会議やプレゼン…人前で話すときに緊張しないようになる「3つの思考」とは【臨床心理士が解説】
会議やプレゼンなど人前で話すことに緊張する人は珍しくありません。緊張で声が震えたり、頭が真っ白になったりした経験のある人もいるのではないでしょうか。今回は会議やプレゼンでの緊張を和らげる思考法をご紹介します。
「緊張」の役割
そもそもどうして緊張は起こるのでしょうか。
緊張は注意力を高めて安全を確保する
緊張は注意力を高めてくれます。
たとえば、ゆっくり動き出すジェットコースターに乗っている自分を想像してください。「いつ急降下するんだろう」と緊張し、ほんのわずかな動きや音の変化も逃すまいと普段の何倍も注意しているはずです。
いつ下り始めても大丈夫なように安全バーを握りしめ、全身に力を入れて加速に備えます。心と身体の準備ができて初めて、ジェットコースターを楽しめるのです。予告なく急降下すればトラウマになったり、首を傷めたりするでしょう。
緊張はリスクに備え、安全に活動できるようサポートする役割を担っています。会議やプレゼンで緊張するのも、リスクに備えて、安全を確保しようとした結果なのです。
緊張を避けるほど次は大きな緊張がやってくる!
緊張にメリットがあるとはいえ、「できれば避けたい!」と思う人もいるかもしれません。
実は私たちが完全に緊張しない方法が1つだけあります。それは「100%安全な活動以外はしないこと」です。会議にもプレゼンにも参加しなければ緊張はしませんね。
でも、現実的に考えると不可能です。もし、会議を休めたとしても、安心できるのは一時だけ。また、次の会議がやってきます。そのときには「前の会議は休んでしまった」という苦手意識や負い目まで加わって、さらに緊張は高まるでしょう。
緊張しても避けずにチャレンジすることが、緊張を和らげる1番のコツなのです。
会議やプレゼンで「緊張」と上手に付き合う思考法
緊張を避けなくても、上手に付き合う方法はあります。ここからは会議やプレゼンで緊張と上手に付き合う3つの思考法をご紹介します。
緊張を「ワクワク」にリフレーミングする
鼓動が早く、呼吸が浅い。
そんな状態を「緊張」や「不安」だと思うと、ネガティブな気持ちになります。鼓動が早くなるほど「心臓が痛くて苦しい」と弱気になるかもしれません。
しかし、「ワクワク」だと思えばどうでしょうか。鼓動が早くなっても「楽しくなってきた!」とポジティブに受け止められるかもしれません。
私たちは目の前の状況や出来事を自分なりのとらえ方「フレーム」で受け止めます。ネガティブなフレームで見るクセがあると、どんなこともネガティブに見えて苦しくなります。
一方、ポジティブなフレームを使えると、同じ出来事もポジティブに受け止められます。
自分を苦しめるフレームを外し、別のフレームを取り入れることを「リフレーミング」といいます。リフレーミングはポジティブ感情を高めることが明らかになっています。*1
緊張も「ワクワク」や「楽しみ」などにリフレーミングしてみましょう。
「みんなカボチャと思え」も意外と効果的
大勢の前で発表するときに「みんなカボチャと思え」とアドバイスされたことはありませんか?このアドバイスもあながち間違いではありません。
私たちは緊張すると、つい自分自身に注目しがちです。強張った身体・浅い呼吸・「失敗したらどうしよう」という心の声……「自分は緊張している」という情報ばかり集めてしまい、ますます緊張が高まる悪循環に陥ります。
そんなときに、目の前の観客を「いろんなカボチャがあるなぁ」とじっくり観察できれば、緊張を和らげることができます。
もちろんカボチャだと思えなくても、自分の周囲を観察できればOK。「窓がある…カーテンがある…子どもの声がする…」など、自分の外側に意識を向けましょう。
緊張は時間が経てば慣れることを知っておく
「緊張は時間が経てば慣れる」という事実も頭に入れておきましょう。私たちはずっと緊張し続けることはできません。だんだん緊張は緩んできます。
2011年に行われた研究では、スピーチ開始の直前・直後の心拍数は、スピーチ開始から約20分経過した時の心拍数より高いことが明らかになっています。
会議やプレゼンは始まる瞬間がもっとも緊張し、いざ始まってしまえば、どんどん慣れていくのです。
「今は緊張するけれど、そのうち慣れる」という見通しを持てていれば、安心しやすくなるでしょう。
参考文献
*1 本多麻子(2011)スピーチ場面における緊張、不安および心拍数の時系列変化の関連 白鷗大学教育学部論集5(1) pp.183−195.
*2 山本眞利子(2008)カウンセラーとクライエントにおけるリフレイミングが感情効果に及ぼす実験的研究 久留米大学心理学研究 7 pp29-34.
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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