「幸福感が高い人には、過去と現在を見つめる習慣がある…」つまり、どういうこと?臨床心理士が解説

 「幸福感が高い人には、過去と現在を見つめる習慣がある…」つまり、どういうこと?臨床心理士が解説
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佐藤セイ
佐藤セイ
2023-03-27

美味しいケーキを食べたり、大好きなアイドルのライブに参加したり…そんなときに「幸せ!」と心が高揚する人は多いでしょう。しかし、その幸せは一時的なもの。特別な時間が終わると幸福感は薄れ、つまらない日常へ逆戻りということも。本当に幸福感が高い人は、現在はもちろん、過去も上手に見つめることで、特別な出来事がなくても、毎日の生活で幸せを感じやすい状態を築いています。今回は幸福感の高い人の習慣をご紹介します。

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「過去」を上手に振り返る

私たちは過去に起きたネガティブな出来事ほど強く記憶し、ポジティブな出来事ほど忘れる傾向があります。

つまり、確かにあったポジティブな出来事を思い出し、ネガティブな記憶を和らげることが幸福への近道ということ。そのために過去の「感謝」「容認」(*1)に取り組んでみましょう。

過去に感謝する

自分にポジティブな気持ちを与えてくれた人や出来事を振り返ります。「大きな病気もケガもしていない身体」など、当たり前だと思っていたものにも感謝できないか考えてみましょう。

思いついたものはノートなどに書き留め、1つ1つに感謝します。「ありがとう」と声に出してもいいですし、感謝の対象者には実際に感謝を伝えてもいいかもしれません。

感謝を意識すれば、自分を支えてくれているポジティブなものに気づき、幸福感が高まります。

過去を容認する

過去に傷つけられた出来事は、時間が経っても私たちを苦しめます。

自分を傷つけた人たちを「許さない」という意志は尊重されるべきです。一方で「許せない」ことに負担を感じている場合には、心理学者エベレット・ワーシントンが提唱した過去を許す方法「REACH」(*2)を試してみましょう。

1.Recall the hurt:傷を思い出す

リラックスした状態で、傷ついた場面を客観的に思い出します。

2.Empathize with your partner:相手への感情移入

自分を傷つけた相手の立場にたち、「なぜ、この人は私を傷つけたのか」を考えてみましょう。

3.Altruistic gift:利他的な容認

自分が罪悪感を抱いたときに、許してもらえた喜びや感謝を思い出してみましょう。そして、自分を傷つけた相手にも同じ喜びや感謝を与える気持ちで「許し」を贈りましょう。

4.Commit:公表

「私は〇〇を許した」と紙に書く、家族や友人に許したことを宣言するなど、許したことを公表します。

5.Hold onto forgiveness:許し続ける

「私は許したんだ」という気持ちを持ち続けます。Commitで書いた手紙や宣言が許す気持ちをよみがえらせます。 

「REACH」によって相手を許すと、うつや不安といったネガティブ感情が軽減し、精神的な健康を取り戻せることがわかっています。

過去
過去に感謝し、過去を容認する。

「現在」を満喫する

幸福感が高い人は「現在」を満喫することにも力を入れています。

その時に役に立つのが「マインドフルネス」「フロー」という2つの方法です。

マインドフルネス:「今この瞬間」に目を向ける

マインドフルネスとは「今この瞬間」に丁寧に目を向けること。

私たちは簡単に「今この瞬間」を見失います。過去への怒りや未来への不安に心がとらわれてしまうのです。このような「心ここにあらず」の状態だと、「今この瞬間」の喜びを見失ってしまいます。

「今この瞬間」の感覚に気を配ってみましょう。

例えば視覚。この文章の文字をじっと眺めてみてください。「意外と丸みのあるフォントだなぁ」などと気づくかもしれません。

触覚はどうでしょう?スマホやマウスに触れる指先に意識を向ければ「意外と固い!」と驚くかもしれません。

「今この瞬間」を丁寧に見つめる習慣を持てば、今ある幸せにも気づきやすくなります。

フロー:「今この瞬間」を忘れる

逆に時間をすっかり忘れてのめり込む状態を「フロー」といいます。「掃除に取り掛かったら2時間経っていた」などの経験がある人もいるかもしれません。

実はフローを体験すると、充実感や幸福感が高まることがわかっています。

フロー状態になるために必要なのは次の2つです。(*3)

・明確な目標とフィードバックが得られる「挑戦」

・目標に見合った「能力」

幸福感の高い人は、フローを感じられるようなチャレンジに意欲的に取り組む習慣を持っているのです。

参考文献

*1 マーティン・セリグマン著・小林裕子訳(2021)ポジティブ心理学が教えてくれる「ほんものの幸せ」の見つけ方 パンローリング

*2 Everett Worthington:REACH Forgiveness of Others

*3 Csikszentmihalyi, M. (1990). Flow: The psychology of optimal experience. New York: Harper and Row.

 

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佐藤セイ

佐藤セイ

公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。



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