メンタルが強い人が大切にしている3つの習慣【臨床心理士が解説】
「メンタルが強い」と聞くと、どんなストレスがかかっても傷ひとつつかない、いわゆる「鋼のメンタル」を思い浮かべるかもしれません。しかし、本当に強いメンタルとは、ストレスで大きく揺れ動いても再び安定を取り戻せる、柔らかくしなやかな状態を指します。今回はストレスに強いメンタルを作る習慣をお話しします。
「身体」を整える
忙しい毎日を過ごすなかで、私たちは身体の声を無視しがち。ときには身体の必死の訴えを栄養ドリンクやアルコールで抑え込んでいる人もいるかもしれません。
しかし、私たちのメンタルは身体によって大きな影響を受けます。たとえば、空腹は「イライラ」を生みます。腹痛は「不安」や「絶望」を感じさせるかもしれません。
1日のうち決まった時間、自分の身体の声に寄り添ってみましょう。まずは声を聞いてあげるだけでOK。もし、「痛い」「つらい」「寒い」などの訴えで解消できそうなものがあれば、解消してあげるとなお良いでしょう。
「今」を生きる
メンタルを強くするには「今」を生きることも大事。そのために使える「マインドフルネス」と「ほめ日記」をご紹介します。
マインドフルネス
「あんなことしなければ良かった」と過去を後悔したり、「将来〇〇が起きたらどうしよう」と未来に不安を感じたりする人は少なくありません。
しかし、どれだけ過去や未来のことを一生懸命に考えても、私たちにはどうすることもできません。むしろ、「今」の自分は安全な場所にいるにも関わらず、ネガティブな感情を味わう機会を増やし、メンタルにダメージを与えるだけになってしまいます。
過去や未来に捉われそうになったとき、「今」注意を戻す方法が「マインドフルネス」です。
有名なのは「呼吸」のマインドフルネス。呼吸をするときのお腹の動きに注意を向けます。途中で雑念が浮かんでも、「あ、雑念のなかにいた!」と気づいたら、「今」のお腹の動きに注意を戻します。
これを繰り返すうちに「今」に戻る力が高まり、ネガティブな感情へのとらわれが軽減します。*1
ほめ日記
私たちはネガティブな情報には注目し、ポジティブな情報は無視する習性を持っています。そのため、ネガティブな情報はどんどん集まりますが、ポジティブな情報は忘れ去られていきます。
「私は何もできない」と嘆く人に詳しく話を聴くと、意外に色々なことができているケースが少なくありません。「できた」というポジティブな情報が頭から抜け落ち、「できなかった」というネガティブ情報ばかりが記憶に残っているだけなのです。
「ポジティブなものがある/あった」と気づき、記録するのが「ほめ日記」です。
これはその名のとおり、自分をほめる日記です。「できたこと」や「がんばったこと」を記録します。「ゴミ出しができた」「ちゃんと野菜を食べた」など、ささやかなことで構わないので、できたことをどんどん書いていきましょう。
ほめ日記によって、「自分も頑張っている」と思えるようになると、苦しいことがあっても「自分なら乗り越えられる」と感じ、ストレスをうまく跳ね返すメンタルを作れます。*2
「感情」と共存する
小さい頃に「泣くな!」とか「そんなことで怒らないの!」と叱られた経験のある人は多いのではないでしょうか。そのため、私たちは感情をコントロールできると思い込んでいる傾向があります。
しかし、感情はコントロールできません。もし、銃を持った強盗から「手をあげろ!」と言われれば従うことができるでしょう。しかし、「怖がるな!」と言われても、怖がらずにはいられません。命がけの場面でも感情はコントロールできないのです。
感情はコントロールしようとするよりも、共存を目指すことが大切です。
ただ、どんな相手かわからないのに、一緒にいるのは怖いですよね。だから、自分の感情が動いたら、じっくり観察しましょう。「いつ・どんな時に反応するのか」がわかれば、対応しやすくなります。
いきなり「不安」が生まれると困ってしまいますが、「今日は低気圧だから不安を感じているな」とパターンが掴めていれば、「ゆっくりお風呂に入って、リラックスしよう」など、うまい付き合い方も見つけられるでしょう。
多少のストレスでネガティブな感情を抱いても、立ち直りやすくなるのです。*3
参考文献
*1 熊野宏昭(2016)実践!マインドフルネス 今この瞬間に気づき青空を感じるレッスン サンガ
*2 下田真由美・平井正三郎(2017)ほめ日記が主観的幸福感などの ウェルビーイングに与える影響 東海学院大学紀要11 pp73-81.
*3 ラス・ハリス・武藤崇(監訳)(2012)よくわかるACT 明日から使えるACT入門 星和書房
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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