現在の科学の常識は「男性」の常識?「運動しているのに痩せない」と嘆く人は流行よりもデータを見よう

 現在の科学の常識は「男性」の常識?「運動しているのに痩せない」と嘆く人は流行よりもデータを見よう
mikiko
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2023-07-09

「朝イチで運動をすると痩せやすい」「痩せたいならスクワット」のように、あなたがどこかで聞いたことがあるダイエットやフィットネス情報は、もしかしたら男性を元にしたデータから分かったことかもしれません。

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現在の科学の常識は「男性」の常識!?

男と女で身体は異なるため、女性は『女性の身体にベストな方法』を選ぶ必要があります。言われてみれば当然とも思えることですが、実は、フィットネスの世界ではこの考え方が導入され始めたのは最近のこと。

フィットネスに関する研究がスポーツ科学を出発点に発展したこともあり、現在この世の中に出回っているフィットネス関連の知識には、健康な成人男性を対象にした研究によって明らかになったものが多くあります。多くの種目で男性の方が資金が集まりやすいため、研究が進みやすいのです、

男女を分けたアプローチが広まり始めたのはたった10年ほど前のことです。女性の身体が「運動や生活習慣にどんな反応を示すか」や「その反応にどう対応するのがベストか」については、まだまだ分からないことだらけなんです。

ただ、1つだけ確実に分かっていることがあります。

それは、女性の身体は『単に男性をひと回り小さくしたバージョン』ではないということ。

私たち女性は、骨格も、臓器も、ホルモンも、行動心理も、生活に求めるものも、社会で直面する問題も、男性とは異なります。自分にピッタリの健康習慣を見つけるためには、男性とは別の視点で考えなければなりません。

※男女の性差について語る時は、ジェンダーとしての女性・男性(性認識)と、生物学的な女性・男性(XXとXY)を分けて考えます。文化や社会をベースに記述する際はジェンダーとしての男女、科学や生物学をベースで記述する時はXX・XYとしての男女のことを指します。

プロでも男女分けずに指導をしていることもある

スポーツの分野では、先進国の多くでいち早くこの性差を指導に取り入れています。例えば、プロやセミプロレベルのチームでは、生理中に膝の靭帯ACLを断裂する女性選手が多発していることに注目し、生理周期に合わせた練習メニューを組む方法を選んでいます。

フィットネスの分野では性差の考慮は遅れていて、生理周期を把握しないまま筋トレしたり、ライフステージによって変化する身体を無視した全年齢向け食事・エクササイズが流行ったり、男女同じ内容のスタジオクラスが開催されたりしています。

フィットネス指導者でも、性差を把握せずに指導している人がたくさんいる状態。指導者志望の人たちが参考にする教科書だって、男性と女性のフィットネスを別々に扱っていないことも多々あります。

ソーシャルメディアでは、生理周期を考慮しない食事療法・エクササイズ動画が紹介されたり、男性を対象にした研究が女性向けに紹介されていたり、ひどい場合はネズミの研究から分かったことをそのまま人間の女性に当てはまるかのように紹介している、なんてことも。

一概には言い切れませんが、北米、ヨーロッパ、オセアニアなどのフィットネス先進国ではアジア諸国よりも少し認知が進んでいる傾向があり、一般人向けのフィットネスでも男女別のアプローチが浸透し始めています。日本ではまだまだ認知度が低く、妊娠中の運動を禁止する医師のアドバイス、妊娠したら退会させるジム、生理を隠して参加する部活動などがあちらこちらで見られます。北米やオセアニアでは、過去に妊娠した人をジムが退会・拒否したことでニュースになっています。妊娠中の運動が流産などにつながる危険性は科学的に根拠がなく、(種目・強度のガイドラインにしたがっている限り)妊婦の拒否は差別にあたるからです。

妊婦
北米やオセアニアでは、妊娠した人をジムが退会させたり拒否したことがニュースになっている。
photo by Adobe Stock

情報の扱い方

最新科学は常に変わっていきます。今は常識となっていることも、今後女性のデータがたくさん集まることで覆されてくることもあるでしょう。これまでの常識が女性にとっては効果的でなかったという可能性も十分ありうるのです。しかし、そうやって常識が書き換えられるには、数年から数十年かかります。

今「頑張ってるのに結果が出ない」「努力が空回りしてる」「何やっても効果が出ない・続かない」と迷子になっている人は、流行に合わせて『誰かがまとめてくれた情報』から学ぶのではなく、自分で『情報源となっている研究』に目を通したり、『男女の差やデータ元まで明記している情報』を参考にするようにしましょう。

そこまで掘って情報収集をしたいわけではない場合でも、「この情報は男性のデータを元にして得られた知見ではないか?」「そのまま自分に当てはめればいい答えではなくて、参考として扱いながら自分の身体で実験・観察してみよう」という視点でインターネットと向き合い、自分の身体にピッタリの方法を見つけていきましょう。

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パーソナルトレーナー|自身の失敗経験を元に個人差や体質を重視した『mikiko式フィットネス論』を提唱|身体と人生観が変わるフィットネス哲学で、一生ブレないための視野と学びを発信しています|流行を根拠と本質で斬る人| 筑波大学健康増進学修士|NZベストトレーナー入賞



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