妊活とは違う?“産む”という選択肢をもっておくためのプレコンセプションケアとは

 妊活とは違う?“産む”という選択肢をもっておくためのプレコンセプションケアとは
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性の悩みは、こころと身体が影響しあう問題であるにも関わらず、悩んでいても「誰にも言えない」そんな人が多いようです。SNSを中心に性の悩みに関する情報を発信する臨床心理士の西田めぐみさんが、心と性にまつわる大切なお話を連載形式で綴ります。

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子どもを産むという選択のむずかしさ

昨今では結婚しても意図的に子どもを持たない、いわゆるDINKSと呼ばれる方が増えてきたように、そのどちらを選択するのか社会的にはずいぶん柔軟になってきたという印象を受けます。それはとてもすばらしいことだと個人的に思います。その一方で「子どもを産む、産みたい」と思った時、産むという選択がむずかしい、選択したとしても実現がむずかしい、という方が多くなっているという印象も同時に感じています。「子どもを産みたい、もちたい、と思ったときになかなか実現しない。それがとてもつらく悔しい」——オンライン相談のなかでも、そのようなご夫婦やカップルの方は今とても多いです。

日本では2022年の4月から不妊治療が保険適用になったり、今後も出産育児一時金が増額されるなど、社会的には子どもを持つための社会的な環境は変化していると思われますが、個人ではどうでしょうか?子どもを持ちたいと思ったときに持てる、できるだけそんな環境に近づけておくために自分たちでできることもあります。それがプレコンセプションケアです。

プレコンセプションケアとは

Conceptionとは「受胎・妊娠」を意味する言葉で、その“プレのケア”。直訳すると「妊娠より前から始める妊娠のためのケア」ということになります。そのようにお伝えすると、「妊活とどうちがうの?」と思われるのですが、プレコンセプションケアは妊娠を考え始めたときにするものではなく、それよりもずっと前の思春期から始めるものになります(思春期からでないといけない、というものではありません)。そして、プレコンセプションケアは女性だけが行うものではありません。男性も同じように思春期から意識しておくことが大切です。男女ともに、将来の妊娠や身体の変化に備えるための必要知識と捉えてもらってもいいかもしれません。

どんなケアをするかというと、まずは「今の自分の身体の状態を知ること」と「健康的な身体づくりのために生活を整えること」です。いやいや、そんな当たり前のことを言われても・・・と思う人は多いでしょう。でも、生殖(子どもを産み増やすこと)のために思春期からできることをできていない、という人は本当に多いんです。

生理をがまんする大学生たち

わたしは大学の学生相談室では、女子学生から心身の不調の相談を受けたとき、生理の重さや周期、婦人科の受診歴はあるかなども聞くようにしています(どれだけこころのケアをしても、原因がホルモンバランスや婦人科の不調にある場合は精神的な部分もなかなか改善しないことが多いのです)。また最近では「多分PMSかPMDDだと思うんです」という悩みも増えてきています。

「生理がくるたびに動けなくなるくらいつらい」「夜用ナプキンをつけていても溢れるくらい出血量が多い」「生理が3ヶ月きていない」そんな状態でも「婦人科検診には行ったことがありません」という学生は少なくありません。そんなときは婦人科に一度行くことを勧めるのですが、「でも薬を飲んだらなんとかなるから」「婦人科は抵抗があるのでちょっと・・・」という子も少なくありません。これらの症状は将来不妊の原因になることが十分に考えられますが、早期に対処することで改善の余地があるものばかり。ただ学生たちはまだ妊娠を考えるタイミングにないため、生殖のための健康状態が必要だ、という当事者意識をもってもらうことがむずかしい。それを日々感じていますし、これがプレコンセプションケアをもっと広めたいと思ったキッカケでもあります。

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誤解しないでいただきたいのは、“妊娠するため”が全てではありません。プレコンセプションケアは自分の身体とこころ、そして将来の自分の心身を守るための包括的なケアなんです。 

まず何から始める?

まずは生殖について知ること、男女の生殖機能はそれぞれ異なるので、性別によってチェックする項目は異なります。

男性のチェック項目

・正しいマスターベーションを定期的にしているか(強すぎる刺激は射精障がいの原因になることも)
・包茎の場合、ケアをしているか。
・HPVウイルスの接種
・精巣を圧迫したり温めすぎていないか

女性のチェック項目

・生理周期と期間のチェック
・生理痛の期間と度合い
・おりものチェック
・急激な体重の増減はないか(年5㎏以上)
・18才以上の婦人科受診

実際はもっといろいろなものがありますが、まずは以上の項目を確認するところから始めていただけるといいかと思います。できることから1つずつトライしてみて。

過去の自分に伝えたいおせっかいおばさん

わたしが学生だった頃、短いスカート丈が流行っていたこともあって「女の子は冷やしたらあかん!」とよく言われていました。でもわたしは「短いほうが可愛いやん」と思って、真冬でも足が冷たかったのをよく覚えています。それが原因かはわかりませんが、10代の頃から生理痛はすごく重かったし、20代前半には子宮筋腫がみつかって、それが大きくなるにつれて経血量も年々増えました。結婚して妊娠したいと思った時、7㎝にまで成長した子宮筋腫が邪魔になるかもしれない、と摘出手術をすることになりました。摘出手術後は(私の場合)1年間妊娠しないように、とのことで、不妊治療ができない期間もありました。

10代の頃に身体を冷やさなければ、もっと早い段階から婦人科受診をしていれば、ピルを飲んでいれば、子宮筋腫の手術をもっと早くにしていれば。たられば言い出したらキリがありませんが、私の場合はこのように「子どもを産む選択肢」を自分で狭めていたのかもしれません。過去の自分には「おせっかいおばさん」だと思われるかもしれませんが、タイムマシンがあったらいろいろ言いに行きたいですね。

せめて同じような思いをする方が1人でも減るように、今年はプレコンセプションケアを含めた性のお悩みについて、こちらでもコラムを発信していきたいと考えています。ぜひ興味をもっていただけるとうれしいです。

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AUTHOR

西田めぐみ

西田めぐみ

臨床心理士 / マインドフルネス認定講師。性のお悩みについて臨床心理士の視点から発信、カウンセリングを行う。オンライン心理カウンセリング「amariカウンセリングルーム」主宰。



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