転職や異動…環境の変化によるストレスや不安に巻き込まれずに対処するには?臨床心理士のアドバイス

 転職や異動…環境の変化によるストレスや不安に巻き込まれずに対処するには?臨床心理士のアドバイス
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石上友梨
石上友梨
2023-04-08

春は仕事が変わったり、部署や係を移動したりと、何かと変化がある時期です。職場は変わらなくても昇進して立場が変わる、産休や育休明けで久しぶりに復帰するという場合もあるでしょう。このような様々な変化があるとき、私たちは強い不安を感じることがあります。今回は転職や異動に伴う不安への対処法についてご紹介します。

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転職や異動、昇進など、様々な変化が起きる時、それがポジティブな変化であっても、ネガティブな変化であっても私たちは同様にストレスに感じます。環境の変化は全てストレスになります。このようなストレス下では、普段は流せるような不安感でも大きくなってしまうことがあります。

Aさんの事例から考えてみましょう。

Aさんは、春から部署が変わることになりました。同じ建物でフロアが変わるだけなので大きな変化はないはずですが、就職して初めての異動なため不安を感じています。新しい部署では希望の仕事ができる予定で楽しみもある一方で、上司が厳しいという噂を聞き不安が大きくなりました。4月の異動が近づくにつれ、夜の眠る前や休日に「大丈夫かな」「うまくやっていけるかな」とぐるぐる考え込む時間が増え、寝つきに時間がかかったり、何度も目が覚めたり、うまく眠れない日が増えていきました。新しい職場に異動後は、第一印象を良くしようと気合を入れて早めに出社していたものの、連日の寝不足のせいか大きなミスをしてしまいました。

Aさんは、このままうまくやっていけるのでしょうか。今回は、不安に巻き込まれずに、どのように対処をしていくかご紹介します。

不安
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不安を分ける

私たちは「新しい職場でうまくやっていけるかな」「どんな雰囲気なんだろう」と新しい環境に対してあれこれ不安に感じますが、不安には解消できる不安と解消できない不安があります。解消できる不安とは、「分からない」を「分かった」に変えられるものです。例えば、「新しい職場でランチはどうしよう」「朝の電車は混んでるのかな」「どんな雰囲気なんだろう」といったことです。これらは、「周辺のレストランやコンビニを調べる」「同じ時間帯の電車に乗ってみる」「見学に行ったり、知りたいがいれば聞いてみる」等、「分からない」を解消することができます。しかし、解消できない不安とは、「うまくやっていけるか」「ミスをしないか」等、実際にやってみないと分からないことです。まずは、自分が不安に感じていることが、解消できる不安なのか、解消できない不安なのか分けてみましょう。分ける際は、頭の中で考えずに紙に書き出して分けることがオススメです。

考える時間を減らす

解消できる不安に対しては、「分からない」を「分かった」に変えましょう。そして、解消できない不安は、いくら考えても答えが出ないため、考える時間を減らします。不安なことについて考えれば考えるほど、不安が強くなり、不安を感じる時間が長くなってしまうためです。不安について考えていることに気づいたら、考えるのをやめて家事や趣味など別のことをやりましょう。また、これをやっていることはぐるぐると考えなくても済むという作業や趣味を見つけましょう。例えば、音楽を聴く、散歩に行く、映画や動画を見る、料理をする、掃除をする、ヨガをする等、何でもいいです。自分に合った方法を探しましょう。

リラクゼーションの練習をする

不安を感じやすいことに気づいたら、日頃からリラクゼーション等、気持ちを落ち着かせる練習をしましょう。「楽しい」と感じる趣味も大切ですが、リラクゼーションのためには、「気持ちが落ち着く」「安心する」「ゆったりする」「リラックスする」といった気持ちを味わえる方法がオススメです。例えば、瞑想、呼吸法、ゆったりとしたヨガ、猫と昼寝する等、何がいいか探してみましょう。

今回は簡単な呼吸法を紹介します。なるべく、鼻呼吸、お腹を膨らます腹式呼吸でおこないます。難しい場合は、鼻で吸って、口から吐き出す等、出来る範囲で構いません。まずは息をふーっと吹き出し、鼻からゆっくりと息を吸い込みます。息をゆっくりと吐き出し、鼻からゆっくりと吸い込みます。その際に、頭の中で四角形を描いてみましょう。吸って四角形の縦の線、吐いて横の線、吸って縦の線、吐いて横の線で一周です。息の長さは吐く息を長くするか、同じくらいにしましょう。良かったら試してくださいね。

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石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



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