#デジタルネイティブたちの食わずらい 前編【人と違う、私たちのリアル】SNSが私のすべて?

 #デジタルネイティブたちの食わずらい 前編【人と違う、私たちのリアル】SNSが私のすべて?
canva
腰塚安菜
腰塚安菜
2023-03-17
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自分にお金が使えない?生活に及ぶ自己制限、罪悪感。 当事者が抱える「煩い」のリアル

ドキュメンタリーやドラマ、ニュースにおける個人の物語からは「痩せたい、太りたくない」心理が典型例だと解釈してしまいがちですが、これはあくまで視聴者にわかりやすい症例の一部です。

例えば、極端な食事制限で、生命維持に最低限必要な栄養を摂れなくなる症例。生活を乱すほどの「むちゃ食い」をしては吐くことを繰り返してしまう症例。逆に、吐くことや満腹感への不安や恐怖。カロリー計算や運動をやめられない脅迫症状など。

郁美さんもうまく食事が出来なかった経験を持つ一人ですが、他にも生活に及ぶ「自己制限」の症状に悩んできたそうです。それは「自分にお金を使うこと」。自分のための買い物や自己投資に罪悪感を持ち、極端に制限をかけてしまうという独特な症状は、話を伺って新たに見えてきたものでした。

「食べることだけでなく、生活のあらゆる面で自分のことを後回しに『自分いじめ』のような行動をとっていました。」「制限型」の症例に見られる食事制限だけでなく、お金の使い方にまで及んだという事実は、筆者が最も驚いたことでした。

取材の後段で、2月からの新しい転職先で次のステージへ本格的に踏み出す手前、4日間の旅行で自分のための休暇を取っていた郁美さん。

それが改善したことを「今まさにしている自己投資」を通して教えてくれた彼女ですが、他にもこの3年に起きた、見えない大きな心理上の転換点があったそうです。

「コロナの間に突然自分に起きた交通事故がきっかけで、親子関係も見直した。病院の中で自分なりに毎日と格闘しながら生きる中、親への心配や思い煩いが消えたことも一つのターニングポイント。自立できたという実感がある今、本当に幸せで、満足している。」という話も印象的でした。

大人になってからの親子関係は「つかず離れず」が理想と描かれがちですが、郁美さんにとっては「わずらい」の一つだったのだと捉えられました。

「今、初めて自分自身をしっかりと生きている実感。自分にお金を使うことも、自然とできるようになっていると感じる。」

自分自身を生きている実感。

ハッシュタグから見えない思いに迫ることが本取材の目的で、逆説的にも聞こえるかもしれませんが、同世代から聞いたその言葉を通して、近年トレンドの「#セルフラブ」や「#ご自愛」に初めて深く共感できたと感じ、自分ごとのように嬉しくなりました。

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腰塚安菜

腰塚安菜

慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代から一般社団法人 ソーシャルプロダクツ普及推進協会で「ソーシャルプロダクツ・アワード」審査員を6年間務めた。 2016年よりSDGs、ESD、教育、文化多様性などをテーマにメディアに寄稿。2018年に気候変動に関する国際会議COP24を現地取材。 2021年以降はアフターコロナの健康や働き方、生活をテーマとした執筆に転向。次の海外取材復活を夢に、地域文化や韓国語・フランス語を学習中。コロナ後から少しずつ始めたヨガ歴は約3年。



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