いつも自分を責めてしまう人へ。自己否定の沼から脱出できる「カウンセリング日記」のメリットとやり方
「自分を責めてしまう」「自分のことが好きになれない」そんな悩みを持っている人は少なくないと思います。ノガミ陽さんのコミックエッセイ『自分へのダメ出しはもうやめた。 自己否定の沼から脱出したわたしカウンセリング日記』(オーバーラップ)には、自分自身を見つめ直し、自分で自分を満たせるようになるまでの過程が描かれています。ノガミさんに自分と向き合う中での葛藤や心境の変化、自分を見つめ直すための具体的な方法などをお伺いしました。
自分の負の感情をなかったことにしない
——「他人に褒められるほど申し訳なさがつのって自分を嫌いになる」と描かれていました。まずは「ありがとう」と言うことにした、とのことですが、その後、他人から褒められたり認められたりした際に、ストレートに受け取れるようになりましたか。
正直、今でもストレートには受け取れていないです。でも言葉通りには受け取らなくても、気持ちだけ受け取ることもできるのかなって思うようになりました。
実は私は自分の絵を上手いとは思ってないんです。私の周りにはプロの漫画家がたくさんいて、その人たちと比べると自分の絵は上手いとは思えない。でも褒めてくれた人はご自身の身近なものと比べたり、見たときの印象で上手いと思ってくれて、しかもそれを私に伝えたいと思ってくれたんですよね。それってありがたいなと。
私と、私を褒めてくれた人とでは見てる世界が違うわけで、褒めてもらったときにはその人の意見として受け取れるようにはなりました。
以前は褒められたり褒められなかったりで自分の価値が変わる気がして一喜一憂していたのですが「気持ちだけ受け取る」という考え方を取り入れてからは、あまり感情が揺さぶられなくなりましたね。
——褒められると「もっと頑張らないと」と余計自分を責めてしまうものの、褒められたい気持ちはあったのですか?
めちゃくちゃありました。褒められたいのに、褒められると自分を嫌いになってしまうって矛盾してるように見えますよね(笑)。どういうことなんだろうって考えたんですけど、私は褒められたいストライクゾーンが狭いんだと思います。でも自分が褒められたいところだけをピンポイントで褒めてくれるエスパーみたいな人なんていません。本作でもあとがきに思い入れがすごくありまして。誰かなにか言ってくれないかなと密かに期待していました。
でも「自分の褒められたい部分だけ褒めてほしい」って、ないものねだりのようなものなのかなって思って。今では、自分が頑張ったところは自分がわかっていればいいと思えるようになりました。だから読者の皆さんには心のままに好きなところにお言葉をいただけたら嬉しいです。
——感情が荒れないための工夫についても描かれていますが、上手くいかないこともあると思います。どう対処されていますか。
とにかく一度は全部はき出すようにしています。以前はちょっとイラっとしたときに「大人になれよ」と自分の気持ちを踏みつけてしまうときがあったんですけど、今はそういう感情もないことにせず、全部ノートに書き出すようにしました。気が済むまで書くと落ち着いてくるので、それから色々と考えるようにしています。
自分の心のケアが終わってない状態で他人や物事に向き合おうとすると、どうしても相手に対していい気持ちになれないんですよね。相手の言動に深い意味はなくても、これは嫌がらせなのかとか、勝手に相手の悪意を感じ取ってしまうなと思って。だからまずは全部書き出して、落ち着くようにしています。
日記を書くのは目的ではなく、手段
——なんでも描くノート・1日のおわりのノート(日記)・手帳と3冊を使い分けていますが、続けるのは大変ではないですか。
私も最初は全然書けなくて、続けることの難しさがあるのはわかります。それでもなぜ日記が続いているのかというと、描くことのメリットを自分が感じているからです。一時期、日記だけ書かなくなった時期があったのですが、後から書いてない時期と書いてる時期を比べたときに、圧倒的に書いてる時期の方が精神が安定していることが、他のノートを見てわかりました。それで私にとっては日記を続けた方がいいと気づきました。
——書きたいことがなかったり、書く元気がなかったりする日はどうしてますか。
疲れているときは真っ白な日が3日ほど続くことがありますし、振り返って数日分まとめて書くこともあります。必ずしも当日に書く必要はないと思ってて、たとえば2日前のページに「これは○月△日の私が書いてます」ってメモしたうえで思い出して書くこともありますし。原稿が忙しいときは「頑張ってます」と一行しか書かないこともありますね。納期の前とか本当に忙しいときって細かいことは何も覚えてないので、それはそれでいいかなと思います。
私にとっては日記を書くことが目的ではなくて、書くことによって得たいメリットがあるんですよね。だから自分をしんどくしないように、ルールで縛りすぎずに健やかに続けられる方法を採用するのがいいと思います。
以前、勤めていた会社をやめたときに今後の生き方に悩んでいたんですけど、その時に漫画以外にもグラフィックレコードとか、カウンセリングとか色々なことを試したんですね。でも時間的にも体力的にも全部に取り組むのは無理だと気づいたときに考え直しまして。一番やりたいことは漫画なので、全てを漫画を描くために繋げようと思いました。
日記もその一つです。自分が精神的に安定して漫画を描くために日記は有効なことであって、今後、日記が合わないと感じるようになったら、多分日記をやめると思うんです。何のために日記を書くのかは自分の中で決めておくといいと思います。
——あくまで日記は手段であって、目的ではないってことですね。
そうですね。でも目的を決めていても人間はすぐ忘れてしまうと思うんです。いつの間にか手段が目的になっていたり。だから私は目的を決めたら書き出して、ときどき見返して、忘れてないか確認できる状態にしています。たとえば今年の目標も書かないと忘れてしまうので、すぐ確認できるように手帳などに書いて、ときどき思い出せるようにはしています。
——すごくマメですよね。最初からそこまではできないと思うんですけど、始めるコツはありますか。
私も最初からこの形態だったわけではなくて、初めはノートに書くだけでした。徐々に「こうした方が便利だな、わかりやすいな」と思い浮かぶようになって、少しずつ工夫していった結果、今に至った感じです。慣れていくと負荷は増やしていけるみたいです。
だから最近、ついに「あすけん」で食事の記録がつけられるようになりました。以前だったら続かなかったと思うので、慣れとか積み重ねとかもあると思います。
——決して気合いで乗り切っているのではなくて、続けるための仕組みづくりを大事にされていると感じました。
習慣や続けるための仕組みはすごく意識しています。仕事を辞める直前までは、全部自分自身の力で、気合いで乗り越えていかないといけないと思ってた部分があったんですね。でも何度も気合いで乗り越えようとして失敗してきたので、気合いでは成功しないことがたくさんあることもよくわかりました。
そこで気合い以外の方法を探し始めたときに、意外と習慣によって解決しようとしている人が多いことを知って、そこからは続けるための仕組みを意識するようになりました。
会社を辞めるときに、自己肯定感や自己評価が完全に地に落ちた感覚だったんです。ですがその後、小さいステップを着実に踏んでいくことで、その一つ一つが全部自信になることに気づきました。それからは、ゴールから逆算して、一つ一つの小さなゴールを達成していくと、気づけば全部完成しているような道を自分で作ることで、安心して物事を進められるように意識しています。
【プロフィール】
ノガミ陽(のがみ・あきら)
神奈川県生まれ、NY育ち。メンタルは大体えぐられがち。心すこやかに生きる方法を探し哲学と倫理学、カウンセリングを学ぶ。学んだことを作品にできないか日々奮闘中。
Twitter:@9X9_NogamiAkira
note:https://note.com/nogami9x9akira/
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