#デジタルネイティブたちの食わずらい|後編|「他人軸で動く食」とは【人と違う、私たちのリアル】
コロナウイルス蔓延から3年。その陰で、食と数字に心を囚われた若い世代がSNSで声をあげている。 それは「障害」という言葉の括りだけで定義できるのか。 一生付き合っていく病とは誰が決めたのか。ネット上に正解は見つからない。 青年期にはつきものの「恋わずらい」のような、 一過性の食の「わずらい」ではないのだろうか── 前向きに学業を続けたい、社会で役に立ちたい、けれど、すぐには変われない。学業や進路、人間関係だけでなく「食」に思いわずらい、揺れる若者の心。 デジタルネイティブな若者たちの、2つの「わずらい」(患い、煩い)のリアルをお伝えする後編です。
「他人軸」で選ぶ食のトレンド。 デジタルネイティブ世代の「自分軸」のゆらぎ
今回は、自分軸で食・健康情報を選択するための、20代から10代へのメッセージをお伝えします。
はじめに前編を少し振り返ります。
コロナウイルスと同じように誰もがリスクを日常的に抱える健康危機に落とし込んだ時、筆者が捉えた若者たちの「食わずらい」のリアルは、社会みんなで共感できる問題となるだろうと考えました。
本稿執筆期、ハッシュタグを介して10代から30代の若者当事者の声を拾い、ヒアリングを行う中で、彼らを取り巻くネットの情報環境が、自分が歩んだ10代、20代とは大きく変化し、わずらいのスパイラルに陥らせる病巣となっていると捉えられました。
10代からが当たり前のSNSユーザーたち。
親や学校が身体や心の異常に気づいて指摘し、外来や入院治療にあたっている若者も、毎日、自宅や病院から投稿を続けています。
中でも、最も悩みを抱えているように映ったのは、社会活動への手前で日々の食事や体型の悩みに「親付き合い」や「進路」が加わる20代前半の若者。
自分より10年下、いわゆるZ世代です。
具体的にデジタル時代のリスクを身近に感じるきっかけとなったのは、若者たちが「他人軸」で商品や行動を選択する傾向です。
SNSのアカウント名だけで半匿名的につながり、互いの食生活を閲覧し合う関係や、動画サイトで影響力を持つ同世代のフォロワーが発信する爆食動画や「モッパン」など。
一口にSNSといっても様々ですが、Instagram、Twitter、YouTube、Tik Tokなどには、偏った食の嗜好やボディイメージで心理や行動を煽るようなコンテンツが溢れています。
実際、中でも食の投稿が際立つInstagram上では、ハッシュタグ「#おそろ食べ」というキーワードで、ユーザー同士が連動し、タグ付け合うという若者の ”文化”がありました。
これは筆者がユーザーから知り得たSNS世界でのみ繰り広げられるトレンドでしたが、「他人軸」で動かされる買い物や食の行動が、若者世代の「自分軸」のゆらぎを反映していると感じられました。
「自分軸」の重要性について、昨今は世間で説かれることも多く、筆者は服部みれいさんの著書やYoutube発信などで深く学ぶようになったため、ここで改めて解説することは割愛したいと思います。
本稿でメインとなるのは、筆者よりも10代に目線の近い、20代のオピニオンリーダーからの言葉の処方箋です。
これから社会をドライブする10代の方、キャリアや生活のターニングポイントを迎える20代の方双方に、あえて医療や栄養学のプロではない、若者オピニオンリーダーからの言葉を届けることで、
わずらいの渦中にある人生の通過点だけでなく、社会に出てからも重要な情報の財産にしてほしい、という想いを込めてお届けします。
AUTHOR
腰塚安菜
慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代から一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会で「ソーシャルプロダクツ・アワード」審査員を6年間務めた。 2016年よりSDGs、ESD、教育、文化多様性などをテーマにメディアに寄稿。2018年に気候変動に関する国際会議COP24を現地取材。 2021年以降はアフターコロナの健康や働き方、生活をテーマとした執筆に転向。次の海外取材復活を夢に、地域文化や韓国語・フランス語を学習中。コロナ後から少しずつ始めたヨガ歴は約3年。
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