痩せることで頭がいっぱい!ダイエット依存の先にある摂食障害とは

 痩せることで頭がいっぱい!ダイエット依存の先にある摂食障害とは
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「摂食障害」という言葉は聞いたことがある人もいるでしょう。けれど、自分とは全く関係がないことだと思っていませんか?例えば、何かを食べるたびに「今、何キロカロリー摂取したんだろう」「こんなの食べたら太るに決まってる…」そんな考えに支配され、摂食障害に至るケースもあります。摂食障害は誰にとっても身近にあるものです。摂食障害相談室を運営するカウンセラーのあかねさんによる連載コラムでは、決して縁遠いものではない「摂食障害」について、そしてその背景にあるものについてお伝えします。

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「SNSでダイエット情報ばかり見てしまう」

「一度食べ始めたら食欲が止まらない」

「外食に誘われても素直に喜べない」

一つでも当てはまったら危険信号。もしかしたら摂食障害予備軍かもしれません。「気づいたら痩せることばかり考えて、目の前のことに集中できない」と感じていたら、この記事を読み進めてみてください。

摂食障害を隠しながら生きる人たち

「摂食障害」という病気は、ここ数年でメディアにも取り上げられることが増え、小耳に挟んだことがある方も多いかもしれません。

摂食障害とは、「食事を食べることが怖い」「食欲をコントロールできずに食べ過ぎる」「飲み込んだものを意図的に吐く」など、食事がうまくできない症状に悩む心の病気ですが、根幹にあるのは「痩せたい病気」であるように思います。

私は摂食障害オンライン相談室を運営し、私自身も拒食や過食嘔吐に10年悩んだ末に克服しました。カウンセリングを始めて5年。私の元には毎日何通もの相談が届き、その数なんと年間で1000通以上。「30kg台なのにまだ痩せたい」「毎日帰宅後に過食嘔吐している」「真夜中に3時間のランニングがやめられない」。中には家族に内緒で20年以上悩み続けるお母さんも。しかし驚くことに、その苦しんでいる彼女たちの大半は、実はオモテの世界では普通にメイクをして出勤したり、学校に通ったり、友達と遊んだりと、何事もないかのように過ごしています。摂食障害は体重で判断できるほど単純な病気ではなく、みんなリアルな世界では友達や家族、職場の人に摂食障害を隠しながら生活しています。

これが摂食障害の実態。そして彼女たちも「初めは軽い気持ちでダイエットをしただけ」と口をそろえて話します。つまり、ダイエットを始めた方は誰でも、摂食障害になる可能性があるのです。

摂食障害とダイエッターの違い

まず、摂食障害とダイエッターの違いは「心の病気」か否かです。しかし、もっと身近な感覚で言うと、摂食障害は「痩せること」が最優先事項になり、それによって生活が左右されたり、気持ちが乱れる点にあります。つまり、簡単に言えば「ダイエット100%の生活になり、本来の生活が送れなくなること」とも言えます。例えば「カロリー計算で頭がいっぱいになり、買い物に時間がかかる」「疲れているのに、仕事終わりのジムがやめられない」など。もっと症状が進行すると「0.1kgでも増えるとパニックになる」「外食に誘われないように人を避ける」「1日中座ってることができずオフィスワークができない」など、対人関係やキャリアにも影響してきます。

摂食障害の段階ごとの症状

では、ダイエットから摂食障害になる分かれ目はどこにあるのでしょうか。カウンセリングを行なっていると、代表的な症状変化のパターンがわかってきました。それぞれの症状の段階別に説明します。(全員に当てはまるわけではありません)

(1)ダイエット期

ダイエットに真面目に取り組み、順調に痩せます。

(2)拒食期

ダイエットにのめり込む中で、将来の不安が強過ぎたり、誰かに頼れなかったり、安心できる環境がないと、心の支えを求めて「痩せ」に執着するようになります。特に完璧主義で努力家な方、他に夢中になれることを見失っている方ほど「誰よりも痩せたい」「自分史上、最低体重を目指したい」という思いが強く、食事制限や過活動が加速します。

(3)回復期または、摂食障害移行期(摂食障害予備軍)

ダイエットに成功したと思い始めた頃、一度食べ始めたら1人前では満足できないほどの猛烈な食欲に襲われるようになります。いわゆる世間一般的には「リバウンド」と呼ぶ時期。これは身体の栄養不足によるダイエットの反動によるもので、無理なダイエットをした方ほど症状は強いでしょう。ただ、人間は飢餓状態になると、生命力に従って食欲が増すものなので、この食欲は「自然なこと」です。つまり生理的なものなので、過食症ではなく「回復期」と捉えてください。だからダイエットをして体重が戻ることを恥じる必要はなく、「無理なダイエットをしてしまった証」と捉えて、より長続きする健康法を考え直してほしい。

しかし、ここで自分を満たす方法が食べること以外になかったり、何か不安を抱えている状態だとダイエットを諦められず、摂食障害に片足を突っ込む状態になっていきます。拒食と過食をくり返し、中には食後に罪悪感を感じたり体重増加を受け入れられないと、嘔吐や下剤に手を出すようになります。

(4)摂食障害の悪化

特に過食嘔吐などの排出行動が常習化すると、数年単位で摂食障害が治りづらくなります。また、拒食と過食を繰り返した結果、代謝異常で食べていないのに体重が増加し、過食嘔吐している以外は拒食的な食生活になり水を飲むのも怖くなる状態に。また、過活動、チューイング・下剤や利尿剤に依存する場合もあります。

上述した段階の中で、ダイエットからの回復期が、摂食障害の予備軍になるかどうかの一番重要なステージです。その時期に「なぜダイエットにのめり込んでしまったのか」「キャリアや対人関係に不満はないか」をチェックし、それと同時に「ダイエット以外で自分が心地よくなる方法」を生活に取り入れていくことで、摂食障害を早期に克服できるでしょう。しかし、ここで自分をケアすることを疎かにすると、摂食障害と20年、30年の付き合いになることもめずらしくありません。

このように、摂食障害は誰でもなりうる病気です。今一度、あなたは無理なダイエットをしていないかチェックしてみましょう。もし摂食障害の疑いがあるのであれば、一番あなたが甘えたいと思える人にSOSを出してください。難しければファーストステップとして医療機関やカウンセリングサービスを利用してもOK。摂食障害になる方は人一倍優しく努力家だからこそ「誰にも迷惑をかけまい」と1人で耐えすぎてしまう傾向があります。しかし、頑張り屋のあなたの周りには、必ず手を差し伸べたい人がいるはずです。大丈夫、顔をあげて見渡してみて。そして信じて頼ってみて。

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AUTHOR

あかね

あかね@摂食障害相談室

「壁を扉に」を合言葉に、元摂食障害の心理士として「摂食障害オンライン相談室」を運営。1990年生まれ。高校生の頃に27kgになり10年に渡る摂食障害に悩んだのち完治。その間、入退院、高校中退、引きこもり、高卒認定試験合格の後に進学。大学では心理学を専攻し、卒業後は広告会社でコピーライター、デザイナーとして従事。30カ国60都市を訪問の末、宮崎に移住。カウンセラーの傍ら、農家でありクリエイターでもある。3児の母。



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