#デジタルネイティブたちの食わずらい 前編【人と違う、私たちのリアル】SNSが私のすべて?

 #デジタルネイティブたちの食わずらい 前編【人と違う、私たちのリアル】SNSが私のすべて?
canva
腰塚安菜
腰塚安菜
2023-03-17

コロナウイルス蔓延から3年。その陰で、食と数字に心を囚われた若い世代がSNSで声をあげている。 それは「障害」という言葉の括りだけで定義できるのか。 一生付き合っていく病とは誰が決めたのか。ネット上に正解は見つからない。 青年期にはつきものの「恋わずらい」のような、 一過性の食の「わずらい」ではないのだろうか── 前向きに学業を続けたい、社会で役に立ちたい、けれど、すぐには変われない。学業や進路、人間関係だけでなく「食」に思いわずらい、揺れる若者の心。 デジタルネイティブな若者たちの、2つの「わずらい」(患い、煩い)のリアルをお伝えする前編です。

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ある若者の健康危機に共感するために。「障害」と呼ばない言い換えの必要性

このテーマを取り上げる前提として、当事者たちが自らを括る障害という「ラベル」をあえて使わずに書きたいという思いがありました。

今回の執筆にあたり、医療機関から診断を受けずに、それぞれの日常生活を多様な形で送っている(休学、休職しているなど)女性の意見も聞いています。

レディー・ガガやテイラー・シフトなどの若手アーティストが10代、20代の経験を明かし、ドラマ「リエゾン -こどものこころ診療所-」でSNS時代の女子高生の病が描かれ、認知自体は広がっている若者の健康危機「摂食障害」。

コロナ3年で明らかになった国立成育医療研究センターの調査で、10代~20代の増加がニュースにもなり、じわじわと若年化が進んでいることを知りました。実際に同センターが行った新型コロナウイルス感染症の流行による子どもの心の実態調査では、子どもの「神経性やせ症」の初診外来患者数がコロナ流行前の2019年と比べて約1.6倍に。

ネットの書き込みでは、医療従事者のSNSユーザーが「(ダイエットがきっかけで)10代以下の患者が緊急入院し、点滴をしている」と投稿していたのを目にしました。

筆者は人生を生きてまだ10年以下の子が、食事を自力でとるという生きる力を失ってしまったことに驚きと悲しみを覚えましたが、きっかけは同級生の些細なひと言だったそうです。

ネット上で若者当事者が自分たちを「摂食」のような略語で括る様を目にした時、そんな「ラベル」を使うことも不本意だと感じていました。

ユニバーサルで「医学的な正解」である診断名は場合に応じて使いますが、今回は「食わずらい」という私なりの捉え方で、当事者やデジタルネイティブ世代の食と心の問題に向き合います。

前編では筆者と同世代の当事者との往復書簡で、デジタルネイティブ時代の若者当事者の心に迫り、一人の大人の目線で、彼らにできることを考えます。

ハッシュタグ、投稿からは見えない「わずらい」当事者のリアルに迫る

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彼女の名前は、郁美さん。はじめのきっかけは誌面記事で彼女の存在を知り、その後SNSでも人柄を知ることになりました。

大学卒業後、客室乗務員(CA)や、米国ウォルト・ディズニーで勤務。人前に立つシーンが多く、立ち居振る舞いも肝要な仕事に従事してきた、30歳になったばかりの女性です。

本稿の執筆前、彼女のSNSを見て、誌面の中に書かれた華やかなキャリアや明るい笑顔の裏の部分が気になりました。

掲載物の感想とともにメッセージを送ってみると、郁美さんは筆者が日頃から抱いていたメディアやSNSの中の「見えない部分」に対する問題意識を汲み取り「今のリアルな想いを発信してほしい」と直筆で手紙を書いてくれ、筆者の自宅まで届けられました。

郁美さんについて紹介する時、避けて通れないものが、今回取り上げたテーマ1つめの「わずらい(患い)」です。彼女の場合、人生の半分ほど付き合ってきたといいます。

CA(キャビンアテンダント)での勤務時代、25㎏の体で体力的にままならなくなり、受診した医師との会話やテスト診断で、正式に複数の「障害」の診断を受けたという郁美さん。

経験を伺いながら調べるうちに「食わずらい」の当事者に必ずしも「痩せたい心理」や「ダイエット」というきっかけがあるとは限らないことが解ってきました。

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腰塚安菜

腰塚安菜

慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代から一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会で「ソーシャルプロダクツ・アワード」審査員を6年間務めた。 2016年よりSDGs、ESD、教育、文化多様性などをテーマにメディアに寄稿。2018年に気候変動に関する国際会議COP24を現地取材。 2021年以降はアフターコロナの健康や働き方、生活をテーマとした執筆に転向。次の海外取材復活を夢に、地域文化や韓国語・フランス語を学習中。コロナ後から少しずつ始めたヨガ歴は約3年。



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