッターの提供サービスがマッチしているかを確認してみてください。料金形態もシッターによって異なるため、見積もりを出してもらうのもポイントです。
相性という面では、コミュニケーションを取る上で嫌味のない人であるかは重要だと思います。お子さんとの相性もですが、親御さんがシッターと合うかも大事なこと。何か気になることがあっても直接やり取りする必要があるため、気になることがあるときや、相談したいときに言いやすい人であるかもチェック項目にしてみてください。
——避けた方がいいと思うシッターの特徴はありますか。
シッターはお家というプライベート空間に入るため、誠実性が大事だと思います。依頼する前に面談をすることが一般的ですが、その際に気になることがあって相談しても、回答が適当など、雑な印象を受ける人は避けたほうがいいかもしれません。
また、上手く言語化ができなくても「なんだか嫌だな」と思った自分の違和感は大事にしてほしいです。とあるシッターさんに依頼する予定だった方がいたのですが、やたらと「すぐに行きたいのですが、いつ入れますか?」と聞いてきたそうです。違和感を覚えて断ったら、数か月後に子どもへの性加害で逮捕されていました。お子さんを守るためにも、何か引っかかりを感じたら、無視しないでいただいた方がいいと思います。
——依頼後に違和感を感じた場合についてはどうしたらいいでしょうか。
利用を中断するという選択肢を持っていてほしいです。保育園と異なり、すぐに利用をやめたり、他のシッターに替えたりしやすいため、違和感があるならば、断ることが大事。実害が明らかな場合は、マッチングサービスの運営会社やシッターの派遣会社に報告したり、暴力や虐待なら警察へ通報してください。
シッター利用に興味があるなら短時間からでも検討を
——『3時間だけママを代わります! 駆け出しベビーシッターの奮闘記』では、小学生のお子さんのシッターをする様子も描かれています。小学生の利用も多いのでしょうか。
小学校低学年までは利用者が多いですね。何年も続けてご依頼いただいていると、幼稚園に通っていた子が小学生になったということもあります。夜一人になってしまうのが心配なので一緒にいてほしいというご依頼や、塾のお迎えに行ったり宿題を見たりしています。
コロナの影響で学校でオンライン授業を実施していた頃は「仕事で一緒にいられないから隣でサポートしてほしい」という依頼もありました。
——シッター利用についてハードルを感じている人へメッセージをいただけますか。
他人を自宅に招くのは勇気が必要なことだと思います。シッターを利用してみたいのであれば、親御さんが在宅で、かつ短い時間だけ保育をお願いするといった、お試しから始めることもできると思うので、ご自分でハードルを下げて始めてみることをおすすめしたいです。
【プロフィール】
さいおなお
保育園で3年勤務後、独立してベビーシッターとして活動中。
『さいお先生は今日も子どもに翻弄される』(竹書房)、『3時間だけママを代わります! 駆け出しベビーシッターの奮闘記 』(オーバーラップ)
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