ダイエットから離れる食べ方「インテュイティブ・イーティング」とは?コーチ岡井麻悠子さんに聞く

 ダイエットから離れる食べ方「インテュイティブ・イーティング」とは?コーチ岡井麻悠子さんに聞く
吉野なお
吉野なお
2022-04-20

ダイエットや健康を意識した食事方法を試したことはあるでしょうか。何を食べるか?どれぐらい食べるか?というルールに従って食べる方法です。でも、その方法は本当にあなたの心と体に合っていると言えるものだったでしょうか?ルールに縛られすぎて1日中食べ物のことを考えたり、禁止している食べ物を食べると罪悪感を抱いたり、「食べていいもの」が無いと焦ってしまうなら、その食事ルールを見直してみるタイミングなのかもしれません。

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今回インタビューさせていただいたのは、米国管理栄養士でインテュイティブ・イーティング講師の岡井麻悠子さん。「インテュイティブイーティングって何!?」と思う方がほとんどのはず。私も名称を知ったのは、麻悠子さんと出会ってからです。でも私は以前、知らず知らずのうちにインテュイティブイーティングのようなものを自然と実践していました。それは、極端なダイエットのあと過食症になり何年も悩んでいた時のこと。体型への捉え方を変え、ダイエット思考で食事を選ぶ方法をやめて「自分の食べたいもの」「気持ちが満たされるもの」を自分に聞いて食べる練習をしていったら、普通に食べれるようになり過食症もいつの間にか消えていた、という経験です。というわけで今回は、「制限する」という食事方法を手放し、もっと自由で心地良い「食べる」についての向き合い方を伺っていきます。

病院での栄養士の仕事に限界を感じて

ーー麻悠子さんと私が知り合ったきっかけは、前回のMikikoさんへのインタビュー記事を麻悠子さんが読んでInstagramで連絡してくださったからなんですよね。実は私、ちょうど麻悠子さんのような方を日本で探していたので、お会いできてとても嬉しいです!今は日本に住まわれているそうですが、もともとはアメリカに住んでいたそうですね。まずは麻悠子さんについて、教えてください。

岡井麻悠子さん(以下、麻悠子):生まれたのは日本ですが、子供の頃にアメリカに移住しました。アメリカの大学で管理栄養士の勉強をして、大学院でもインターンシップでも栄養学の道に進みました。日本では管理栄養士と呼びますが、アメリカでは米国登録栄養士という名称です。その資格を取って、8年間病院で働いていました。最初の5年は臨床で入院患者を診て、その後は給食とかフードサービスとかオペレーションに関する管理職の仕事をしていました。でも、そういった病院での仕事を2017年に退職したんです。人のために栄養士になったのに、私にとって病院での仕事は、人のためになれてないと感じたから。栄養士としての仕事は、患者さんに対して制限をすることばかりで...例えば、糖尿病の患者さんにはこの食事、高血圧の方にはこの食事など、病気で病院に来ている患者に対して制限を指導するんですが、ただでさえ病気で大変な状態なのに、さらに制限までさせなきゃいけないとなると、受け入れられないことが多かったんです。一回しか会わないですし。そういった時に、無力感を感じたんです。

ーー病院で管理栄養士さんがやる仕事って、厳格なルールで決まっていそうですね。

麻悠子:そうなんです。でもある時、プライベートな話をしてくれる患者さんがいて、悩んでいることや最近あった出来事とか話してくれたんですが、それに対して私は何もできない、話を聞いているだけ。でもそういう時にこそ感謝されたんです。それで、「あ、こういうふうに人のために何かできないかな」って思って。でもそれをどう仕事につなげるかわからいまま、心に残っていたんです。病院の仕事が合わないと感じていた頃、ヨガをやっていたんですが、ストレスを感じたある時に、家でマットを出してひと呼吸だけしたらすごくスッキリしたことがあって。そこで「ヨガって深いんだな」と思って、なぜ体に良いのか、どうやったらもっとヨガを勉強できるかなと思うようになりました。ヨガクラスに参加するだけではわからなかったので、深く学ぶために1番良いのは、ヨガのティーチャートレーニングだなということで、指導者養成講座を受けました。そこでヨガ哲学に惹かれました。ホームワークとして自分の中のサティア(真実)を内省する課題があって、それをやっていくうちに、私のやりたいことは今の仕事ではできていないなと自分に正直になって、そこから半年後に仕事を辞めたんです。次に何をするかは決めていませんでした(笑)。でも、とにかく辞めないと始まらないと思ったんです。

ーーなるほど、まずヨガがあったんですね。ヨガティーチャーの資格を取ったのが「ヨガを教えたい」ではなくて、「ヨガ哲学を学びたい」だったのも面白いなと感じます。

麻悠子:日本ではどうなのか分かりませんが、アメリカでは「教えるつもりはないけどヨガの先生の資格とる」っていう人が結構多いんです。結果的にヨガの先生になるっていうこともありますが、ヨガを学びたくて資格をとるというケースが多いように思えます。それから、私にとって自分らしい生活を始められたきっかけがヨガで、哲学やマインドフルネスに興味があったから、他の人にも「自分らしい生き方」を伝えたいという思いが生まれました。それから米国登録栄養士の資格を更新するタイミングがきて、ヨガに近い勉強を探した時に、インテュイティブ・イーティングを見つけて、「これだ!私が人に気持ちよく伝えられる食べ物との付き合い方だ!」と思ったんです。そして「普通に食べられない人」が多いことにも気がつきました。摂食障害じゃなくてもダイエットで悩んでいる人がすごく多かったんです。それから、ヨガの哲学を取り入れながらインテュイティブ・イーティングのコーチングを始めました。今はほとんどヨガは取り入れていませんが、独自のやり方でインテュイティブ・イーティングのコーチングをしています。

ーー今は日本に住んでいらっしゃるんですよね。

アメリカから日本(長野県)に移住したのは、2020年の10月です。私のアイデンティティは日本人で、日本に憧れがあったので、住んでみたかったという理由で移住を決めました。そしてインテュイティブ・イーティングを日本で広める仕事をしたい思っていたんですが、インテュイティブ・イーティングという考え方が日本にまだない!本も翻訳されてない、ネットにも日本語での情報がほとんどない。その分知ってもらえるチャンスだけど、広めるハードルも高いと感じています。

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吉野なお

吉野なお

プラスサイズモデル・エッセイスト。雑誌『ラ・ファーファ(発行:文友舎)』などでモデル活動をしながら、摂食障害の経験をもとに講演活動やワークショップのほか、ZOOMでの個人セッションも行っている。mosh.jp/withnao/



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