「怒られた」「SNSで絡まれた」でも引きずらない!切り替え上手な人の考え方は【臨床心理士が解説】
「仕事でミスをして上司に叱られた」「SNSで不快なコメントをつけられた」そんなネガティブな出来事は誰にでも起こるもの。でも、どんよりと暗い気持ちを引きずる人もいれば、気持ちをさっと切り替える人もいます。両者の違いは「考え方」にあります。そこで今回は、気持ちの切り替えが上手な人の思考法をご紹介します。
ネガティブな気持ちに関わる考え方
ポジティブ心理学の創始者マーティン・セリグマン博士は、ネガティブな出来事に対する「時間」と「空間」の捉え方が、その人の気持ちを左右すると考えました。
【時間】「永続的」と「一時的」
ネガティブな出来事が「いつ」起きると捉えているかが気持ちを大きく左右します。
「私はいつもこんな目に遭う!」「私はずっと損ばかりするんだ!」というように、ネガティブな出来事をいつでも起こる「永続的なもの」と考えると、まだ見ぬ未来にも希望が持てず、ネガティブな気持ちから抜け出せなくなります。
一方、「今日は酷い目に遭った」「今回は損しちゃった」と、「一時的なもの」だと捉える人は、ポジティブな気持ちを取り戻しやすくなります。
【空間】「普遍的」と「特定的」
ネガティブな出来事が「どこで」起きると考えているかも大事です。
「私はどこでも嫌な思いをする」「私は誰からも否定される」など、ネガティブな出来事を「普遍的なもの」と捉えると、もはや逃げ場がありません。ネガティブな気持ちから逃れられないのも当然でしょう。
しかし、「私はこの店では嫌な思いをした」「私は■■さんには否定された」と、あくまで「特定的なもの」と捉えられると、ネガティブな出来事に出会ってしまっても、自分に合う環境を探せば良いので、気持ちを切り替えやすくなります。
ネガティブな気持ちを切り替える思考法
ここまで説明してきたように、ネガティブな気持ちを引きずるのは、ネガティブな出来事が『いつでも(永続的)』『どこでも(普遍的)』に起きると確信しているから。
この確信に挑戦し、気持ちを切り替える方法をご紹介します。
本当に『いつでも・どこでも』か確かめる
まず、試したいのが「本当にネガティブな出来事は『いつでも・どこでも』起こるのか確かめる」こと。
「ネガティブな出来事は『いつでも・どこでも』起こる」と信じていると、何も起きていなくても「いまにネガティブなことが起こるに違いない」と常に警戒しなければなりません。
そして、小さな物音がすればビクッと恐怖し、「やっぱり『いつでも・どこでも』嫌なことが起こる!」と確信を強めます。
『いつでも・どこでも』を信じる限り、『いつでも・どこでも』ネガティブなことが起こるのです。
ネガティブな気持ちを手離すには、『いつでも・どこでも』が本当なのかをしっかり確かめること。
・ネガティブな出来事が起きたのはいつ?
・ネガティブな気持ちを感じたのはどこで?
これらを自分の心に問いかけ、具体的にしていくうちに、「『いつでも』と思っていたけど、意外と大丈夫なときもある」「『どこでも』と思っていたけど、あの人は安心できる」など、例外が見つかるはずです。
本当にネガティブな出来事か確かめる
『いつでも・どこでも』に挑戦する別の考え方として、「心のカメラの撮影方法を変える」というものがあります。
私たちは自分の心のカメラが映す世界を「真実」だと思う傾向があります。
でも、実際には人の数だけ真実があります。下のイラストを見てください。
これは「It’s Media」と呼ばれる風刺画です。 どこにカメラを向けて切り取るかによって、私たちの受け止め方が大きく変わることを示しています。
ネガティブだと思っていた出来事も、心のカメラの向きをほんの少し変えてみると、別の真実を映し出すかもしれません。
例えば、「せっかくの休日をダラダラ過ごしてしまった。自分はやっぱりダメ人間だ」と考え、落ち込んでしまったときを想像してください。
心のカメラの向きを変えて、別の真実を見つけてみましょう。
・疲れが解消できて良かった!
・ダラダラこそが究極の贅沢。
・低気圧の影響かも。
・平日は働いているからダメ人間ではない。
・眺めていたスマホから新たな知識が得られた。
できるだけたくさん考えられると、ネガティブな思考にとらわれにくくなります。
もし、あまり出てこないようなら、「別の人ならどう考える?」「あのキャラクターはどう言うかな?」といった第三者の視点から考えてみてください。
参考・引用文献
*1 マーティン・セリグマン著・小林裕子訳(2021)ポジティブ心理学が教えてくれる「ほんものの幸せ」の見つけ方 パンローリング
*2 カリキュラムデザインの理論と方法「It's Media 2012.6 facebookのタイムラインに流れてきた画像とオリジナル画像」
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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