40代の壁を乗り越えるには?アフリカ在住ライターに聞いた、40代から"自分の人生"を始める方法

 40代の壁を乗り越えるには?アフリカ在住ライターに聞いた、40代から"自分の人生"を始める方法
写真提供: 堀江知子

40代になると「体力が衰えてきた」「これからの人生どのようにして生きていこう」など、モヤモヤを感じる人が増えるということをご存知ですか?これを『40代の壁』とも呼びます。人生100年時代と言われる現代では、人生が長い分悩みや壁は多くなりがち。特に中堅の40代には壁が立ちはだかることが多いようです。今回は『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法』の著者でアフリカ在住ライターの堀江知子さんに、40代の壁についてお話をお伺いしました。

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40代の壁の乗り越え方

——『40代の壁』という言葉を私は知子さんの著書ではじめて知りました。これをテーマに本を書こうと思ったのはどうしてですか?

知子さん:40代前半の友だちと話をしていると、同じような悩みを耳にする機会が増えてきたんです。例えば「体の衰えを感じる」「時間がなさすぎる」「仕事をリタイアしてからどうしよう」「仕事以外のこともやりたいよね」などよく聞きますね。中でも驚きだったのが、普段あまり弱音を吐かないような人でも同じようなことを言っているので、40代になるとどんな人にも壁がはだかりやすいのかもしれないと思いました。

——知子さんが、40代の壁があるということに気づいたきっかけはありましたか?

知子さん:43歳でアフリカに来る前は、ワシントンDCに15年ほどいたんです。その時には、日本の会社で働いていたので残業も多かったですし、すごく忙しかったんですよね。仕事をしながら新生児の子育てもしていました。その状況は、日本にいる方々にも多く共通するところがあるんじゃないかなと思っているんですけれど「忙しすぎてこれではいけない」というモヤモヤには何となく気づいていました。けれど、それが何なのか考える余裕もなく毎日を過ごしていたんですよね。今思えば40代の壁だったんだろうなと思います。仕事をやめてアフリカに来て時間ができた時に「これからどうしよう」と思った時に、壁があることに気づきました。

写真提供: 堀江知子
写真提供: 堀江知子

——本の中では、「時間がない」「体力の衰え」「人生100年時代への不安」という3つの壁がトップ3として挙げられていますが、知子さんご自身はこれらの壁を乗り越えられましたか?

知子さん:「時間がない」というのはもともと私が忙しくしているのが好きなタイプなので、「あれもやりたい」「これもやりたい」といろいろなことにチャレンジしすぎて、今も忙しすぎる感じはあります。もう少しゆっくり生きていきたいというのは課題として持っていますね。けれど「体力の衰え」「人生100年時代への不安」というのは、色々な取り組みをしてかなり解決されました。

——具体的にどういったことをしましたか?

知子さん:まず最初にしたのが、『自己分析』。20代の頃、就職活動をしていた時にしていた自己分析を、20年ぶりにやりました。それは、40代になっても自分のことが分かっていないと思ったからです。あまりにも日々忙しくしすぎて、「何がしたいのか」「何がほしいのか」「何をしている時に、自分は幸せを感じるのか」とか分かっていないんです。

——確かに、忙しい毎日を過ごしていると「自分が何者なのか」というのは見失いがちですよね。自分のことをよく知れば、どう生きていきたいか、また壁に対して何が足りないのか、どんなアクションをすればいいのかなども見えてきやすそうです。

知子さん:そうですね。私が壁を乗り越えるため取り組んだことで、皆さんにおすすめしたいことが3つあります。1つ目は『朝の1時間を自分だけのために使う』、2つ目は『新しいコミュニティーに入る』、そして3つ目が『SNSをはじめる』です。

——『朝の1時間を自分だけのために使う』について教えて下さい。

知子さん: 私は、朝は家族が起きてくる時間の1時間前に起きるようにします。子供や夫が起きてきたら、自分のために使う時間が一切なくなるという方は多いのではないでしょうか。

私の場合は、10分ほど瞑想して、ジャーナリングをします。ジャーナリングは、頭の中に浮かんだことを書いたり、感謝していることを10個書きます。その後は本を読みます。やることは、それぞれでルールを設ければいいのではないかと思います。人によってはヨガをやってもいいですよね。朝が弱い人は難しく感じるかもしれませんが、40代の人って、朝起きたら会社や家族のための1日が始まるので、朝の時間を自分の時間に当てるようにトライしてみるのはいいのかなと思います。

