「希望の進路に進めなかった」挫折体験から抜け出す力”レジリエンス”を高めるには?臨床心理士が解説
春は進学や就職の季節です。「希望の学校に入れなかった」「希望の就職先に入れなかった」という場合があるかと思います。そんな挫折体験から抜け出す力のことをレジリエンスと言います。今回は希望の進路に進めなかった時など、レジリエンスを高める方法についてお伝えします。
希望の進路に進めなかったAさんのお話です。
Aさんは受験で希望の学校には入れませんでした。模試の判定からも合格は確実だったため、まさか自分が落ちるとは思いませんでした。結果的に第二希望の学校に通うことになりましたが、入学当初は「なぜ自分はここにいるのだろう」と自分の居場所は他の場所のように感じたり、希望の学校に入学した友人に対して羨ましいと感じたりしました。
そんな思いがあってか、心から学校生活を楽しむことはできませんでした。入学後しばらくしてから、Aさんは自分がコレだと思える趣味を見つけました。趣味を通じた友人が出来、より趣味を深めることになりました。その頃から「私がこの学校に入ったのは趣味と出会うためだったのかも」「ここにいなければ、趣味や友人とも出会うことはなかった」と気づき、学校生活を楽しめるようになり、行事や授業に対しても前向きに取り組むことができました。
実は、Aさんのエピソードは、私自身の体験です。大きな挫折体験を味わった後、体験をどのように捉えるかによって気持ちや後の行動が変化します。過去の出来事自体は変えられなくても、物事に対する捉え方は変えることができます。
レジリエンスとは
レジリエンスとは、逆境やトラブル、挫折体験などの強いストレスに直面した時に、そこから立ち直る力、回復力のことを言います。レジリエンスを高めることで、ストレスから早く立ち直り、気持ちを切り替えて、問題を解決したり、新たな行動を取ることができます。このレジリエンスの力は誰にでもあり、レジリエンスが低くても工夫次第で高められます。
では、レジリエンスを高めるには何をすればいいのでしょうか?
生活リズムを整え、衣食住を丁寧に過ごす
挫折体験の後に投げやりになったり、自暴自棄になったりしてしまいませんか?私たちが回復していく過程で、まずは生活リズムなど基本的なところを整えることが大切です。例えば、睡眠時間をしっかりと取ること、一日3食しっかり食べること、身体に良いもの、バランスが良い食事を心がけること、好きな服を着ること、おしゃれを楽しむこと、身だしなみに気をつけること等です。散歩やヨガ等、軽い運動も有効です。その繰り返しの中で、少しずつ傷ついた心は回復をし始めます。
挫折体験に対する「捉え方」を変える
挫折体験を「挫折」だと感じているのは、何故でしょうか。一番希望している場所ではなかったからでしょうか。しかし、一番ではなくとも、少なかず「良い」と感じた部分、魅力に感じた部分はありませんか?もちろん、実際に入学や入社をしてしばらく経たないと分からないこと、気づけないこともあるかもしれません。私たちは物事への捉え方によって、感情や行動が大きく左右されます。後付けで構いませんので、今回の体験に対する別の捉え方を探してみてください。
人と繋がる
挫折体験によって周囲との繋がりを絶ち、殻に閉じこもりたくなることがありますが、孤独は辛い感情をより強くし、立ち直りにより時間がかかることが多いです。人と繋がり、辛さや愚痴を言うこと、何も言わずにただそばにいてもらうことなど、自分に取って心地よい範囲で人と繋がりましょう。
セルフ・コンパッションを実践する
レジリエンスを高めるためには、セルフ・コンパッションを高めることも大切です。セルフ・コンパッションとは、「自分への思いやり」のことです。自分を思いやるイメージがつかない人は、親友や家族など大切な人が挫折体験した際にどのように声をかけたり、どのように接するのかイメージしてみてください。例えば、挫折体験を経験した自分に対して、頑張りを認めたり、不運を慰めたり、辛さに共感しましょう。そして、事実は事実としてありのまま受け止めて、挫折体験を味わっているのは決して自分だけではないことを忘れないようにしましょう。
小さな目標を決めて少しずつ行動する
今の自分に必要なこと、自分にできることを小さな目標に分けて少しずつ行動してみましょう。「出勤したら目を見て挨拶する」「会社の中で興味が持てそうな人や業務があるか探してみる」など、どのようなことでもいいですし、目標は立派なことである必要はありません。例えば、「外に出て散歩をする」「本屋に好きな本を探しにいく」など、自分自身を大切にするような、日々の中できるケアを目標にしてもいいです。
今回はレジリエンスを高める方法をいくつか紹介しました。良かったら参考にしてください。
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く