恥ずかしさや怒り…【嫌な記憶】を思い出して苦しい時どうすれば?臨床心理士が伝えたい対処法
嫌な記憶を思い出し、そのまま記憶に飲まれてぐるぐるとしてしまうことはありませんか?
辛い気持ちになったり、恥ずかしさや怒りや不安など、様々な感情に飲み込まれたりすることはありませんか?今回は嫌な記憶がぐるぐるして抜け出せない時の対処法についてご紹介します。
ネガティビティバイアスの影響
私たちはネガティビティバイアスを持っていることが多いです。ネガティビティバイアスとは、ポジティブな情報よりもネガティブな情報に注意がいきやすく、ネガティブなことの方が記憶にも残りやすい性質のことを言います。例えば、過去に幸せだった思い出、楽しかった思い出よりも、悲しかった思い出、悔しかった思い出の方が覚えていることはありませんか?
ネガティビティバイアスは、大昔に人が危険と背中合わせで生きていた時代の名残だと言えます。例えば、忍び寄る獣の気配、過去に危険だった場所、そんなネガティブな情報に気付きやすい人、覚えている人の方が生存確率が上がります。大昔は、ネガティビティバイアスを持つことが有利な世界だったのです。
しかし、現在は大昔とは状況が異なります。ネガティビティバイアスを強く持つことで、必要以上に嫌な気持ちになったり、いつまでも自分に自信が持てなかったりするのなら、対策を取る必要があるかもしれませんね。
過去の思い出しを止める方法
「ストップ」と言う
嫌なことを思い出したら、声に出したり、心の中で、「ストップ」と言いましょう。ストップと言った瞬間、思考や記憶が一瞬でも止まるはずです。「ストップ」を何回か繰り返してもいいです。その止まった瞬間に別のことに注意を切り替えたり、家事など日常の動作に切り替えましょう。初めはうまくできなくても練習をするうちに段々とコツを掴めるようになります。
スクエア呼吸法をする
スクエア呼吸法はボックスブリージング等と呼ばれる、自律神経を調整してストレスを緩和する呼吸法です。やり方は、4秒かけて息を吸い込み、4秒間呼吸を優しく止めて、4秒かけて息を吐き出し、4秒間呼吸を優しく止めます。頭の中で4秒ずつカウントしながら、正方形を描くイメージで、気持ちが落ち着くまで2〜3分続けてみましょう。
意識して違う記憶にアクセスする
ネガティビティバイアスのため嫌な記憶ばかり思い出すかもしれませんが、人生の中で少なからず肯定的な記憶やイメージがあるかと思います。その肯定的な記憶を思い出し、その記憶をより強くしていきましょう。下記のような記憶やイメージがあるか書き出してみます。
肯定的な記憶を思い出す
何かを達成した、勇気を出した、やりがいを感じた、ほめられた、愛された、気持ちが落ち着いた等、自己肯定感や自己効力感が高まった肯定的な体験を思い出します。日常の中の些細なこと、子供の時のこと、大人になってからのこと、あなたにとって肯定的ならどのようなことでもいいです。
肯定的なイメージを持つ
モデルとなるような尊敬する人物、勇気をくれる、肯定的な気持ちにさせてくれる映画やアニメの主人公。もしくは、海、草原、神木等、安心感や畏怖の念を感じるような大自然、芸術作品など、自分にとっての肯定的なイメージを書き出します。
肯定的な記憶やイメージをマインドフルに感じる
肯定的な記憶やイメージを体の感覚や五感で感じるられるようにありありと思い浮かべます。自分の気持ちがどのように変化したか気づきを向け、どのようなことを感じても、否定したりせずにありのまま感じます。もし、自分にとって効果的だと感じたら、その体験やイメージにタイトルのような名前をつけて、いつでも思い出せるようにしておきましょう。自分自身を抱きしめるセルフハグやクッション、ぬいぐるみを抱きながらやってもいいです。
うまくできない時は、まだ慣れていないだけかもしれません。時間や気持ちに余裕がある時に、また練習をしてみましょう。ネガティブな記憶に戻ってしまった時は、気持ちが落ち着くまでゆっくりと深呼吸を繰り返したり、別の気持ちが落ち着く別の方法を試してみましょう。
もし心療内科や精神科に通っている場合は、病状に影響する可能性があります。必ず、一人で取り組まずに、専門家と一緒に取り組んでくださいね。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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