「頑張ってね」と言われた時どう感じる?【認知の歪み】3タイプのチェックリスト|臨床心理士が解説
職場の同僚から「がんばってね」と声をかけられたとき、あなたはどう感じますか?「応援してもらった!嬉しい!」と思う人もいるかもしれませんし、「今はがんばってないように見えるってこと?!」と憤慨する人もいるかもしれません。私たちは同じ出来事に対してまったく異なる捉え方をすることがあります。これは「認知の歪み」のしわざ。今回はそんな認知の歪みを解説します。また、認知の歪みのチェックリストもご用意。ぜひ試してみてくださいね。
認知の歪みとは?
認知の歪みを理解するためには「認知とは何か」と「認知が『歪む』とはどんな状態か」をそれぞれ理解する必要があります。
そもそも「認知」とは?
認知とは、物事に対して浮かんでくる考えのこと。
マンガで登場人物の心の声がモコモコしたふきだしに書かれていることがありますよね。あのふきだしの中身が認知だとイメージしてもらえると分かりやすいかもしれません。
その中で、意識していないのに自動的に浮かんでくる認知を「自動思考」といいます。
「認知の歪み」ってどういうこと?
職場の同僚から「がんばってね」と声をかけられた場面で、「嬉しい!がんばろう!」という自動思考が浮かぶなら、何も問題はありません。
しかし、「いつも私に仕事を押し付けて!私をバカにしているんだ!」という自動思考が浮かんだら、不快な気分になりますし、同僚との関係もギスギスしてしまうかも。
このように、自分の心・身体・関係などを苦しい立場に追い込む自動思考が「認知の歪み」と呼ばれています。
認知の歪み3タイプのチェックリスト
認知の歪みには10種類あります。ここでは「認知の歪み」の傾向をわかりやすくするため、それらを3つのタイプにまとめています。当てはまるものをチェックしてみてください。
ドミノ倒しタイプ
1つの出来事から、ドミノ倒しのようにネガティブな気持ちが大きくなるタイプです。
□【白黒思考】ほんのわずかなミスですべてが台無しになったように感じる
□【マイナス化思考】いいことがあっても「今日いいことがあるなら、明日は悪いことが起こる」など悪く捉える
□【拡大解釈・過小評価】他者が80点をとると「あの人はすごい!」と称賛できるのに、自分が80点をとると「こんなテスト誰でもできる」と過小評価する
□【心のフィルター】過去を振り返ると嫌なことばかり浮かび、いいことを思い出せない
見切り発車タイプ
情報収集や確認ができていないのに、「○○だろう」「○○にちがいない」とネガティブな結論を導き出すタイプです。
□【過度な一般化】1回ミスすると「私には向いていない」「どうせ私には無理」と判断してしまう
□【結論への飛躍】相手の気持ちを聞いていないのに「私をバカにしてる!」「私のことが嫌いなんだろう」など決めつける
□【個人化】悪いことが起こると「私が○○したせいだ」と自分を責める
□【感情的理由づけ】「なんとなくイヤ」などの感情だけで、人や場所を避ける
検品者タイプ
自分にとっての「正しさ」や「完璧」にこだわり、そこから少しでも外れた人やモノを受け入れられないタイプです。
□【べき思考】自分にも他人にも「○○すべき」「○○しなければいけない」というルールを課し、例外を認めない
□【レッテル貼り】「自分はダメ」「あの人は怖い」などレッテルを貼って判断する
認知の歪みへの対応
「認知の歪みがあるかも…」と思ったら、次の方法を試してみてください。
認知の歪みを特定する
まずは自分を苦しめる自動思考を特定してみましょう。
ネガティブな気持ちになったら、「もしかして認知の歪みが影響しているかも?」と立ち止まってみてください。過去の苦しい出来事を振り返ってみてもいいかもしれません。
認知の歪みと距離をとる
自分を苦しめている自動思考が見えてきたら、距離を置くよう心がけましょう。
たとえば、「どうせ私はダメなんだ」という自動思考が浮かんできたら、そのあとに「…と私は思った」を付け足すだけでも距離をとれます。あるいは「どうせ私はダメなんだ」とささやいてくる心の中の悪魔をイメージしてもいいかもしれません。
認知の歪みを和らげる
1つの道しか知らなければ、その道がどれだけ険しくてもつらくても進むしかありません。しかし、別の道を知っていれば、状況に応じて道を変える選択ができるでしょう。
同じように、自分を苦しめる自動思考以外の考え方を知ることで、認知の歪みを和らげることができます。「家族なら」「友達なら」「俳優の○○さんなら」「アニメのキャラクターなら」など、ほかの人ならどう考えるかイメージしてみましょう。
無理にポジティブ思考になる必要はありません。ただ、ほかの考え方の存在を知っておくことが大切なのです。
AUTHOR
佐藤セイ
公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。
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