——時間がないなら作るしかないですもんね。朝は集中力も高いと言われていますし、良いですね。2つ目の『新しいコミュニティーに入る』、これはどういったことでしょうか。

知子さん:何も意識せずに暮らしていると、会社での時間や、家族やママ友と過ごす時間が結構な割合を占め、それだけで時間が過ぎてしまうことが多いと思います。もちろん、それらの時間も居心地がよくて楽しいんですけど、一方で「自分が本当に何が好きなのか」が分からないまま日々が過ぎてしまうことも。今だとオンラインコミュニティも多いですし、趣味のグループに入ってみたり、地元のイベントに参加してみたり、普段の自分がいるコミュニティとは違う場所に勇気を出して入ってみると違うのではないかなと思います。

——確かにサードプレイスを作ると、世界は広がりますよね。趣味ややりたいことが広がるだけではなく、新しい価値観に触れたりもできますし、何よりも気晴らしにもなりますよね。3つ目の『SNSをはじめる』というのは?

知子さん:SNSもまた、同じ興味を持つ人と繋がれたり出会えたりして、新しい世界が広がります。会社員の方は、実名でSNSをやることに抵抗がある方もいるかもしれませんが、匿名やニックネームで始められるSNSもありますし、ちょっと勇気を持ってはじめてみるのはいいんじゃないかな。私はせっかくアフリカにいるので、アフリカのことを情報発信したいと思ってツイッターをはじめました。何を発信すればいいか分からない人は、その日にあったことや、読んだ本の感想を書くのも良いと思いますよ。

——40代の壁にぶち当たって、挫折感を味わう人もいるのではないかと思います。そういった方にアドバイスとかありますか?

知子さん: 私の場合は、40代の壁にぶち当たった時に、異国の地にいたことがすごく助けになりました。何か壁にぶち当たって、自分の世界だけに閉じこもってしまう方って多いと思います。なので環境を変えたり、自分と違う境遇の人の話を見聞きするのはいいのではないでしょうか。私の場合は、サファリに行くことが多いんですが(笑)、例えばアフリカ人のドキュメンタリーを見たりとか、日本の田舎の方に行ってみるとか、日常から離れると、落胆している時には得られない考えや気付きがあると思います。

——サファリはすごいですね(笑)

知子さん:そうですね。野生の象やキリンが目の前にいて、青空を見ていると「生きているだけで幸せだな」と思えます。視界が広がるというか、自分の悩みの小ささを実感します。

やりたいことの見つけかた

——「子育てがひと段落したので何かに挑戦したい」「今のままじゃだめだ」などという人は多いと思うんですよね。けれど、実際に何をやればいいか分からない人も少なくありませんが、知子さんは実際やりたいことをどう見つけていきましたか?

知子さん: 私も仕事を辞めてアフリカに来て、自由になって、子育て以外にやることがないってなった時点で、同じ悩みがありました。その時に私がしたのは、『死ぬまでにやりたいこと100リスト』を書くこと。お金と時間の制限を考えずに、やりたいことを100個リストアップするというシンプルなものです。

——100個リストアップって結構大変そうですね。

知子さん: 実はアメリカにいた時に1度やったんですけど、40個くらいで止まっていて。なので、アフリカにきてから新たに書き出した時は、頭を絞り出す感じで2時間くらいかけました。無理だと思っている時点で本当はやりたいことなんだなと気付いたり、無意識の中で興味のあることや好きなものが見えてきたり、100も出すと本当に色々なものが出てきます。サーフィンを始めたり合気道を始めたり、あとは大学時代に挫折したテニスもはじめました。実は、本を出すということも100リストに入っていました。その時点では「本当に出せるかな~」なんて半信半疑でしたけど、書くだけでも次のステップが見えてくると思います。私は100リストを実際に書き出したことで、実行できたこともあります。

——逆に、やることだらけで時間が足りなくなりそうですね(笑)

知子さん: それは良い点をついていますね。時間がないっていうのは、永遠の課題ですね。けど、私はやりたいことがないよりは、やりたいことがたくさんある方が、幸せかなと思います。日々のルーティンをこなして歳をとるよりは、あれもやってみたいなっていう気持ちを持っている方が人生全体的に楽しくなると思っています。

——確かにやってみたいことを紙に書いて視覚化すると、どうやって達成すればいいかなと考えるようにもなりますね。

知子さん:そうですね。よく言われることですけど、頭の中で思っていることを手で書くのはパワーが必要なことだと私も思います。

みんなが生きやすい社会にするためにできること

—— ワシントンDCでお仕事をバリバリやられていて、ご主人のお仕事の都合でアフリカに行くとなった時に、すぐに「ついていく」となりましたか?それとも「このままDCに残って仕事を続けたい」と思いましたか?

知子さん:1分くらい迷いました(笑)けれど、すぐにタンザニア行きたいと思いましたね。もちろん仕事が大好きだったんですけど、仕事と子育ての両立がきちんとできてないという認識ができていて、このままの状態ではいけないなと薄々感じていたんです。夫も協力的ではあったので、子供をおいて1週間の出張に行ったりするくらいだったんです。けど、タイミング的に一度リセットしようというメッセージなのかなと私は感じて、それもあってすぐに決断できましたね。

写真提供: 堀江知子
写真提供: 堀江知子

——女性の中にはキャリアを諦めるケースも多くあると聞きます。家庭と仕事のバランスってすごく難しいですし、特に40代前後で子供がいる方などは、家庭と仕事で迷う方が多い気がします。それもまた40代の壁なのかなと思うんですが、知子さんのように、すんなり自分で納得できている状態で前に進めることができるのは理想ですね。

知子さん:そうですね。けど、私の場合はアフリカに行くことが1年前に分かっていました。だから、1年間の準備期間がしっかりとあり、それは大きかったと思います。その1年間は、会社員という言われたことをやればいいという立場から、これからは自分でどんどんやっていかないといけない「フリーランス」という立場になることへのマインドセットを作りました。不安になることもありましたが、その期間にコーチングを受けたり。朝の1時間の習慣もすでに始めていたので、その時間を使ってアフリカに来た時に後悔しないための準備をしていましたね。

——コーチングは、アメリカでは一般的なんですか?よく耳にします。

知子さん:そうですね。私は日本の会社だったのでなかったのですが、アメリカの会社の中には企業の専属コーチがいて、社員が悩みや話したいことがあれば、コーチに相談できるという環境が整っているところも多くあります。

——保健室の先生みたいですね。

知子さん:そうですね。結構私の周りでもコーチに相談している人は多かったです。

——日本でもそういったプロに気軽に悩みを相談できたらいいですね。海外生活が15年以上の知子さんの目から見て、コーチングのような環境やサービスで、日本にもあったらいいなと思うものはありますか?

知子さん:アフリカに来て、すごくありがたいなと思ったのがお手伝いさんの存在です。時間がないということを解消しようとした時、「自分の好きなことだけをやればいい」「(家事は)全部やらなくてもいい」とはよく言われますけど、そうは言っても責任ある40代の母親としては、家事も育児も一生懸命頑張っちゃうんですよね。

お手伝いさんを雇うのって、日本人としてちょっと抵抗がある人もいると思うんです。私もそうでした。けれど、お手伝いさんをお願いするようになったら、時間ができて、自分のやりたいことや、いままで犠牲にしていた子どもとの時間ももっととれるようになりました。

写真提供: 堀江知子
写真提供: 堀江知子

——私の住んでいるシンガポールもお手伝いさん文化は定着しています。共働きが基本ですし女性の管理職もたくさんいる国なので、お手伝いさんがいないと回らないんですよね。住み込みが基本なので朝から晩まで家族の一員として家庭を支えてくれる力強い存在ですね。

知子さん: 仕事を辞めて、アフリカに来た時は1日の大半が家事で終わっていて、仕事をしていないのに忙しかったんですけど、日本の方たちの中にはそういう方が多いんじゃないかな。だから、外注するなり、他の人にお願いできるような環境が整ったら、もっと生きやすくなると思いますね。

インタビュー協力: 堀江知子

写真提供: 堀江知子
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タンザニア在住ライター。アメリカ大学院留学やテレビ局勤務を得て、夫の海外赴任に伴い2022年よりタンザニア在住。現在は、noteやWebメディア等で、アフリカでの生活について発信。著書『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法

Twitter: @tmk_255

note: ほりとも@タンザニア在住ライター

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AUTHOR

桑子麻衣子

桑子麻衣子

1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。



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